北九州市で複数の障害者施設が参加する、就労支援の新拠点が稼働開始福岡県内初、行政文書等のデジタル化に特化した「就労支援の場」

日本財団は、だれもが「あたりまえに地域ではたらく」社会の実現をめざす「日本財団はたらく障害者サポートプロジェクト」を推進しています。このたび2023年8月26日に、NPOセルプセンター福岡主導のもと福岡県内3カ所目となる「就労支援の場」が、社会福祉法人北九州市手をつなぐ育成会が運営する「インクルとばた」内で稼働開始します。
日本財団は、県内の障害者施設に高工賃の仕事を継続して提供可能となる仕組み作りを目的とし、2021年7月に福岡県と連携協定を締結しました。この連携協定に基づき、これまで福岡県内2カ所に「就労支援の場」が設置され、国立国会図書館の蔵書デジタル化業務を受託しています。

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開所式の写真

今回稼働開始する就労の場は、高工賃が見込まれるデジタル化作業により多くの障害者等が参加できるよう整備したものです。既に設置された2カ所同様、日本で唯一となる複数の障害者施設の利用者や、難病や外出が困難等の働きづらさを抱えた方が共同で作業を行うことができる、「福岡モデル」の新拠点として最大30名で運営していきます。
稼働直後はまず、北九州市内の複数施設から、24名の方々が就労予定で、順次就労者数を増やしていく予定です。この施設での開所式に参加した就労者の1人金澤さんは、「スキャンの仕事が楽しい、『就労支援の場』をステップにデジタル化関連で早く就職したい」と、施設への期待のコメントを寄せられました。
今後は、北九州市を中心とした障害者施設(就労継続支援A型、B型※1事業所など)が参加し、共同でデジタル化作業に取り組むことで地域内での工賃・賃金向上を目指すと共に、日本財団では、福岡県以外の自治体でもこのモデルが波及し、デジタル化業務による工賃・賃金向上の後押しとなる取り組みを推し進めてまいります。

  • 1:就労継続支援A型は、原則18歳から65歳未満の人を対象とし、利用者は就労継続支援A型事業所と雇用関係を結んで働きます。就労継続支援B型は基本的に年齢制限がなく、雇用契約を結ばずに、作業訓練などを通じて生産活動を行います。

障害者就労の現状

障害者が就労する個々の事業所では、人手や人材の問題から企業営業が十分に行なえず、年間を通じて安定した高工賃の仕事を確保することが難しく、また、施設単体では生産力が小さく、企業ニーズに対応しきれないため、受注に結び付きづらい状況があります。そのため、障害者就労継続支援A型事業所の賃金は全国平均81,645円、障害者就労継続支援B型事業所の工賃は全国平均16,507円と依然として低い状況です(福岡県におけるA型の平均賃金は79,634円、B型の平均工賃は14,691円)。
本施設では、障害者が自立した生活を送るための高い工賃を実現すべく、福岡県庁が管理する行政文書や公文書館の資料を主な対象としてデジタル化作業を行います。
今般、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、民間企業を中心にテレワークの導入等が進み、紙媒体の文書をデジタル化するニーズが高まっています。また、全国の公文書館や博物館等での歴史・文化資料の保存に際する、原本の劣化防止やインターネット経由の閲覧への対応、医療分野における電子カルテの導入等、情報の電子化が進みつつあるため今後も経常的に仕事が発生すると見込まれます。
行政文書等の新たなデジタル化ニーズに対応可能なモデル形成により、近隣自治体だけでなく民間企業等からも発注が拡大すること、それにより障害者の工賃向上に寄与することを期待しています。

日本財団と福岡県による連携協定に基づいた、「福岡モデル」の詳細についてはこちら

施設の特徴

  • デジタル化業務に複数の障害者施設や働きづらさを抱えた方が参加し、平均工賃・賃金の向上を目指す
  • 参加施設に対する賃金・工賃の創出目標
    A型事業所月額平均賃金:132,000円全国平均の約1.6倍
    B型事業所月額平均工賃: 70,000円全国平均の約4.2倍

画像:デジタル化作業を行っている様子

施設の概要

名称 インクルとばた
所在地 福岡県北九州市戸畑区沖台2-4-8
電話 093-871-0070
営業時間 8:30~17:15
責任者 事業所長 田中英親
収容人数 定員 90名(就労移行支援:12名、就労継続支援B型36名、生活介護:32名、放課後等デイサービス:10名)
主な作業内容
  • 施設内作業(果物の梱包、布巾の縫製、アメニティグッズの包装など)
  • 施設外就労(デジタル化事業、家電製品の分解作業、果物の梱包など)

開所式関係者コメント(一部抜粋)

服部 誠太郎 福岡県知事

「障害者の就業機会の拡大や工賃向上を目指し、福岡県と日本財団が締結した連携協定に基づき、県内三か所目の就労支援の場を北九州地区に開所することとなりました。これまで二か所で国立国会図書館の蔵書のデジタル化業務に取り組み、平均工賃の7倍となる約10万円の収入を得られた方もいらっしゃいます。今後も障害の有無に関わらず誰もが輝くことができる福岡県を目指してまいります。」

武内 和久 北九州市長

「新たに「就労支援の場」が開所されることで新しい仕事が創出され、障害特性に応じた様々な就労の機会が提供されることとなりました。北九州市では、自分らしく生活できる地域社会の実現を目指しており、「就労支援の場」の開所はこの取り組みを更に進める心強いものです。この場所が、障がいのある方の自立と社会参加が促され共生社会の実現につながる場になることを期待しています。」

尾形 武寿 日本財団理事長

「この度、福岡県が行政文書のデジタル化を発注することで、障害者施設で働く方の業務量・内容が拡大することとなりました。今回のような取り組みが更に進むことで、多くの障害者が高い賃金を得られるようになり、福祉サービスを受ける側でなく納税する立場になることで、障害者の方の自己肯定感が上がり社会コストが下がることを期待しています。 」

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