病院の子どもたちにアートに夢中になる時間を 認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパン

こども病院に大道芸人がやってきた!

病院で闘病生活を続ける子どもたちは、つらい治療や将来の不安など、様々なことに立ち向かう日々を過ごしています。院内学級の教諭だった認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパン(以下、SHJ)代表理事の松本惠里さんは、入院中の子どもたちにどうやったら笑顔を届けられるのだろうかと思いを巡らせる毎日を過ごしていました。

音楽を楽しんだり、何かを創ったり、アートに夢中になる時に子どもたちが生き生きと楽しそうにしていることに気づき、それに特化した活動をしたいと、2012年に病院にアートを届ける活動をスタートし、SHJを立ち上げます。以来、全国の数多くの子どもたちとその家族を笑顔にしてきました。

ある日のこと、静かだった小児科の病棟に賑やかな声が響きます。「大道芸人がやってきたよ!」
子どもたちがプレイルームに集合するとお待ちかねのジャグリングがスタート!夢中になって見入る子どもたちの様子をのぞきに来た医師が、みんなの前に呼ばれてジャグリングに飛び入り参加。いつもは真面目でちょっと怖いお医者さんが慌てたり滑稽にふるまったりするのを見て子どもたちは大喜び。
また、時にはなんと医師自らがアーティストになり、プロの音楽家と一緒に楽器の演奏を披露する場面も生まれています。

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みんなで並んで、バルーンアート作りに夢中

定期的に「プロのアート」を届ける

病院に届けるのは、プロによる本物のアート。参加型の音楽や塗り絵、大道芸、マジックなど個性的でわくわくするようなものばかりです。
「定期活動」「参加型活動」「個別訪問」「質の高いプロのアート」を4つの柱に、隔週や月1回など定期的な訪問を継続し、親子に寄り添い続けます。また、子どもたち自らが積極的に参加できるような工夫をしています。

何かに夢中になり、没頭することはとても大切です。治療という受け身で緊張感のある生活の中に自分らしくなれる時間があると自分に自信を持つことができ、治療に前向きになれることも。プロのアーティストと共に楽しく過ごし、闘病を頑張れたことが退院後も誇りになればという思いをスタッフ、アーティストたちは共有して活動をしています。

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チェロの演奏と絵本のコラボレーションに見入る子どもたち

子どもが、家族が、病院が変わる

病室のベッドにカーテンを引いて出てこなかった子どもが、プレイルームのにぎやかな声をきいて、「なんだろう」と点滴台を押しながら様子を見に来ました。いつの間にかその子が一番楽しんで笑みを見せるようになり、カーテンを開けて同室の子どもと活発に話すようになることも珍しくありません。

アーティストの歌声や声がけに活発に反応して一緒に歌う我が子に、「歌ってあげることでこんなに喜ぶなんて、いままで気づいてあげる余裕がありませんでした」と語ったお母さんがいるなど、親にも気づきや励み、喜びを生んでいます。

子どもの笑顔やいきいきした姿を見る看護師、医師、保育士も自然と笑顔になり、病棟全体が明るく活気が生まれます。

アーティストにとっては、自分のアートに子どもたちがこんなにも反応し、喜んでもらえるのだということがとても嬉しく、毎回発見の連続。子どもたちの笑顔から勇気をもらい、命の大切さなど多くのことを教わるといいます。

「子どもが自分らしく過ごす時間を提供するファシリテーターとして、これからも寄り添っていきたい。病気の治療中でも豊かに成長していけるということをアートを通して感じてほしいです」と松本さん。

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大道芸人のジャグリングは大人気

アートは生きるために必要なもの

いまはコロナ渦で病院に入ることができないため、動画配信サイトのYouTubeにチャンネルを作り、音楽やお話、塗り絵動画、マジック、実験、大道芸など様々なジャンルの動画を掲載。子どもが自分たちで遊べるアートを郵送したり、季節感のある塗り絵を送って、動画を見ながら塗ってもらうなど工夫を重ねています。

2021年6月には神奈川県内の病院と事務所をオンラインでつなぎ、重症心身障害児に向けて声優が歌や芸を交えた臨場感たっぷりのお話ライブを開催。双方向のやりとりで盛り上がりました。また、一般の人も参加してアイデアを出し合える研究会のコミュニティサイトを立ち上げました。

さらに、杉並区の事務所内にアーティストや特別支援教育関係者、在宅医療を受ける重い障がいの子どもや保護者などが集える場所をと、交流拠点を開設。SHJが行う在宅訪問学習支援に参加する児童が体調の安定時に来所し学習するスペースとして、また、病棟や施設をオンライン訪問して双方向のライブを行うスタジオとしても活用しています。将来はここで入院中の子どもたちの絵の展覧会を行い、自分の作品が多くの人に見てもられたことを誇りに思ってもらえたらと考えています。

アートは心を豊かにし、喜びや元気、生きる力を与えてくれます。「アートは不要不急という人もいますが、自分らしくいるために必要なもの。私たちの『アートに夢中になる時間、わくわくすることが治癒につながる』という理念のもと、形を変えながらも出来ることを模索していきます」と松本さんは言います。

SHJはこれからも子どもたちがアートに夢中になる時間を提供し、笑顔と生きる力を引き出し、その成長に寄り添い続けます。

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プロのアナウンサーによる絵本の読み聞かせ

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパン

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

寄付の状況 2021年8月末現在
3億5,833万5,089円
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