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2050年の海は魚よりもごみが多くなる?今すぐできる2つのアクション

写真:プラスチックごみで溢れる海の中で泳ぐ魚
海で暮らす多くの生き物が海洋ごみによる被害を受けている。Rich Carey/Shutterstock.com
この記事のPOINT!
  • 世界中で年間800万トンの海洋ごみが発生しており、いずれごみの量が魚を上回るかもしれない
  • ペットボトルやレジ袋など街で発生したごみが、海洋ごみの8割を占めている
  • 今日から誰にでもできる行動が、豊かで美しい海を未来に引き継ぐ

執筆:日本財団ジャーナル編集部

※この記事は2019年2月12日に公開した記事を再編集しています

海が、私たちの出すごみによって汚染されている。テレビや新聞で報道される機会も増えたことで多くの人がこの事実を認識しているが、海洋ごみの実態や発生のメカニズム、その影響についてはあまり知られていない。実は、海に面する192の国や地域のうち、海に流出したプラスチックごみの年間流出量の割合を見ると、日本は全体で30位、先進国では20位のアメリカに次ぐ2番目の多さ(※)であることがわかっている。

  • 出典:Jambeckら:Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015)

海洋生物はもちろん、人間にも悪影響を及ぼすと言われる海洋ごみの増加に歯止めをかけるために、私たちにできることはいったい何だろうか?海洋ごみの現状や発生メカニズムとともに、誰もが今日からでもできる取り組みを紹介したい。

年間800万トンの海洋ごみが発生。2050年の海はプラスチックごみだらけに?

海洋ごみとは、海岸に打ち上げられた「漂着ごみ」、海面や海中を漂う「漂流ごみ」、そして海底に積もった「海底ごみ」の総称を指す。その内訳として最も多いのが、釣り糸や食品の容器・包装袋など、プラスチック製のもの。一度使えばすぐに捨ててしまう、いわゆる「使い捨てプラスチック」のごみが抜きん出て多いのだ。

環境省の調べによると、世界では毎年少なくとも800万トンものプラスチックごみが海に流出しているという。これは、東京スカイツリー®およそ222基分に相当する重量だ。そのうち毎年2〜6万トンのプラスチックごみが日本から流出していると推計されている(2010年時点)。

写真
コモロ連合アンジュアン島の海辺に溜まるごみ。私たちの捨てたごみが、他国の浜を汚すこともある

この海に流出している大量のプラスチックごみは、当然海に暮らす生き物に悪影響を及ぼしている。たとえばインドネシアの海岸では先日、6キロ近いプラスチックごみを体内に溜め込んだマッコウクジラが打ち上げられた。プラスチックのコップ115個、ペットボトル4個、レジ袋25枚、ビーチサンダル2足と、その体からおびただしい量のごみが発見されたそうだ。また海で死んでしまったウミガメ102頭の内臓を調査したところ、すべての個体からマイクロプラスチックをはじめとする合成粒子が800以上見つかった。いずれもごみが直接的な死因につながったのかは判明していないが、海の住民たちが被害を受けていることは間違いない。

現在世界の海に漂う海洋ごみの量は、総計約1億5,000万トン(※)に達しているといわれる。そしてこの瞬間もどんどん増え続けている。つまり何もしなければ、海洋ごみは増加の一途をたどるのだ。このペースで進めば、2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になることが予測されている。

  • 参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、McKinsey & Company and Ocean Conservancy(2015)

海洋ごみの実態はあまり知られていない

そんな海洋ごみについて、日本人はどう受け止めているのだろうか。2018年11月に日本財団が行った「海洋ごみに関する意識調査」(外部リンク/PDF)の結果を見ると、「海洋ごみ」という言葉自体は、8割以上の人が知っていると回答しており、広く認知されているようだ。また、海洋ごみ削減のために主体的に動くべき対象としてメーカー、政府、地方自治体だけでなく、約8割の人が個人の取り組みも重要であることを認識している。

図表:「海洋ゴミ(海ごみ)」の問題をご存知ですか?

「海洋ゴミ(海ごみ)」の問題の認知度を示す円グラフ。知っている(聞いたことがある)80.9%、知らない(聞いたことがない)19.1%。
「海洋ごみ」という言葉について、80.9%が「知っている(聞いたことがある)」と回答した

図表:海洋ごみ(海ごみ)の削減に誰の(どこの)取り組みが必要?

海洋ごみ(海ごみ)の削減に誰の(どこの)取り組みが必要か?という質問に対し回答を示す棒グラフ。メーカー(製品を製造する企業)85.2%、政府84%、地方自治体83.3%、個人82.1%、小売店舗(デパート、スーパー、コンビニ等)79.4%、NPO・市民団体・ボランティア62.1%。
海洋ごみの削減について、多くの人が誰もが主体的に取り組むべき問題として捉えている

しかし、海洋ごみの“実態”を知る人はまだまだ少ない。アンケートの結果を見てみると「海洋ごみ」と聞いて思い浮かぶものに、現実との差があることが分かる。想起率が5割を超えるのは、PETボトル、レジ袋(ビニール袋)、発泡スチロール、ビン・缶。特にペットボトルやレジ袋の想起率が7割近い一方で、実際にごみとして多い釣り糸や漁具、食品の包装袋や容器は5割にも満たない。

もしこのまま海洋ごみに対する問題意識が高まっていったとしても、みんなで認識を合わせなければ、海洋ごみを削減するための行動が結果につながらないかもしれない。

図表:「海洋ごみ(海ごみ)」と聞いて思い浮かぶものは?

横棒グラフ:
「海洋ごみ(海ごみ)」と聞いて思い浮かぶものは何?という質問に対し回答を示す棒グラフ。PETボトル74.2%、レジ袋(ビニール袋)67.3%、発砲スチロール63.1%、ビン・缶55.8%、釣り糸・釣り針49.1%、食品包装袋・容器47.5%、ストロー46.8%、木片・木くず40.9%、漁具・漁網33.8%、タバコの吸い殻27.2%、ガラス破片26.7%、ルアー25.9%、靴・サンダル24.2%、花火22.7%、洗剤20.6%、タイヤ19.8%、その他の生活ゴミ18.1%、金属片13.6%、海草11.4%、家電・自転車9.6%、水着・洋服5.4%、ゴルフボール5.3%、その他1.1%。
実際は非常に多い釣り糸や漁具、食品の包装袋や容器を海洋ごみとして認識している人は少ない

海洋ごみの8割は街から来ている。世界は脱プラスチックへ

そもそも海洋ごみはどのようにして発生するのか、そのメカニズムを知らない人も多い。釣り糸や漁具は別として、一見海洋ごみとは関係ないように感じられる街のごみも、実は海へ流れ出ている。投げ捨てなどにより街に捨てられたごみは雨とともに排水溝へと流れ、やがて川をつたい海へと流れ出るのだ。そのようにして街から流れたものが、海洋ごみの8割を占めると言われている。

図表:海洋ごみの発生メカニズム(プラスチック)

インフォグラフィック:日本におけるプラスチック動き(2016年)※国内プラ製品消費量1,052万トン(ロス量含む)。
商品企画、製造・流通、消費、処分、再利用・廃棄の流れでプラスチック製品は動き、処分されるものは899万トン。
再利用・廃棄されるもののうち、エネルギーとして再利用されるものは57%で516万トン。新たにプラスチック製品として再利用されるものが1%で8万トン。マテリアルリサイクルされるもの23%(206万トン)のうち、国内で利用されるものは6%、海外(アジア)で利用されるものは17%。工業原料として再利用されるものは4%で36万トン。埋立焼却されるものは16%で140万トン。
プラスチックごみ(ペットボトル、ごみ袋、ストロー、釣り糸・釣り針、漁具、家電、タイヤ、日用品、津波のがれき)は、製造・流通、消費、処分の段階で海へと流れ出し、特に消費の段階ではその多くが流出。またマイクロプラスチックは海外(アジア)でマテリアルリサイクルされる際に多く海へ流出。海亀や魚といった海の生き物たちに多大な被害を与えている。
海ごみは私たち一人ひとりが取り組むべき問題。
©2018 The Ocean Policy Research Institute
海洋ごみとは関係ないように感じられる街のごみも海へ流出。その発生メカニズムを正しく認識することが大切

この現状を受けて、世界では脱プラスチックの取り組みが急速に進んでいる(別タブで開く)

例えば、最も先進的と言えるフランスでは、2016年に世界に先駆けてプラスチック製のレジ袋の使用が禁止され、2020年に使い捨てのプラスチック容器や食器を禁止する法律を施行。2040年までに全ての使い捨てプラスチックをなくすゴールが設けられ、2022年1月から全ての小売業において野菜と果物のプラスチック包装が原則として禁止。4月には使い捨てプラスチック包装のリデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の3Rに関する国家戦略を採択する政令を公布した。

またアメリカでは、州や自治体ごとで取り組みが異なっていたところ、2021年11月に2030年までにリサイクル率50パーセント達成を目指す国家リサイクル戦略を発表。EU(欧州連合)では「使い捨てプラスチック流通禁止指令」が2021年7月より施行され、中国では2021年9月にプラスチック汚染を改善する行動計画を発表し、2025年までにプラスチックごみを削減するための目標が明記された。

一方、日本ではプラスチックの資源循環を推進するための「プラスチック資源循環法」が2021年6月に公布され、2022年4月から施行。プラスチックの廃棄量を削減するだけでなく、3R+Renewable(リニューアブル。再生可能資源への代替)の取り組みにより循環型社会の推進に力を入れている。

今すぐ始められる一人一人のプラスチックごみ対策

では、私たち一人一人ができることとは何だろう。以下の2つの行動を心掛けるだけで、海の環境もずいぶん改善されるだろう。

外で出たごみは家に持ち帰る、または決められた場所で処分する

例えば、屋外でこんな経験はないだろうか?「ごみ箱がいっぱいだったから、そのまま脇にごみを置いた」「レジ袋にごみを入れたまま、分別しないでそのまま捨てた」「ふたの隙間から、側溝にごみを捨てた」。このような行動はぜひ慎んでほしい。

毎日の暮らしのなかでできるだけごみを出さないようにする

例えば、買い物時には使い捨て商品ではなく、できるだけ再利用できるものを選ぶ。なるべく包装されていない商品を選ぶ。マイバックやマイ箸を持ち歩くなど心がけたい。

また、県や市町村、地域のコミュニティや団体が主催する清掃イベントに参加するのも一つの手だ。各サイトやSNSなどから発信される情報などに目を向けて、活動に加わってみてはどうだろう。

写真:ごみ袋とトングを使って海辺のごみ拾いをする大人や子どもたち
街中はもちろん、実際に歩きながら海辺をきれいにすれば、より海洋ごみの深刻さがわかる

ちなみに日本財団では海洋ごみへの対策として、2018年11月に、産官学民が連携した国民的な取り組みを目指す新プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」(外部リンク)の立ち上げを発表した。日本財団がハブとなって、民間企業や自治体、大学や研究機関などと連携し、「これ以上、ごみを海に出さない」意識を社会に高めるとともに、海洋ごみの削減を目指す仕組みづくりや調査研究などを行っていく。今後も日本財団ジャーナルで動向をお知らせするので、せひチェックしてほしい。

海に囲まれている日本。魚よりごみの量が多くなる日が訪れる前に、私たち一人ひとりができることから始めてみよう。みんなの意識が変われば、豊かで美しい海を未来に引き継げるはずだ。

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