ウクライナ避難民支援策 報告会開催
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から3年を前に、2025年2月19日(水)、日本財団が生活費等の支援を行っている避難民の現状と今後の見通しについての報告会を開催しました。報告会では、アンケート調査を踏まえた分析結果とウクライナ避難民3名の方に現在の日本での生活や、今後の将来などについて語っていただきました。
日本財団は、3年間の避難民支援で培った経験を今後の支援活動に反映させ、引き続き、皆さまの暮らしに寄り添えるよう、サポートを続けます。これまでの緊急的な生活費支援は、避難民の来日時期に合わせて順次終了していきますが、今後もウクライナ避難民を含む外国人に対して、日本語教育や就労に向けた支援、心理的な相談支援などを継続していく予定です。

これまでの支援概要
日本財団が支援する避難民とは?
1. 避難民の特徴
- 前提:日本国内に身元保証人(戦争前から日本にいる家族、教育機関等)がいる。
- 日本を選んだ理由:「日本に家族がいた」、「日本で学びたい」、「日本に憧れ」。
- 性別:女性が約8割。 ※成人男性は出国制限中。
- 年齢:20代以下が約半数。
- 母国の職歴:院卒割合が高く、専門職やデザイン系の就業者が多い。
2. 過去3年間の日本の緊急人道支援
- 日本財団からは、生活費、帰国費等の経済支援や、NPO等を通した就業支援、日本語教育、相談窓口など。
- 自治体からは、無償住宅など。
- 身元保証人からは、日常的な生活支援など。
3. 現在の状況
- 避難民は、地域社会で共生し、多数のモデルケースが誕生。
- 成人(18歳~64歳)のうち、学生を除く就業率は8割。
- 約3割が出国等で支援を終了済み。※理由は「ウクライナに残る家族との再会」、「母国での教育/仕事」など。
- 残られた約7割のうち、約7割が日本での長期滞在を希望。
4.今後の見通し
- 避難民は 「引き続き日本に滞在される方」、「帰国される方」 に分かれていく。
- 「日本に滞在される方」には就業支援、日本語教育などを継続していく。 ※生活費支援は順次終了。
- 「帰国される方」には、帰国支援を続ける。


ウクライナ避難民3名のコメント抜粋
サマルハ・アレキサンダーさん

現在は長崎県内の高校3年生で、3月に卒業予定です。
私は2022年6月に母と祖母と妹の4人で日本へ来て生活を始めました。来日当初は日本語が全くわからず、買い物や電車の切符を買うときなどで困りました。しかし、2022年8月から日本語学校に入り、半年ほど日本語を一生懸命勉強し、日本語能力試験N4(基本的な日本語を理解できるレベル)に合格し、さらに勉強を重ねて高校に編入できました。
最初は授業内容やテストが難しく、友達を作るのも苦労しましたが、先生や友人のおかげでだんだん日本語が上達し、色々と助けてもらいました。スピーチコンテストにも挑戦し、県大会で賞を取り、九州大会にも出場できました。その時は平和の大切さを話しましたが、多くの人に知ってもらえてよかったと思います。
今年2月に大学受験に合格し、4月から大学で国際観光マネジメントを学ぶ予定です。将来はCA(客室乗務員)や国際的な仕事に就きたいです。ウクライナ語、英語、日本語が話せるので、それを生かしてグローバルに活躍できればと思っています。
リピナ・ワレリヤさん

ウクライナのキエフ出身で、福岡県内の大学に留学しており、専攻は日本語です。3月に卒業し、4月から物流関連の会社で働く予定です。
就職活動についてお話しします。日本企業で働くには日本の労働市場を理解することが重要だと考え、大学で学んだ知識を生かしながら、自分でインターンシップなどにも積極的に参加しました。その結果、物流部門での業務に興味を持ち、この分野で働くことを決めました。面接対策やエントリーシートなどは大変でしたが、失敗や先生の助言から学び、最終的に自分の希望する仕事に内定をいただけました。
今後の暮らしについては、まずは仕事を通じて専門的な知識を身につけたいです。言語学を専攻していましたが、これからは物流分野でキャリアを積みたいと考えています。また、ウクライナの現状を日本で広める活動にも参加したいと思っています。日本にいる間に、日本の歴史や自然、建築などを見てまわりたいです。
シャトレーゼ・ヴィリッチ・ヴィクトリアさん

ロシアの侵攻以前、私はウクライナでお茶専門店の事業を進めていました。日本の茶道に興味があり、10年以上携わってきた経験があります。ですが、2022年2月24日の侵攻により、息子と共にポーランドへ避難し、1カ月後、日本行きのチャーター機で日本へ渡ることができました。
初日から現在に至るまで、多くの日本の方々の支援を受けています。最初は鎌倉の支援者が住まいを見つけてくださり、息子の学校入学や私の仕事探しをサポートしてくれました。息子は日本語が話せませんでしたが、先生方の協力のおかげで順調に学校生活を送ることができ、高校受験にも合格して現在は神奈川県内の高校に通っています。
その後横浜市に移り、ウクライナ避難民向けの住宅を提供していただきました。私は今、菓子製造を行う会社でパートタイムとして働いています。日本語は独学でしたが、2023年から日本財団の奨学金で日本語学校に通うことができ、大変感謝しています。
私たちは日本各地を旅行し、文化や伝統について学ぶ機会にも恵まれました。また、息子はバスケットボール、私は茶道や演劇活動に参加しています。東京のウクライナ大使館主催のイベントにも関わり、収益をウクライナ支援に回すなど微力ながら活動しています。