みんながハッピーな家「はっぴぃかぼちゃん」医療法人おがた会

声を出せない母親の声を届ける

2022年2月に熊本県熊本市北区に開所した医療型特定短期入所施設「はっぴぃかぼちゃん」は気道クリアランスと歯科による口腔ケアに力を入れた日本初の施設です。

重度の障害がある子どもの容態が悪化する原因の多くは肺炎などの呼吸の感染症が関係しています。「はっぴぃかぼちゃん」では、気道内の痰や異物を排出して呼吸器を清潔に保つ気道クリアランスに加えて歯科医師による専門的な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を予防していきます。

「『はっぴぃかぼちゃん』の開設にあたっては、口腔ケアと気道クリアランスのほか、災害時の避難場所の確保などを考慮して施設づくりをしました」と「はっぴぃかぼちゃん」を運営する医療法人おがた会理事長の緒方健一さんは言います。

緒方さんは小児科医として働く中で集中治療室(ICU)にくる子どもが退院をした後に在宅で過ごす状況を改善できないものかと考え、奔走しました。1998年に日本ではまだ数少なかった小児在宅人工呼吸療法を行う診療所を開設し、2014年には西日本初の医療もできるデイケア「かぼちゃんくらぶ」を設立。

「声を出せないお母さんたちの声を届けようというのが最初でした。県に訴え続けて、気が付いたら自分がやっていました」。

2016年の熊本地震の際にはトレーラーハウスを日本財団の支援を受けて設置し、子どもたちの受け入れを行いました(現NPO法人パンプキン)。その経験を元に、今回開所した「はっぴぃかぼちゃん」では、台風や地震などの災害時のために、貯水タンクと電源設備を備えて重度のケアが必要な3家族を受け入れられる体制を整えています。

また、呼吸器を付けた子どもが学校に行けるようにと熊本県に働きかけて、看護師を派遣する支援事業を行い、2022年は医療的ケアが必要な3人の小学校1年生が学校に通えるようになりました。今後は、これらの児童発達支援と通学支援に加えて、子ども食堂、アレルギー対策支援も行っていく予定です。

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回転ずしゲームのお誕生日会。広い会場に笑い声が響きます

呼吸器でもやりたいことを諦めない

今日はお誕生日会。電車のおもちゃのプラレールにお寿司を載せた手作りの回転ずしマシーンの登場です。身体を自由に動かすことができなくても目の動きでスイッチをオンオフできるように工夫した装置を使い、上手に電車を止められたらお寿司が食べられるゲームをして盛り上がりました。

「人工呼吸器があるからできないではなく、どうやったらできるかというのを考えて工夫しながらいろいろな活動を諦めず、やれることをやっています」と理学療法士の尾石久美子さんは言います。

毎月1回外にでかける行事を設定して、動物園や公園に行き、いちご狩りや畑でサツマイモ堀りなどを楽しんでいます。ここに来るまでは外出したことがほとんどなかった子も多く、尾石さんたちには、小さい時から様々な経験を積みかさねていってほしいという思いがあります。当初は泣きべそをかいていた子が今では畑にいくのをとても楽しみにしているそう。

家族と離れて過ごした経験があまりなかったというある女の子は、ここに通いコミュニケーションの経験が増えたことで、おやつは何を食べたいか、いつお風呂に入りたいかなど、自分で意思表示ができるようになりました。

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土を感じて青空を見あげて、サツマイモの苗植え

e-スポーツで可能性が広がる

「はっぴぃかぼちゃん」では、e-スポーツセンターを併設して、体を動かすことが困難な子どもたちでも様々な体験ができる機会を提供しています。

筋ジストロフィーのため少しずつ筋力が低下し、元気がなくなっていた男の子は、テレビゲームのe-スポーツ大会で優勝したところ、ファンがたくさんできて明るく前向きになっていきました。

「その人なりのスイッチが入ればすごい活動をすることも可能なのです。e-スポーツを通じてパソコンを操作することで仕事の道が開ける。例えばドローンを使って農業に貢献する仕事を得るなど、将来自立する知恵を得てもらえたら」と理事長の緒方さん。

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母の日の贈り物にオリジナルのアクセサリー作り。視線の移動で反応するデザインソフトを使いこなしています

いつも来たいわくわくする場所

「小児在宅医療を始めて25年になりますが、40歳になる子もいます。ご家族亡き後の幸せな終の棲家を作ることがこれからの大きな課題です。熊本県の小児在宅研究会の今年のテーマを後見人制度と資産管理の話にして、弁護士に講演してもらう予定です」と緒方さん。

尾石さんは、何よりも一番に、「はっぴぃかぼちゃん」での時間を思いきり楽しんでほしいと言います。「様々な職種のスタッフがそれぞれの得意分野を発揮して楽しめるアイデアを出し合っています。いつも来たいと思えるようなわくわくする場所にしたいのです。そうすると、子どもが楽しく遊ぶから、結果的に親御さんは罪悪感なく子どもを預けて自分も自分の時間を楽しもう、となりますよね」。

施設長で歯科医師の西田くるみさんは、施設併設の訪問歯科クリニックで子どもたちの口腔内の環境を整えています。持ち運びのできる機材をもって子どもの元に出向き、バギーやベッド、時には西田さんの膝枕で診察をします。我が子の口腔内の環境が良くなった様子を見たお母さんたちが関心をもち、家で訪問看護の人に見せたいと口腔ケアを行っている様子を動画撮影したり、いろいろな質問をされるようになりました。

「2月に開所して以来、多くの方が見学にお越しくださり活動の原動力は何かを尋ねられましたが自分でもよく分かりません。ただここにいるだけで幸せな気持ちになるのです」と西田さん。

「はっぴぃかぼちゃん」はみんなが幸せな家。笑い声とやさしさが溢れています。

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口腔ケアによる呼吸器の感染予防は大切。お母さんたちの意識にも変化が生まれました

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

医療法人おがた会

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

寄付の状況 2022年7月末現在
4億8,795万5,787円
日本財団子どもサポートプロジェクトロゴ

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。