海の地図プロジェクト

海の地図プロジェクトとは

日本全国の海岸につづく総海岸線約35,000kmの約90%の浅海域（水深0〜20m）を10年計画で航空測量し、地図化することで、水難事故防止や津波対策、生態系把握など幅広い利活用を目指すプロジェクトです。

海の地図をめぐる現状

海には用途に応じて様々な地図があります。
（例）

海図（航海用海図）：船の安全な航行に使用
沿岸の海の基本図（海底地形図）：沿岸海域の利用、環境保全、防災、海洋レクリエーションに使用

これらの既存の海の地図は主に船による測量で作成され、精度に限界がありました。一方、近年可能になった航空測量（ALB）で得られる海底地形情報は密度が高く、船による測量で得られる海底地形情報と比較し、極めて詳細な海底地形図を作成することができるものの、ALBによって把握された範囲は日本沿岸の約2%弱にとどまります。
また、日本の海岸管理の仕組みが縦割りかつ、複雑であることも、浅海域の詳細な地形把握につながっていない要因の一つです。
日本の海岸線、陸からつながる浅い海は、いくつもの地方自治体、行政が絡んでいます。例えば、漁港は水産庁、港湾は国土交通省、海岸防災林は林野庁、国立公園内だと環境省、航路測量は海上保安庁、海底資源調査や再生可能エネルギー関連は資源エネ庁といったように、行政が一元的に浅海域を地図化するのは難しいのです。

航空測量（ALB）の技術と特徴

本プロジェクトで行う航空測量はALB（Airbone LiDAR Bathymetry）と呼ばれ、上空から近赤外および緑色のレーザを発射し、海水の透明度が高い場所では水深20m程度までの地形を計測することができる手法です。航空測量では船で測量が困難な浅い場所から陸上までシームレスなデータを取得できるほか、効率的かつ広域に極めて詳細な地形データを取得できることが特徴です。

ALBによって精緻な「海の地図」をつくり、水難事故防止や防災、環境分野へ役立てる

詳細な海底地形情報が広範囲に取得できれば、海で起きる様々な事象を理解するための基盤情報が整備され、水難事故防止や防災分野、生態系の把握や保全、環境教育など様々な分野における研究や技術の向上、ひいては海に対する理解の促進に繋がることが期待されます。
本プロジェクトは総額20億円をかけて日本の海岸線35,000kmの9割の浅海域を測量することを目指しており、2025年1月現在、約25%の地図化が完了しています。
地図が完成した先には、様々な「海の地図」の利活用アイデアやムーブメント創出を目指します。