病児と家族がほっとできる第二の我が家国立成育医療研究センター もみじの家の取り組み

こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は国立開発研究法人国立成育医療研究センター もみじの家の取り組みをご紹介します。

小さな命と家族の笑顔のために

世田谷区にある小児総合病院、国立成育医療研究センターの敷地の一角に、子どものための医療型短期入所施設「もみじの家」があります。重い病気や障害を抱えた医療的ケアの必要な子どもを最大9泊10日まで受け入れ、希望すれば家族が一緒に滞在することもできます。これは公的機関が併設するレスパイト施設として国内初の試みでした。

もみじの家は、子どもにとっては家族以外のスタッフや、同時期に滞在する子どもたちとの出会いを通じて社会性を育む場所に、親にとっては日頃の介護を忘れてくつろいだ家族の時間が過ごせる大切な場所になっています。

かねてから国立成育医療研究センターでは退院後の医療的ケア児と家族への手厚いケアの必要性を感じていました。日本財団が病児をサポートするための拠点作りに動き出した時に、長年海外の赤十字で働き、イギリスの子どもホスピスでの経験を通じて日本に同様の施設を作りたいと考えていたキッズファム財団創設者、喜谷昌代さんの熱意ある働きかけにより、2016年4月にもみじの家の開設が実現します。その年は、児童福祉法などの改正で医療的ケアが必要な子どもの存在が法律に明記され、難病児、医療的ケア児が注目を集めた年でもありました。

それからの5年間、もみじの家には多くの家族が全国から訪れてあたたかな時間を過ごし、小さな命を共に育み、子どもの幸せ、家族の幸せとは何かを問う場となっています。

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もみじの家の外観。日差しがたっぷり入るあたたかな雰囲気のエントランスです

「当たり前の日常」を取り戻す

もみじの家では、子どもが滞在する部屋の隣に家族が泊まれる寝室が併設された個室もあり、親は子どものケアを任せてゆっくりと睡眠をとることができます。また、色の変わる照明やウォータベッドで五感を心地よく刺激する部屋を親子が一緒に楽しめます。家族揃って入浴できる大きなお風呂や、ストレッチャーに乗ったままで入れるお風呂が整備されており、家族がやすらげる「第二の我が家」を意識したつくりになっています。

普段は我慢することが多いきょうだい児も、滞在中は親とたっぷり遊ぶ時間をもつことができます。ケアが必要な子どもを預けてきょうだい児の学校行事や普段行けない場所にも出かけられます。日頃は諦めてしまっているこうした当たり前の日常が、もみじの家では経験できるのです。

「『ほっとできた。久しぶりにぐっすりと寝ることができた』という声に、本当によかったなと思います。終わりのない介護の日々の中でも『もみじの家の日があるから、もう少し頑張ろう』と思える。それがあるとないでは大きな違いです」ともみじの家のハウスマネージャーを務める内多勝康さんは言います。

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ボランティアによる絵本の読み聞かせ

子どもが自ら伸びようとする力を信じて

もみじの家では、医療的ケアや看護だけでなく、保育の時間やみんなで遊びをする時間を大切にしています。同世代の子どもと遊び、共に過ごす時間は子どもの成長と発達にとってとても大切なこと。もみじの家に通って変化や成長をみせた子どもたちも多いといいます。

2歳の時にもみじの家に初めて訪れたはるちゃん。全身の筋力が低下する難病で、横になったままで声をかけても反応はありませんでした。朝と午後にプレイルームでボーリングや合奏、シーツブランコなどの遊びをみんなと共にやって様々な刺激を受けてきたところ、訪問から1年がたったある時、看護師が全身をマッサージしながら「グーパー、グーパー」と声をかけると、弱々しいながらも手を閉じたり開いたりと動きがありました。「要因はもみじの家だけではないでしょうが、こうした成長や変化が見られると、やりがいを感じ、やっていてよかったなと思えます」と内多さん。

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子どもが遊びや新しい経験ができるのは、親にとってもとても嬉しいことです

もみじの家と出会えてよかった

この5年間、多くの出会いと別れがありました。
「もみじの家で子どもを看取ることもあります」と内多さん。家族からは「もみじの家と出会えてよかった」という言葉が寄せられます。
最期の時間を病院でのケアを選ぶ家族もいれば、家庭で過ごすことを選ぶ家族、そして、もみじの家に来る家族もいます。「もみじの家があることで、ご家族の選択肢が1つ増えるということがあってもいいのではないかと思っています」。

医療的ケア児と家族の置かれた状況は厳しく、医療的ケア児の入所に対応した施設がないなど、地域によって利用できる資源の差が大きいのが現状。そんな中でももみじの家は子どもの様々な状況全てに応じた受け入れをしています。こうした施設を全国に増やし、介護が必要な子どもと家族が自分らしく生きられる社会制度の整備が求められています。

「視力の弱い人が眼鏡をかけると過ごしやすくなるように、必要な支援が整い地域の中に理解者が増えれば、安心して暮らすことができるようになるのです」と内多さん。
「社会を動かすためには、もみじの家が全国の自治体に意見を言うのではなく、地域の人、当事者が声を上げなくてはならないということにようやく気付きました。今年は全国に「親の会」をつくる後押しをして、自治体に提言してもらうよう働きかけるつもりです」。

医療的ケアが必要な子どもと家族が日本のどこでも自分らしく生きていけるための社会づくりの第一歩が、もみじの家での経験なのかもしれません。

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保育士とボランティアの手を借りながら地理の勉強をしています

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

難病の子どもと家族を支えるプログラム

国立開発研究法人国立成育医療研究センター もみじの家

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子

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