資金の多様化と重要度が増す監査

適正さを確認する監査

当財団の監査部は、資金援助する全ての事業が適正に実施されたかを確認し助成金額等を確定する役割を担っている。
当財団は、ボートレースの交付金を主たる財源としつつ、企業や個人からの寄付金、複数の法定外業務(2013年度から開始)に対する国庫補助金に依って活動している。財源は全て第三者からもたらされる資金であるため、運用には厳正さが求められ、それをチェックする監査部は組織の透明性と説明責任を果たす上で重要である。監査する上で重要なポイントとなるのは以下の3つである。

  1. 助成契約書および助成先団体(※1)の規定に基づき、意思決定のプロセスを明確にして事業が実施されたか(合規性)
  2. 競争原理を導入していたか(経済性)
  3. 所期の目標は達成できたか(有効性)

監査部はこれらを中心に多様な観点から事業を振り返り、改善すべき点があれば、事業担当部署や助成先団体に助言や指摘等を行った上で、助成金額等を確定している。

  • 1. ここでは、「助成契約書」は、交付金、寄付金、国庫補助金などによる事業実施において、日本財団と事業実施団体が交わす契約書を総括して意味する。また「助成先団体」とは、交付金事業、寄付金事業、国庫補助金事業を実施する事業実施団体全てを含む。

事業改善のための評価を模索

監査部のもう一つの役割である「事業評価」では、評価者独自の視点(評価指標)により、「当初の目的に沿った成果を挙げることができたか」について価値判断を行っている。これは当財団の助成事業において、審査、採択、決定、実施途中、完了に至る過程とその成果(効果)に対する評価を通して、今後の業務改善を図っていくことを目指すものである。
1995年に開始された「外部専門機関による評価」は、2014年以降、評価に客観性・第三者性を持たせるため、委託先専門機関を1社から12社まで増やし、評価対象事業も、各専門機関が得意とする評価手法や知見の深い分野を勘案し選定、現在は年間9件前後を委託している。評価結果については、目標の達成状況と、事業審査時に期待した成果が挙がったかなどを振り返り、当財団役職員を対象に事業評価報告会を実施。助成先団体に対しても評価者からフィードバックを行い、今後の事業改善の参考となるよう努めている。
一方、評価の視点は当財団の全職員も身に付ける必要があるため、2015年4月から2019年4月までの間、助成事業全件を対象に、事業部と監査部が、監査部作成の評価シートを用いて事業評価を試行した。
適正な評価を導き出すためには、助成事業の採択時に当財団と事業実施団体が直面している課題について共通認識を持ち、対象事業の目標(定性的または定量的)を十分に言語化し、その目標が達成されたか確認する必要がある。しかし、評価は立場が変われば事象のとらえ方も異なるため、当事者同士で理解し合ったつもりでいても、互いの「認識」を改めて言語化すると齟齬が生じる場合がある。また、評価者の評価尺度の均質化には限界がある。今後は、こうした点を踏まえながら試行錯誤を重ね、より有効な評価方法を模索し続ける必要がある。

写真
熊本市経済観光局熊本城総合事務所の実地監査の様子

(森 啓子/監査部)