ホームホスピスにおける入居者へのケアの効果に関する調査結果全国ホームホスピス協会に加盟し、主に高齢者への総合的な支援を行う「ホームホスピス」に関する調査

ホームホスピスは、ケアを必要とする人々が少人数でともに暮らす民家にホスピスケアのチームが入ってサポートする仕組みです。全国ホームホスピス協会に加盟している法人が全国各地で運営しています。日本財団は1990年代よりホスピスケアの推進に向けた取り組みに着手しており、地域での暮らしの延長として在宅ホスピスに着目し、その実践の場であるホームホスピスをモデルとして全国への普及を推進しています。
今回、現在ホームホスピスに入居されている、または入居していたご家族・遺族さま、全国で活躍するスタッフに対して、実際に行っている、または行ったケアの効果に関する調査を実施しました。

主な内容:入居前と入居後の変化

・本人らしい生活の実現度の向上:
ホームホスピス入居前の本人らしい生活の実現度23.4%
→入居後の本人らしい生活の実現度76.1%

・身体的な状態の改善:
入居前後で介護度が改善した入居者27.6%
入居前後で介護度を維持した入居者54.8%
→身体的な状態を維持または改善した入居者 合計82.4%

・入居前に悪化が懸念されていた症状の維持:
入居前に食欲・口腔機能の低下を懸念していたが、入居後に症状の改善、維持、進行の遅延を実感した入居者85.4%

「ホームホスピス入居後、住人の方が最もお身体の状態がよかったときのことについて、最もあてはまるものをお選びください」の質問を入居前と入居後に行なった回答結果。
画像上段に、「Q7:(入居前の方へ)ホームホスピス入居前の住人の方のお身体の状態として、あてはまるものをお選びください。(SA)」の質問に対する回答。全体回答数は201。
画像下段は、「Q18:(入居後の方へ)ホームホスピス入居後、住人の方が最もお身体の状態がよかったときのことについて、最もあてはまるものをお選びください。(SA)」の質問に対する回答。全体回答数は202。

「自立:日常生活に支援や見守りが必要ない」と答えた人は、入居前は2.5%。入居後は4.0%。入居前との差分は1.5ポイント。
「要支援1:日常的なことは基本的に自分で行えるが、一部の家事で支援が必要」と答えた人は、入居前は7.0%。入居後は6.9%。入居前との差分は0ポイント。
「要支援2:立ち上がる・歩くときが不安定。家事以外でも支援が必要」と答えた人は、入居前は5.0%。入居後は3.0%。入居前との差分は-2.0ポイント。
「要介護1:基本的な生活は自分で送れるが、排泄・入浴など日常的な介助が必要」と答えた人は、入居前は7.0%。入居後は8.4%。入居前との差分は1.5ポイント。
「要介護2:自力で歩くことが難しく、着替え・爪切りなども介助が必要」と答えた人は、入居前は10.0%。入居後は9.4%。入居前との差分は-0.5ポイント。
「要介護3:歩行器や車いすを利用しており、日常のほぼすべての場面で介助が必要」と答えた人は、入居前は14.9%。入居後は21.8%。入居前との差分は6.9ポイント。
「要介護4:食事・排泄・入浴など、あらゆる場面で介助が必要」と答えた人は、入居前は24.4%。入居後は23.3%。入居前との差分は-1.1ポイント。
「要介護5:基本的に寝たきりで、介助なくしては生活できない。意思疎通も難しい」と答えた人は、入居前は29.4%。入居後は22.3%。入居前との差分は-7.1ポイント。
「わからない・把握していない」と答えた人は入居前は0%。入居後は1.0%。入居前との差分は1.0ポイント。
「要支援」の計は、入居前は11.9%。入居後は9.9%。入居前との差分は-2.0ポイント。
「要介護」の計は、入居前は85.6%。入居後は85.1%。入居前との差分は-0.4ポイント。
入居前、入居後を比較して、介護度改善…27.6%、介護度維持…54.8%介護度悪化…15.6%、改善または維持・計…82.4%。
※回答しやすいよう、各介護度の定義を書き下した表現で聴取。
※入居前後で介護度の段階がひとつでも改善・悪化(変わらない場合は維持)した人の割合※「わからない・把握していない」、回答矛盾を除いたn=199で集計。
Q ホームホスピス入居後、住人の方が最もお身体の状態がよかったときのことについて、最もあてはまるものをお選びください

その結果、ホームホスピス入居前の本人らしい生活の実現度が23.4%だったのに対し、入居後は76.1%へと上昇がみられました。ホームホスピスにおける自分らしい暮らしと、提供される質の高い個別ケアによって、入居者の満足度・本人らしい生活の実現度が向上したことがわかりました。加えて、入居前後で27.6%の入居者の介護度が改善したほか、54.8%が同じ介護度を維持し、あわせて82.4%の入居者が身体的な状態を維持または改善できたことがわかりました。

Q ホームホスピス入居後、住人の方が最もお身体の状態がよかったときのことについて、最もあてはまるものをお選びください

介護度が改善した入居者は「27.6%」、維持した入居者は「54.8%」

Q ご利用者さまがホームホスピス入居中に受けたケアのうち、ご利用者さまが受けて喜んでいたとあなたが思うもの(ケア)はどれですか?

「ご利用者さまがホームホスピス入居中に受けたケアのうち、ご利用者さまが受けて喜んでいたとあなたが思うもの(ケア)はどれですか?」の質問に対しての回答結果。 ※TOP1とは、Q11.家族から見た住人の幸福度の設問で、「幸せだったと思う」(最上位選択肢)と回答した人が対象 「住人が食べる楽しみを感じられるような献立をできるだけ提供している」と回答したのは、全体(n=203)では61.1%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では61.8%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では0.7ポイント。 「できるだけ他の住人・スタッフのいる居間で過ごしてもらう」と回答したのは、全体(n=203)では52.2%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では58.8%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では6.6ポイント。 「できるだけ起きた状態で住人に過ごしてもらう」と回答したのは、全体(n=203)では48.3%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では56.9%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では8.6ポイント。 「時間帯にあわせて、住人を着替えさせる(1日中寝巻で過ごさない)」と回答したのは、全体(n=203)では48.3%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では60.8%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では12.5ポイント。 「なんでも食事介助するのではなく、住人が自分でできることは見守る」と回答したのは、全体(n=203)では46.3%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では49.0%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では2.7ポイント。 「住人の希望するタイミングで寝てもらう・起きてもらう」と回答したのは、全体(n=203)では45.3%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では55.9%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では10.6ポイント。 「住人の望む形で排泄をしてもらう」と回答したのは、全体(n=203)では40.4%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では49.0%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では8.6ポイント。 「住人がやりたがることを尊重し、それができるよう手助けする(趣味・手遊びなど)」と回答したのは、全体(n=203)では40.4%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では45.1%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では4.7ポイント。 「できるだけ口から食事をとれるよう訓練する(舌マッサージ、とろみをつける…など)」と回答したのは、全体(n=203)では37.4%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では42.2%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では4.7ポイント。 「住人がもともと使っていた身のまわり品を使う(食器・寝具・インテリアなど)」と回答したのは、全体(n=203)では36.9%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では43.1%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では6.2ポイント。 「清潔にするだけでなく、おしゃれを楽しんでもらう(スキンケア・お化粧・ファッションなど)」と回答したのは、全体(n=203)では33.5%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では44.1%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では10.6ポイント。 「(口から食事ができないとしても)住人が好きなものを楽しむ機会をもっている(口に含ませる、目で楽しむ…など)」と回答したのは、全体(n=203)では32.0%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では42.2%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では10.1ポイント。 「本人が望まない拘束具を外せるよう見守る・対策をする」と回答したのは、全体(n=203)では16.3%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では23.5%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では7.3ポイント。 「左記のうち、あてはまるものはひとつもない」と回答したのは、全体(n=203)では4.4%、家族から見た住人の幸福度TOP1(n=102)では2.0%。家族から見た住人の幸福度TOP1-全体の差分では-2.5ポイント。
Q ご利用者さまがホームホスピス入居中に受けたケアのうち、ご利用者さまが受けて喜んでいたとあなたが思うもの(ケア)はどれですか?

入居者が喜んでいたと思うケアは、「食べる楽しみを感じられる献立を提供」が約6割で最多。
幸せだったと思う層は、「着替えさせる」「住人が希望するタイミングでの寝起き」のように、寝たきりにしないことや、「おしゃれを楽しむ」といった衣食住+αのケアが喜ばれたと思うと回答。

調査結果の詳細は、こちらの調査報告書をご覧ください。

一般社団法人全国ホームホスピス協会からのコメント

一般社団法人全国ホームホスピス協会 理事長 市原美穂

ホームホスピスのケアは、小規模の単位のまとまりで暮らしを守っています。
一人一人の個別ケアが実践され、暮らしの続きの中で生きる力を取り戻していかれるのを実感してきました。その効果を検証しエビデンスを探る試みがこの調査であり、現場のホームホスピスに不足しているアプローチでした。自分たちで実施するとどうしてもお手盛りになってしまいがちですが、客観的にそれも一人一人の心情を言葉で拾っていくという極めてアナログ手法で調査されたことに感動しました。
ご家族・ご遺族への調査で、多くの方が入居された方の心身の状態が維持・改善されたことを実感されていること、また、現場スタッフのホームホスピス勤務における満足度調査で、多くの方々が仕事にやりがいを感じている、勤務することに誇りに思っているという結果に、勇気と自信をもらいました。この調査結果をこれからのホームホスピスのケアに反映させ、全国にホームホスピスが広がっていく足掛かりにさせていただきたいと考えます。

写真:一般社団法人全国ホームホスピス協会 理事長 市原美穂)

調査概要

調査背景

近年、在宅医療やホスピスケアの発展、自己決定権の尊重といった社会的な意識の高まりに伴い、自宅で最期を迎えたいと望む人々が増えています。しかし、家族の介護負担の大きさ等の理由から、自宅での看取りが難しいケースも多く存在します。
そこで日本財団では、2012年より、先駆的なモデルとしてシェアハウス型の施設であるホームホスピスの支援を開始しました。ホームホスピスでは、本人の意思に基づいたケアが行われ、自宅のような心地よい環境で過ごすことができます。その結果、介護度が改善したり、入居前より体調が回復したりするなど、劇的な回復を見せるケースも報告されています。しかし、このように現場レベルでは、ホームホスピスのケアが有効であると実感されてきた一方で、その有用性を定量的に示す根拠は十分ではありませんでした。
そこで、ケアの質や満足度、身体的・精神的な健康状態、介護度等の変化の観点から分析を行い、ホームホスピスのケアが利用者に与える効果を明らかにすることを目的とし、「ホームホスピスにおける入居者へのケアの効果に関する調査」を実施しました。

調査対象
  • 現在ホームホスピスに入居されている住人のご家族さま
  • 過去にホームホスピスに入居していた住人のご家族さま・遺族さま
    • 住人ご本人さまは、ご体調がすぐれない場合や、身体・認知機能が低下している方がいることを鑑み、調査の対象とはしていない
  • 全国のホームホスピスで現在スタッフとして働いている方
サンプル数とサンプル対象者
  • ご家族・ご遺族さま向け調査・・・最大有効回答数 207
  • 現場スタッフさま向け調査・・・最大有効回答数 191
実施期間 2025年3月15日(土)~4月24日(木)
調査手法 Webアンケートおよび郵送調査による紙面アンケート

調査結果の引用について

調査結果の引用・転載時には「日本財団『ホームホスピスにおける入居者へのケアの効果に関する調査報告書』調べ」と明記してください。
ウェブサイト上での転載・引用をされる場合は、クレジットに日本財団公式ウェブサイト(http://www.nippon-foundation.or.jp/)へのリンクをお願いいたします。

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