子どもから高齢者まで、みんなが幸せになる場所鳥取県看護協会の取り組み
こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は公益社団法人鳥取県看護協会の取り組みをご紹介します。
生きるを支えるための施設を
温かい木のぬくもりのあるエントランスホールに車いすのお年寄りが佇んでいます。元気に入ってきた女の子が駆け寄ると、それまで無表情だった車いすのお年寄りが笑顔になり、手をゆっくりと上げて応えます。ほほえましい光景ですが、その女の子は呼吸器をつけるための気管切開をしています。
ここは呼吸器や経管栄養など、医療的ケアが必要な子どもや大人のための鳥取県東部のハブ拠点ナーシングデイこすもす。「すべての人々の幸せのために」をコンセプトに、0歳児からお年寄りまでの幅広い年齢層のケアが必要な人を対象に、放課後等デイサービス、児童発達支援、療養通所、生活介護、相談支援を行っています。
このサービスを行う公益社団法人鳥取県看護協会では、平成6年に訪問看護ステーションを開設して、高齢者や障害者・医療的ケア児への訪問看護を行ってきました。
訪問看護を行うなかで、医療的ケア児の日中活動施設の不足、特別支援学校を卒業した後の障害をもつ人たちが自宅に居るしかない状況に、対応できる施設の必要性を感じ続けたといいます。
看護職の役割拡大を図っていた鳥取県看護協会では、2016年に立ち上がった県と日本財団の共同プロジェクト「難病の子どもと家族の地域生活支援」から声がかかり、鳥取県の東部地域にそうした施設を作ることを決定。鳥取県と鳥取市、日本財団の支援を受けて2020年4月に地域連携ハブ拠点ナーシングデイこすもす(以下、こすもす)が完成しました。
こすもすでは重症心身障害児などの医療的ケアに携わる看護師の研修、家族や関係者の相談、地域の人びとや他施設との連携など、総合的な役割を担うことを目指しています。
研修を重ねて施設を増やす底力に
4月の開所から半年、医療的ケア児、重度の障害者、高齢者を一手に受け入れることはやりがいがある反面、大変なことも多かったといいます。そうした日々の中で、子どもとお年寄りの温かなやりとりや、重症の子どもたちが時折見せてくれる笑顔に、スタッフは元気をもらっています。
所長の坂本万理さんは、病院で重症心身障害児の看護に従事し、その後15年間訪問看護に携わる中で、家族が日々のケアに追われている状況を目の当たりにしてきました。こうした施設があったらという家族や地域の願いがようやく形になりましたが、鳥取市内では医療的ケア児に対応可能な放課後等デイサービスの施設はこすもすを含めほんの数か所で、一か所あたりの受入数は1、2名と、まだまだ不足しているのが現状です。
「片道40分かけて通う方もいてその負担は大きい。研修や啓発活動をしてその必要性の理解を深め、医療的ケア児を受け入れてくれる施設を増やすことが目標です」と坂本さんは言います。
医学の進歩で今後医療的ケア児が増えていくことが予想され、在宅での小児の医療的ケアができる看護師を増やす必要があるため、こすもすでは在宅生活者の医療的ケアを支える看護師の育成にも力を入れています。
重症心身障害児を看る病院の看護師もこうした研修に参加し、「在宅ではこうしているんですね」「ショートステイで受け入れるお子さんのイメージがしやすくなった」という声も。研修という形でなくても講習や話し合いの回数を重ねていきたいという意見も出ており、地域全体を底上げしていきたいと考えています。
子どもと家族を支え、可能性を引き出す
複数の事業所を使っている医療的ケア児が、こすもすではよく動くのに、他所ではほとんど動かないと、別の顔を見せていたことがありました。「そんな姿を知った時、1人の子どもの育ちをめぐり、関係事業所間での連携が不足していることに気づきました。もっとお互いに顔の見える関係で、その子を支える人たちがその子を中心に置いて情報交換をしたり、どうすべきなのかを考える視点が必要だと感じています。」と坂本さん。
「日々のことにいっぱいいっぱいではありますが、どんな時も子どもたちを支え、望んでいることができるよう、様々なことを引き出せる環境を作っていけたら」。
しっかりと子どものケアをして、常に心配をして付き添っていたお母さん。こすもすに通って半年目に「助けてくれる人をたくさん作ることで自分が楽になるとやっと分かった」と話したと言います。「そういうふうに変化してくれたお母さんを見ると私たちがお役に立てているのかなと思えます。そのためには、安心していただけるサービスを提供することが大事なのです」。
また、医療的ケアが必要な娘さんを連れてこすもすに見学に来たお母さんに、「高齢者の療養通所もしているんですよ」と説明し、ミスト風呂を案内した際には、突然涙を流されたことがありました。訳を聞くと、ご主人が癌の闘病中で入浴ができていないとのこと。娘さんと夫の介護を1人で抱えていると聞き、そのご主人も通所できることを伝え、お試しで利用してもらいました。こうした面でも家族を支える場なのだなと坂本さんは感じたといいます。
こすもすは子どもたちと家族の幸せを願い、生活を支え、そのための多岐にわたる活動をこれからも続けていきます。
日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。
難病の子どもと家族を支えるプログラム
公益社団法人鳥取県看護協会
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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子
日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。