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2050年の海は魚よりもごみが多くなる? 今すぐできるアクション

写真:プラスチックごみで溢れる海の中で泳ぐ魚
海で暮らす多くの生き物が海洋ごみによる被害を受けている。Rich Carey/Shutterstock.com
この記事のPOINT!
  • 海洋ごみの約7~8割は、ペットボトルなど街で発生したごみが川を伝って海へ流れ出たもの
  • WEFの推計によると、このままでは2050年の海はプラスチックごみの量が魚の量を上回るとされている
  • 個人ですぐにできる対策は、ごみを持ち帰る、使い捨てを断る、正しく分別する、ごみ自体を減らすなどたくさんある

執筆:日本財団ジャーナル編集部

※この記事は2019年2月12日に公開した記事を再編集しています

あなたが今日使ったペットボトルが、海の生き物たちの命を脅かしている可能性があることをご存知だろうか。

「海洋ごみ問題」とは、私たちが普段の生活で使っているペットボトルやレジ袋などのプラスチックごみが、街から川を伝って海へ流れ出し、深刻な汚染を引き起こしている環境問題である。

UNEP(国連環境計画)が2021年に公表した報告書(※1)によると、世界では毎年、約1,100万トンのプラスチックごみが海へ流出。これは、ジャンボジェット機(約400トン)約2万7,500機分に相当する。また、環境省の調べ(※2)によると、日本でも2023年時点で年間最大2万7,000トンのプラスチックごみが流出していると推計された。

このまま対策を講じなければ、海へ流出するプラスチックごみの量は2040年までに毎年2,300万トンから3,700万トンまで増加(※1)。WEF(世界経済フォーラム)が2016年に発表した報告書(※3)では2050年には海洋プラスチックごみの量が、海にいる魚の量を上回ると推計され、世界中を驚愕させた。

海洋生物はもちろん、人間にも悪影響を及ぼすといわれるプラスチックごみの流出に歯止めをかけるために、私たちにできることとは? 海洋ごみの現状や発生メカニズムとともに、誰もが今日からでもできる取り組みを紹介したい。

2050年の海はプラスチックごみだらけに?

「海洋ごみ」とは、海岸に打ち上げられた「漂着ごみ」、海面や海中を漂う「漂流ごみ」、そして海底に積もった「海底ごみ」の総称を指す。その内訳として最も多いのが、釣り糸や食品の容器・包装袋など、プラスチック製のもの。一度使えばすぐに捨ててしまう、いわゆる「使い捨てプラスチック」のごみが抜きん出て多いのだ。

写真
コモロ連合アンジュアン島の海辺に溜まるごみ。私たちの捨てたごみが、他国の浜を汚すこともある

この海に流出している大量のプラスチックごみは、当然海に暮らす生き物に悪影響を及ぼしている。

例えば、インドネシアの海岸では、6キロ近いプラスチックごみを体内に溜め込んだマッコウクジラが打ち上げられた。プラスチックのコップ115個、ペットボトル4個、レジ袋25枚、ビーチサンダル2足と、その体からおびただしい量のごみが発見された。

また海で死んでしまったウミガメ102頭の内臓を調査したところ、すべての個体からマイクロプラスチックをはじめとする合成粒子が800以上見つかった。いずれもごみが直接的な死因につながったのかは判明していないが、海の住民たちが被害を受けていることは間違いない。

現在世界の海に漂う海洋ごみの量は、総計約7,500万~1億9,900万トン(※4)に達しているといわれる。そしてこの瞬間もどんどん増え続けている。

海洋ごみの実態はあまり知られていない

そんな海洋ごみについて、日本人はどう受け止めているのだろうか。2018年11月に日本財団が行った「海洋ごみに関する意識調査」(外部リンク/PDF)の結果を見ると、「海洋ごみ」という言葉自体は、8割以上の人が知っていると回答しており、広く認知されているようだ。

また、海洋ごみ削減のために主体的に動くべき対象としてメーカー、政府、地方自治体だけでなく、約8割の人が個人の取り組みも重要であることを認識している。

図表:「海洋ゴミ(海ごみ)」の問題をご存知ですか?

「海洋ゴミ(海ごみ)」の問題の認知度を示す円グラフ。知っている(聞いたことがある)80.9%、知らない(聞いたことがない)19.1%。
「海洋ごみ」という言葉について、80.9パーセントが「知っている(聞いたことがある)」と回答した

図表:海洋ごみ(海ごみ)の削減に誰の(どこの)取り組みが必要?

海洋ごみ(海ごみ)の削減に誰の(どこの)取り組みが必要か?という質問に対し回答を示す棒グラフ。メーカー(製品を製造する企業)85.2%、政府84%、地方自治体83.3%、個人82.1%、小売店舗(デパート、スーパー、コンビニ等)79.4%、NPO・市民団体・ボランティア62.1%。
海洋ごみの削減について、多くの人が誰もが主体的に取り組むべき問題として捉えている

これらの調査データから海洋ごみについての認知は広がっていることが分かる。

しかし、海洋ごみの“実態”を知る人はまだまだ少ない。アンケートの結果を見てみると「海洋ごみ」と聞いて思い浮かぶものに、現実との差があることが分かる。想起率が5割を超えるのは、PETボトル、レジ袋(ビニール袋)、発泡スチロール、ビン・缶。特にペットボトルやレジ袋の想起率が7割近い一方で、実際にごみとして多い釣り糸や漁具、食品の包装袋や容器は5割にも満たない。

もしこのまま海洋ごみに対する問題意識が高まっていったとしても、みんなで認識を合わせなければ、海洋ごみを削減するための行動が結果につながらないかもしれない。

図表:「海洋ごみ(海ごみ)」と聞いて思い浮かぶものは?

横棒グラフ:
「海洋ごみ(海ごみ)」と聞いて思い浮かぶものは何?という質問に対し回答を示す棒グラフ。PETボトル74.2%、レジ袋(ビニール袋)67.3%、発砲スチロール63.1%、ビン・缶55.8%、釣り糸・釣り針49.1%、食品包装袋・容器47.5%、ストロー46.8%、木片・木くず40.9%、漁具・漁網33.8%、タバコの吸い殻27.2%、ガラス破片26.7%、ルアー25.9%、靴・サンダル24.2%、花火22.7%、洗剤20.6%、タイヤ19.8%、その他の生活ゴミ18.1%、金属片13.6%、海草11.4%、家電・自転車9.6%、水着・洋服5.4%、ゴルフボール5.3%、その他1.1%。
実際は非常に多い釣り糸や漁具、食品の包装袋や容器を海洋ごみとして認識している人は少ない

海洋ごみの8割は街から来ている。世界は脱プラスチックへ

そもそも海洋ごみはどのようにして発生するのか、そのメカニズムを知らない人も多い。釣り糸や漁具は別として、一見海洋ごみとは関係ないように感じられる街のごみも、実は海へ流れ出ている。

投げ捨てなどにより街に捨てられたごみは雨とともに排水溝へと流れ、やがて川をつたい海へと流れ出るのだ。そのようにして街から流れたものが、海洋ごみの8割を占めると言われている。

図表:海洋ごみの発生メカニズム(プラスチック)

インフォグラフィック:日本におけるプラスチック動き(2016年)※国内プラ製品消費量1,052万トン(ロス量含む)。
商品企画、製造・流通、消費、処分、再利用・廃棄の流れでプラスチック製品は動き、処分されるものは899万トン。
再利用・廃棄されるもののうち、エネルギーとして再利用されるものは57%で516万トン。新たにプラスチック製品として再利用されるものが1%で8万トン。マテリアルリサイクルされるもの23%(206万トン)のうち、国内で利用されるものは6%、海外(アジア)で利用されるものは17%。工業原料として再利用されるものは4%で36万トン。埋立焼却されるものは16%で140万トン。
プラスチックごみ(ペットボトル、ごみ袋、ストロー、釣り糸・釣り針、漁具、家電、タイヤ、日用品、津波のがれき)は、製造・流通、消費、処分の段階で海へと流れ出し、特に消費の段階ではその多くが流出。またマイクロプラスチックは海外(アジア)でマテリアルリサイクルされる際に多く海へ流出。海亀や魚といった海の生き物たちに多大な被害を与えている。
海ごみは私たち一人ひとりが取り組むべき問題。
©2018 The Ocean Policy Research Institute
海洋ごみとは関係ないように感じられる街のごみも海へ流出。その発生メカニズムを正しく認識することが大切

この状況を受けて、世界では脱プラスチックの取り組みが急速に進んでいる。現在は単にプラスチックをなくすのではなく、不要な使い捨てプラスチックを減らし再使用と再資源化を広げ、海へ漏れ出さない仕組みをつくる取り組みが加速している。

EUとフランスの取り組み

EUとフランスでは、プラスチックに関する規制が最も制度化されている。

EUでは2021年7月3日より「使い捨てプラスチック指令(SUPD)」が適用開始となり、ヨーロッパの海岸で最もよく見られる10種類の使い捨てプラスチック製品を規制対象にした(※5)。

  • 綿棒の軸
  • カトラリー、皿、ストロー、マドラー
  • 風船と風船用の棒
  • 食品容器
  • 飲み物用のカップ
  • 飲料容器
  • タバコの吸い殻
  • ビニール袋
  • パケットと包装材
  • ウェットティッシュと衛生用品

上記の10種類は、持続可能な代替品が容易に入手できる価格の場合、EU加盟国の市場に出回ることが禁止されている。

それ以外のプラスチック製品についても「消費削減」「回収しやすいようキャップと連結したボトルの設計と導入」「消費者に向けプラスチック製品を投棄した場合に自然環境に及ぼす影響の表示を生産者に義務付ける」など、プラスチックのライフサイクル全体を管理できるような取り組みを行っている。

さらに2026年8月12日には、包装全体を対象に新しい包装・包装廃棄物規則(PPWR)が適用される。PPWRは「2030年までにEU市場の包装を経済的に実行可能な形でリサイクル可能にすること」を目標にしており、持ち帰り販売でのマイ容器利用や、一部の単回使用包装の制限も盛り込まれている(※6)。

フランスはさらに踏み込み、2040年までに単回使用プラスチック包装を段階的に終わらせる方針を維持しつつ、2025年までに単回使用プラスチック包装の20パーセント削減。その半分以上を再使用で達成する目標や、店内飲食での使い捨て食器禁止を進めている(※7)。

アメリカとカナダの取り組み

アメリカやカナダでは欧州のような一律禁止ではなく、国家戦略と重点品目の規制を組み合わせた脱プラスチックへの取り組みが行われている。

アメリカのEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)は「National Strategy to Prevent Plastic Pollution」を立ち上げ、プラスチックの生産と廃棄物の影響を次の6つの分野で最小化する目標を掲げている。

  • 製造
  • 材料、製品設計
  • 廃棄物発生抑制
  • 廃棄物管理
  • 回収、除去
  • 水域、海洋

さらに、並行して2030年までにリサイクル率50パーセントを目指して脱プラスチックへの取り組みを拡大している(※8)。

カナダでは2030年までにゼロプラスチック廃棄物を目標としており、2026年現在も単回使用プラスチック禁止規則が適用されている。レジ袋、カトラリー、問題のあるフードサービス容器、リングキャリア、マドラー、ストローの6類型が使用禁止だ(※9)。

中国の取り組み

脱プラスチックへの取り組みは欧州だけでなく、アジア圏でも取り組みが進んでいる。

中国は生産から流通、消費、回収、最終処理、海洋清掃までを一体で動かす考え方を強めており、2021年に定められた方案による次の目標のために取り組みが進められてきた。

「2025年までに小売、電子商取引、フードデリバリー、宅配、宿泊など重点分野での不合理な単回使用プラスチック利用を大幅に減らし、循環型宅配包装を1,000万個規模まで広げる」

この目標がどのような結果をもたらしたのかは、これから精査されていくだろう。

今後は2025年に生態環境部が、目標に向けて行われていた取り組みの継続と、化粧品生産でのプラスチックマイクロビーズ全面禁用、海洋マイクロプラスチック監視の継続、65の海湾での海洋ごみ清掃計画、EC荷物の二重包装抑制と循環包装の拡大などが進められていくと発表している(※10)。

日本の取り組み

日本では2019年の「プラスチック資源循環戦略」と、G20大阪サミットで共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を土台に、2022年4月施行の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が中心となった、資源循環型の制度設計が進められている。

日本の制度はプラスチックを“作る前”と“捨てた後”の両方に制度が設けられているのが特徴だ。

プラスチックを作る前の決まりである「プラスチック使用製品設計指針」では、減量化、包装簡素化、長寿命化、単一素材化、分解・分別しやすさ、再生プラスチックやバイオプラスチック利用などが求められており、優れた設計は国が認定する。認定製品はグリーン購入法上の配慮やリサイクル設備支援の対象となる。

プラスチックを捨てた後は、市区町村が従来の容器包装だけでなく、製品プラスチックも分別収集し、指定法人委託または国の認定を受けた再商品化計画にもとづいて再商品化できる仕組みが整えられている。

さらに、持続可能な導入方針を示す「バイオプラスチック導入ロードマップ」も策定され制度が実装段階に入っている。日本でも個別の回収・再商品化・設計認定が運用され始め、海洋プラスチックごみへのさらなる対策が進められている(※11)。

今すぐ始められる一人一人のプラスチックごみ対策

では、私たち一人一人ができることとは何だろう。以下の2つの行動を心掛けるだけで、海の環境もずいぶん改善されるだろう。

外で出たごみは家に持ち帰る、または決められた場所で処分する

例えば、屋外でこんな経験はないだろうか?「ごみ箱がいっぱいだったから、そのまま脇にごみを置いた」「レジ袋にごみを入れたまま、分別しないでそのまま捨てた」「ふたの隙間から、側溝にごみを捨てた」。このような行動はぜひ慎んでほしい。

不要な使い捨て品を受け取らない

日本では2020年にレジ袋の有料化が開始となり、経済産業省はその目的の1つに「本当に必要かを考えてもらい、ライフスタイルを見直すきっかけにすること」としている。

さらにプラスチック資源循環法では、事業者に対して次の「特定プラスチック使用製品」12種類について削減が求められている。

  • フォーク
  • スプーン
  • テーブルナイフ
  • マドラー
  • ストロー
  • ヘアブラシ
  • くし
  • かみそり
  • シャワーキャップ
  • 歯ブラシ
  • 衣類用ハンガー
  • 衣類用カバー

「これらを受け取らず、継続的に使用するアイテムに切り替える」ことや、「本当に必要な量だけを受け取る」のを心がけてみよう(※11)。

自治体のルールに則って正しく分別する

ごみの分別は守るべきルールとして認識してきた人も多いと思うが、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された現在では、もう少し踏み込んだ分別が必要になる。

今まではプラスチック容器や包装以外のものは燃えるごみとして扱われている市区町村もあった。しかし、法の施行後はプラスチック製品の再商品化が仕組化されたため、リサイクルできる形でプラスチックごみを捨てることが求められる。

また、その基準は住んでいる市区町村で異なるため、プラスチックごみ対策のために分別をするなら、自治体のルールをしっかり確認しておこう。

毎日の暮らしのなかでできるだけごみを出さないようにする

例えば、買い物時には使い捨て商品ではなく、できるだけ再利用できるものを選ぶ。なるべく包装されていない商品を選ぶ。マイバッグやマイ箸を持ち歩くなど心がけたい。

また、県や市町村、地域のコミュニティや団体が主催する清掃イベントに参加するのも1つの手だ。各サイトやSNSなどから発信される情報などに目を向けて、活動に加わってみてはどうだろう。

写真:ごみ袋とトングを使って海辺のごみ拾いをする大人や子どもたち
街中はもちろん、実際に歩きながら海辺をきれいにすれば、より海洋ごみの深刻さが分かる

ちなみに日本財団では海洋ごみへの対策として、2018年11月に、産官学民が連携した国民的な取り組みを目指す新プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」(外部リンク)の立ち上げを発表した。

日本財団がハブとなって、民間企業や自治体、大学や研究機関などと連携し、「これ以上、ごみを海に出さない」意識を社会に高めるとともに、海洋ごみの削減を目指す仕組みづくりや調査研究などを行っていく。今後も日本財団ジャーナルで動向をお知らせするので、ぜひチェックしてほしい。

海に囲まれている日本。魚よりごみの量が多くなる日が訪れる前に、私たち一人一人ができることから始めてみよう。みんなの意識が変われば、豊かで美しい海を未来に引き継げるはずだ。

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