最前線で戦う医療現場への支援
救命救急を守り、複合災害に備える
2020年5月下旬、新型コロナウイルス感染症の急拡大により1カ月半続いた首都圏への緊急事態宣言が解除された。この間、多くの救急医療施設では新型コロナウイルス感染症患者への対応に追われ、同感染症患者はもとより他の疾病等による重篤な患者の受け入れが一時困難となった。こうした状況から、感染拡大の第2波に備えた医療提供体制の強化が各地で課題となった。
医療崩壊から救命救急医療の現場を守ることは、新型コロナウイルス感染症のみならず、将来起こりうる未知の感染症の出現や複合災害の際にも「救うことができる命」を守ることにつながる。毎年各地で災害が頻発し、それぞれの災害が激甚化している日本だからこそ、災害発生直後の超急性期(概ね48時間以内)に対応できる機動性を持ち、専門的な研修・訓練を受けた医療チームの派遣にも耐えられる救急医療体制の拡充が必要だ。
こうした考えのもと、当財団では新型コロナウイルス感染症への対応能力の向上と、今後起こりうる甚大な複合災害へ備えることを目的に、医療体制の強化を図る助成事業を開始した。
全国139施設(当時)の日本救急医学会指導医指定施設のうち、新型コロナウイルス感染症患者の入院診療と外来診療を積極的に行っている施設を対象に2020年7月初旬に公募を開始。専門的知見を持った医師等で構成される評価委員会の審査を経て、8月初旬に結果を通知した。申請があった133の病院のうち、127の病院へ総額49億4,445万円の支援を実施。助成金はドクターカーや医療機器、感染症対策に使われる個人用防護具の整備に充てられた。

感染症指定病院への支援
2021年になっても新型コロナウイルス感染症は抜本的な治療法が確立されず、ワクチン接種数も増えない中で、次々と変異種が確認された。拡大と収束を何度も繰り返し、終息への気配は一向に見えず、感染者数が増大するたびに医療現場はひっ迫。本来入院すべき患者が自宅療養を強いられるなど、必要とする医療サービスが提供できない状況が現実のものとなった。
そこで当財団は、感染症対応の最前線を担う感染症指定病院等に対して感染対策に必要な資機材等の整備支援を行った。2021年4月より公募を開始、7月上旬には237の病院へ「LOVE POCKET FUND(外部リンク)」、「災害復興支援特別基金」、「キット、願いかなう。基金」の3基金より総額11億3,539万円の支援を決定した。各病院では、感染者を移送するための車両や感染症の治療を行う機材の購入、感染症対策のための施設改修費として活用されている。
その他医療機関への個別支援
新型コロナウイルス感染症が流行して以来、多くの個人・企業から寄付金が寄せられた。こうした寄付金は、公募対象だけに限定せず、個別調査で必要性が確認された複数の医療機関への支援にも充当した。各院では、医療機器はもとより、検査機器を搭載した車両や在宅療養者を病院へ移送する車両の購入に役立てた他、新型コロナウイルスの研究にも活用されている。
(真野 優/災害対策事業部)