地域の小児向け在宅医療を進歩させた研修会Peace Coの取り組み

こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は一般社団法人Peace Coの取り組みをご紹介します。

地域の医療的ケア児の状況を何とかしたい

一般社団法人Peace Coは、岐阜県で活動する在宅医療専門クリニック「医療法人かがやき 総合在宅医療クリニック」の支援組織として、在宅医療の普及・啓発のために設立された団体です。在宅医療やケアに関する教育や研究、家族向けの冊子の発行などを行ってきました。

医療的ケア児との関わりは2014年くらいから。成人在宅医療専門だった総合在宅医療クリニックに対して、医療的ケア児などへの関わりを求める声が大きくなってきました。在宅専門クリニックですから、小児の発達や病気については専門ではなくとも、呼吸器や胃ろうなどの在宅での医療措置には慣れています。当時、岐阜県は行政が医療的ケア児のために様々な支援制度を立ち上げていましたが、支援施設や訪問診療に対応できる医療機関は多くはなく、地元の小児科医たちも現在抱える患者だけで精一杯な状況でした。「地域にないのなら自分たちがやろう」と地域の小児向け在宅医療に取り組むことを決意します。

「遊び、食事、学び、親子の関係…子どもの生活や発達を支えるために必要な知識は、医療のほかにも福祉、教育、行政など広範囲にわたります。地域で小児在宅をこれから始めたい人、10年後の岐阜のために共に未知の世界を冒険してくれる仲間と、包括的な研修会をやろうと考えました」と総合プロデューサーの平田節子さんは話します。

写真
第一回目研修の集合写真。オレンジホームケアクリニックの紅谷浩之医師と。「改めて自分たちのケアを振り返る機会になった。マイナス面を補う支援も必要だが、プラス面を強化する支援に目を向けることも必要。(歯科衛生士)」との感想も。

10年後の小児の未来をみんなで作る

研修では多職種向け研修とセラピスト向けのワークショップを計23回行いました。
多職種向けの座学研修では、全国のトップランナーを講師にむかえ、小児在宅医療の始め方、小児在宅医療における制度理解、楽しみながら行うリハビリテーションなど、13回の講義を3時間ずつ開催。医療的ケア児や重症心身障害児が生きていくにあたり必要な事を知り、考える機会となりました。

第一回目のオレンジホームケアクリニックの紅谷浩之医師は「子どもたちを特別扱いするのではなく、その子たちが何ができるかを考えよう。子どもを起点にして町全体をハッピーにしよう」と呼びかけました。他の回では、楽しく身体を動かしていたらそれがリハビリだったという発想の転換から生まれたデジリハ(デジタルアート×リハビリ体験)や、ケアとアートで新しい遊びをつくる地元の情報科学芸術大学院大学の自由な発想を形にするワークも。リハビリやレクリエーション、食事の与え方、資金調達など研修のテーマは多岐にわたりました。最終回の飛騨の都築淳也市長からは、障がいを持つ子の親としての思い、出来ない事ではなく出来る事を見つける視点を子どもに気づかされたことや、行政マンとしてそれをどう施策に生かしていったかが語られ、研修の幕を閉じました。

写真
小羊学園 つばさ静岡の浅野一恵医師に追加取材し作成した動画「おいしい」が、「いのち」をつなぐの一場面。「口や嚥下だけでなく、体や環境などすべてがつながって食べていることを学べた。(看護師)」

セラピストのための多職種ワークショップ

小児の経験が少ない若手セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)向けのワークショップでは、障がいのある子どもと親の協力を得て、5カ月間、計5回を2クール開催しました。多職種の参加者でグループを作り、実際に一人の子に向き合ってアセスメント(評価や査定)を行い、議論を重ねてホームプログラムを作ります。家族はプログラムを自宅で実践してフィードバック。参加後の評価では多くの親のモチベーションが上がっていて、「いろいろなアプローチがあった。今後も見てもらいたいと思えるようなセラピストさんと出会えた」と好評でした。

「多職種がお互いに意見をもちより、自分の職域のみではなく一歩ずつ歩み寄り、評価の仕方を指摘し合うのは貴重な経験。自分たちで考え試行錯誤する過程を大切にしたい」とワークショップを企画・運営した理学療法士の薮本保さん。

写真
積木やカードが入った検査キットに興味津々の男の子。参加したセラピストからは「これまで見ていなかった部分を感じられるようになった」とのコメントも。

医療型短期入所施設を新たに開設

研修では人と人のつながりが生まれたことも大きな収穫でした。岐阜で小児医療に積極的に取り組もうという多職種の医療関係者のネットワークが生まれ、研修で関係を築いた全国のトップランナーと岐阜県内の医療従事者をつなげるハブ拠点としてもPeace Coは機能すべく、今後も勉強会や情報提供を続けていきます。

2020年度内には、医療法人かがやきが医療型短期入所施設「かがやきキャンプ」を岐阜市に隣接した岐南町に開設する予定です。主に医療的ケア児や重症心身障害を持つ未就学児を対象に、遊びながら発達を促進し、親以外の人と過ごす貴重な時間を提供。彼らとその家族が安心して暮らせる地域作りを目指します。

「合い言葉はレッツトライ!医療型短期入所施設ではありますが、安全安心の医療ケアのみをめざすのではなく、それぞれの子どもの発達支援にも力を入れていきます。その子たちの将来を見通しながら、社会的・身体的・精神的な発達のためにこの時期に何を大切にしていくかという考え方を優先したいのです。預けている間にお母さんたちも医療ケアからひと時解放されて、少しでも休んでもらい、きょうだいとの時間が作れたら。ゆくゆくは宿泊サービスもしていきたいです。」と平田さんは将来への思いを話してくれました。

「かがやきキャンプ」では、研修講師を依頼したことで交流が始まったNPO法人ウブドベと共に、デジタルアートで遊びながらリハビリができるプールも作る予定です。研修で蒔かれた岐阜の子どもの未来を作る希望の種が、間もなく花開こうとしています。

写真
研修のダイジェストを冊子「子どもミライツクルBOOK」にまとめました。
セラピストの研修動画、レシピの動画も作成し、その後の研修に活かされています。

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

難病の子どもと家族を支えるプログラム

一般社団法人Peace Co

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋弓子

寄付の状況 2022年9月末現在
5億1,080万1,600円

日本財団への寄付 4つの特徴

  1. 寄付金はすべてを支援活動に活用します
  2. 50年以上の助成実績があります
  3. 寄付者の皆さまにきちんと報告します
  4. 税制上の優遇措置が受けられます
日本財団子どもサポートプロジェクトロゴ

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。