時代に即した人材開発への注力

人材開発チームの発足

社会がより一層の複雑化を見せる中、絶えず変化する環境への適応力や、問題解決能力の向上がこれまで以上に問われている。また働き手が年々減少傾向にあり、人材の流動性も高まる中、優秀な人材の確保は多くの業界において喫緊の課題である。それは当財団も例外ではない。
2018年の半ばから、当財団の役員会議でも「日本財団の重要な資産は人であり、経営戦略の中核として人材開発を明確に位置づけることが必要ではないか」という声が上がるようになった。この問題提起を受けて、採用や育成制度などについて部署を横断した議論を開始、2019年6月には専任部署として人材開発チームを設置した。

「七つの鍵」を軸にポリシーを策定

人材開発チーム設置を受け、まず実施したのは当財団の事業特性や人材要件を、経営層と整理する作業であった。その上で、人材開発の方向性を決める議論には、外部コンサルタントも複数巻き込む形で進められた。結果、当財団の活動指針「フィランソロピー実践のための七つの鍵」が有する普遍的な価値を評価する声が多くあがり、人材フローポリシーは、それを踏まえた上で策定した。
採用において、重点を置いたのは以下である。

  • 常に新しい視点を持った多様な人材が入ることで組織の活性化を図ること
  • 多様な人材間の協創につなげること

また、育成において求めたのは以下の点である。

  • OJTを中心としながら、職員一人ひとりの成長と挑戦を後押しすること
  • 育成環境を組織的に整備すること

当財団は、準公金たるボートレースの交付金や寄付金を預かるため規律性を持った組織である必要がある。その一方で社会の変化の兆しを踏まえた創造性を発揮し、また国境や分野を超えた社会課題解決に向け、セクターを超えた連携を各方面へ促す役割も持っている。このため、採用する人材は多様性が欠かせないことを改めて確認した。

採用全般の強化

2019年、当財団はWebサイトに「採用特設ページ」を開設した。これまで非営利団体であることや活動領域の広さなどから、「日本財団の活動は分かりづらい」という声もあり、サイト内には職員へのインタビューや座談会記事を掲載、業務や職員の魅力を発信した。また各大学へ出向いての説明会や1dayインターンを実施、Web広告の活用など、これまで行ってこなかった積極的な採用活動を展開した。結果、2019年以降、採用に際してのエントリー数は如実に増加してきている。

サイト画面
採用特設Webサイトのトップページ
イメージ画像
座談会記事などを通して財団の魅力を発信している

育成体系の整備、海外留学制度

2019年に新たに設けた「海外留学制度」は、職員に国際的視野を持たせ、複雑・多様化する国際環境で的確に業務を執行するための人材育成制度だ。既に本制度を活用して海外に長期留学した職員もいる。
この他にも管理職研修や等級別研修を導入、各種勉強会を開催するなど、職員の研修体制も体系的に整備していった。

組織自ら、絶えず変化し続ける

職員自身に成長のための努力が必要であることは言うまでもないが、それを後押しする環境も重要である。当財団は、経営層や職員全体へのアンケート、ヒアリング等を通し、様々な施策を検討・実施している。例えばチーム・個人としての目標設定シートを確立し、評価は設定した目標の達成度やプロセスを基に行うように改めた。民間企業への出向といった個人の成長につながる機会の創出にも努めている。引き続き、職員だけでなく、組織全体として「絶えず自らを評価し、自らを教育する」ための取り組みを続けていく。
(野本 圭介/経営企画広報部)