無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」船舶が多数行き交う東京港‐津松阪港で世界初の無人運航実証陸上からの遠隔操船も実施、将来的な実用化に期待

日本財団は、2022年2月26日から3月1日にかけて、コンテナ船「すざく」及び同船の無人運航の監視と遠隔操船が可能な「陸上支援センター」を用いた実証実験を、東京港~津松阪港~東京港で行い、航行に成功しました。
本実証実験は、日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環です。本プロジェクトで開発された、無人運航に必要な機能(遠隔操船、陸上支援等)を網羅した包括的なシステムを有した船が、船舶が多数行き交う海域(東京湾)で無人運航実証実験を行ったのは世界初です。今回の実証実験の成功は、船舶の安全航行や労務負担の軽減に寄与することが期待されます。

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無人運航の実証実験を行ったコンテナ船「すざく」

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陸上支援センターでの遠隔操船の様子

海の事故の減少、海運の人手不足の解消など、さまざまな課題の解決につながるものとして期待されている「無人運航船」は、ICTやAI、画像解析技術をはじめ、日本が世界に対し高い技術を生かすことができる「未来の産業」として期待され、研究・開発が進められています。
日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」は、2020年2月より5つのコンソーシアム(複数の民間共同体)と共同で、無人運航船の開発に取り組んできました。これまで開発を進めてきたさまざまな船種の無人運航船は、2022年1月から3月にかけて、5つすべてのコンソーシアムで実証実験を行っています。

無人運航船の未来創造プロジェクト ~多様な専門家で描くグランド・デザイン~

今回、無人運航船の実証実験を成功させたのは、国内の多種多様な30社でコンソーシアムを組み、オープンイノベーション体制で開発を進めるDFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)※1コンソーシアムです。DFFASコンソーシアムでは、コンテナ船「すざく」(全長95.23m、総トン数749トン)を実験船とし、千葉県千葉市に構えた陸上支援センターからの遠隔操船機能を含む、包括的な無人運航船システムにより、東京港~津松阪港~東京港の往復約790kmの区間を航行しました。
一日あたりの航行隻数が、パナマ運河が約40隻、マラッカ・シンガポール海峡が約320隻に対して、東京湾は約500隻※2という海上交通過密海域において本実証実験が成功したことで、無人運航技術の高さを証明し、実用化を強力に推進することが期待されます。

また、本実証実験の成功により、内航船業界が抱える船員の高齢化や労働力不足、海難事故の減少など社会的課題の解決への貢献や、陸上支援センターでの遠隔操船の実証により、船員の新たな働き方や労働力の創出も期待されます。

  1. DFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)コンソーシアムとは、日本海洋科学を中心として構成されたコンソーシアム。参画企業は日本海洋科学(代表)、イコーズ、ウェザーニューズ、EIZO、MTI、日本電信電話、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、近海郵船、サンフレム、三和ドック、ジャパンハムワージ、ジャパン マリンユナイテッド、スカパーJSAT、鈴与海運、東京海上日動火災保険、東京計器、ナブテスコ、NX海運、日本郵船、日本シップヤード、日本無線、BEMAC、pluszero、古野電気、本田重工業、三浦工業、三井住友海上火災保険、三菱総合研究所、YDKテクノロジーズ。
  2. 国土交通省関東地方整備局 東京湾口航路事務所(外部リンク)

実証実験、開発のポイント

DFFASコンソーシアムでは、無人運航船の社会実装を想定し、設計段階からリスクアセスメントを積み重ね、包括的な無人運航システムを開発しました。具体的には、①自律機能を司る船舶側システム、②遠隔操船機能・機関異常予知機能を含めた陸上から船舶を監視・支援する陸上側システム、③船陸間における安定した情報通信維持を司る通信システムの3つです。
特に②については、千葉県千葉市に「陸上支援センター」を立ち上げ、通常は海上の船員が担う、気象・海象、交通流、船上機器状態などを陸上で把握し無人運航船の航行を支えました。また有事の際には、陸上支援センターから遠隔操船に切り替えることで、システムの安全性と安定性を担保しました。

画像:包括的な無人運航システムの概要図。無人運航船は、無人運航システムにより自動航行を行い、システムの稼働状況を陸上支援センターにフィードバックする 陸上支援センターは、陸上支援システムで無人運航船の航行情報を管理している。また、無人運航船が有事の際には遠隔操船へ切り替える。
包括的な無人運航システムの概要図

関係者コメント(一部)

笹川 陽平(日本財団 会長)

無人運航の実現は、少子高齢化による経済活動の低下、船員の担い手不足、海難事故防止の解決策の一つとなります。この世界最先端の技術を日本で開発し、無人運航船の国際ルール作りにも貢献していきたいと考えております。

赤峯 浩一(株式会社日本海洋科学 代表取締役社長)

無人運航船の姿を運航者の視点から考え、オープンイノベーションによる取り組みの中、これまでとは全く異なる新しいシステムを設計、検証し、無人運航船を創り上げました。今回の成功により無人運航船の社会実装に向け大きな一歩を踏み出せたと確信しております。