WORK! DIVERSITYプロジェクト

ロゴ:日本財団 WORK!DIVERSITY

WORK! DIVERSITYプロジェクトとは

ひきこもり、ニート(Not in Education, Employment or Training, NEET)、ミッシングワーカー(※)、刑余者、若年認知症、難病、さまざまな依存症など、生きづらさ、さらには働きづらさを抱える人々――。

傷病、障害、依存症、精神的課題などの健康問題(個人的課題)や、差別(社会的課題)によって就労困難となっている「働きづらさ」を抱える人々への支援は、いまだ手薄い状況にあります。

こうした「働きづらさ」を抱える一人ひとりへの支援を手厚くし継続していくために、日本財団では新たな取り組みを開始しました。

これが「WORK! DIVERSITYプロジェクト」です。

  • 労働経済学の用語で、雇用統計上求職活動をしていないため失業者としてカウントされない人たちのことを指します。

わが国が持続可能な社会として発展し続けること。その寄与が本プロジェクトの目的

働きづらさのある方々を新就労支援システムにおいて支援し、就業を促進することで、潜在的に就業することが可能な方々の人材活用を活性化させます。さらには就業することで納税者となり、社会保障、財政改革にも好影響をもたらします。
働くことで個人の幸福度を高めてもらうこと。さらに潜在的労働人材が活用されることで、わが国が持続可能社会として発展し続けること。これが本プロジェクトの目的です。

既存の就労支援施策を改良、拡大し、即効性、具体性のある展開を可能にします。その状況こそ、まさに一億総活躍社会の姿であると考えています。

働きづらさを抱える人たち

2018年の日本財団の調査によると、ひきこもり、ニート、ミッシングワーカー、刑余者、若年認知症、難病、さまざまな依存症など、生きづらさ、さらには働きづらさのある方々がのべ1,500万人に及びます。
その多くが、適切な支援があれば就業し自立は可能と思われますが、現行の制度下では、一部の共助こそあれ自助が中心で公助のシステムに乏しいのが現状です。

一方、人口減、労働力不足が顕在化し始めた社会状況は今後さらに加速するといわれています。また少子高齢化とともに増大を続ける社会保障費は、もはや天文学的な数字と化した1,000兆円超の財政赤字をさらに膨張させようとしています。

少子高齢化・人口減少の深刻化により、年金や医療、介護等にかかる社会保障給付費が急増し、税や社会保険料等の国民負担が急増している。

現在全てを一覧とした公的な調査は存在しないことから、公表されている資料の数字を集積したものが下表になります。単純な積み上げで働きづらさを抱える人たちが1,500万人を超えると想定。中にはすでに働いている方、重複した要因にわたる方がいるとされ、その実数としては約600万人と推定されます。

就労困難者の推計人数を表す棒グラフ。15歳から54歳のニートが145万人、15歳から39歳の広義引きこもりが54万人、20歳から59歳のネットカフェ難民が0.4万人、64歳以下のホームレスが0.3万人、15歳から64歳の非就労障害者が356万人、15歳から64歳の難病患者が60万人、15歳から64歳のがん患者が48万人、15歳から64歳のHIV感染者が1.7万人、15歳から64歳のAIDS患者が0.6万人、18歳から64歳の若年性認知症が3.1万人、15歳から64歳の薬物経験者が81万人、15歳から64歳アルコール依存症が109万人、15歳から64歳のLGBTが220万人、20歳から64歳の刑余者が1.9万人、貧困母子世帯が49万人、高齢者が329万人。

人口減と労働力不足

今後、確実にわが国の人口は減少し続け、2050年頃には1億人の大台を割り込むことが予測されています。労働人口も確実に減少し、超高齢化社会を迎える2025年頃には国全体で600万人を超える労働力が不足するとの試算が示されています。
人口減が必至の社会状況にあって、産業を継続し国力を維持し続けていくためにも潜在的な労働力を顕在化し、活躍してもらうことは重要な視点だと考えています。

社会保障と財政改革

国債や借入金など積み重ねてきた国の長期債務残高は2022年時点で1,000兆円を超えました。これは国民一人あたり約850万円の借金を抱えていることになります。さらに高齢社会にあって、国の予算における社会保障費は、ますます膨張し続けています。このような状況にあって労働力減を要因に経済を停滞させることはわが国を持続可能社会からますます遠ざけてしまいます。

新就労支援システム

少子高齢化に加え、現実化していく社会保障の増大、労働力不足の社会。これらの喫緊の課題解決に既存のシステムを新たな視点で活用し、個々のQOL(Quality of Life)を高め、社会に新たな労働力を輩出しようとするプロジェクトがWORK! DIVERSITY(ダイバーシティ就労)です。

具体的には、既存の就労支援事業を再統合し、ダイバーシティの機能を有したシステムを構築し、活用するという計画です。

生活困窮者、就職氷河期世代といった対象者別に展開されている就労支援事業の中で、最も整っていると思われる就労移行支援事業および就労継続支援A型事業を活用していこうという構想です。

現状の障害者総合支援法において、このサービスは障害者以外に活用することができませんが、その就労支援の内容は働きづらさを抱える多様な人々に活用できるものと考えられます。

今後の実践と提言

モデル事業

WORK! DIVERSITYプロジェクトモデル事業

障害者就労支援事業所の横断的な活用による効果を検証するため、2023年現在4つの地域(岐阜市、千葉県、福岡県、豊田市)でモデル事業を行っています。多様な就労困難者の相談窓口となるマネジメントセンターを設置し、地域で支援のネットワークを構築することで各事業所につなげられる体制を整えています。モデル事業で得られた成果や課題を今後の制度設計に向けてのエビデンスとして活用します。また、これらのモデル事業を実施する自治体は、日本財団と共に制度化に向け、連携をしています。

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マネジメントセンター(一般社団法人サステイナブル・サポート)
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就労訓練での作業(福岡県就労支援協同組合)

政策実現会議

WORK! DIVERSITY政策実現会議

モデル事業実施自治体の首長や学識経験者、当事者団体など関係する有識者をメンバーとした政策実現会議を実施しています。2024年度末の政策提言案作成に向けて重要な論点を洗い出し、有効かつ現実的な政策提言を行うための議論を行っています。

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制度の検証を進め、制度化を目指します

研究とモデル実践を通し、その新定義と具体的支援方法を確立、さらにその効果を経済的視点から解明、そのエビデンスやフォーラムを通じて地方、国さらには広く国民に「わが国の国益に資する」との理解を得た上で、社会制度化を実現し、その新システムにおいて障害者以外にも多様な就労困難者を有効的に支援し、社会に送り出すことを目指します。

関連リンク

お問い合わせ先

日本財団 国内事業開発チーム

  • 担当:竹村、今尾
  • 電話:03-6229-5254