日本一楽しいビーチクリーンに密着!参加して分かった多くのボランティアが集まるワケ

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ごみ拾い後に開催したヨガ教室。NPO団体「海さくら」のごみ拾いに密着レポート

取材:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

  • 深刻化する海洋ごみの問題は、「海にごみを出さない」という社会全体の意識を高めることが重要
  • 海でのごみ拾いは、まずは「海を楽しむ」という気持ちが大切
  • 海洋ごみの大半は街から流れてきたもの。海をきれいにするには街のごみを減らす必要がある

海が今、深刻な状況に陥っている。世界では毎年約800万トンものプラスチックごみが海に流出しており、このペースで進めば、2050年には魚よりプラスチックごみの量が多くなると予想されているのだ。

これを受け、日本財団と環境省が、増え続ける海洋ごみの対策を目的とした全国一斉清掃キャンペーンを開催。2019年5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)を経て6月8日(世界海洋デー)前後を「海ごみゼロウィーク」(別ウィンドウで開く)として、産学官民が連携した清掃活動を実施する。海洋ごみの問題についてより多くの人に理解を促し、「これ以上、海にごみを出さない」という社会全体の意識を高めることが狙いだ。

5月30日に神奈川県・江の島で開催されるこのキャンペーンのキックオフイベントを盛り上げるのが、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い!」をスローガンに掲げるNPO団体「海さくら」。彼らが毎月開催しているごみ拾いは、老若男女が楽しめるよう工夫されており、毎回多くの一般ボランティアが参加している。今回はその人気の秘密を探るべく、ウィークに先立ち、5月18日に開催されたごみ拾いに編集部が潜入した。

美しい江の島に隠れた、たくさんの海洋ごみ

「海さくら」は“タツノオトシゴが住めるほどきれいな海”を目指し、神奈川県・江の島を中心に清掃活動を行っている。今回の舞台は、片瀬江ノ島駅から徒歩5分ほどの片瀬東浜海水浴場だ。

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今回集まったおよそ300人の参加者

午前10時頃、徐々に人が会場に集まり始めた。参加者は家族連れや友人同士、ご年配のグループ、さらには1人で訪れた若者などさまざまだ。

「海さくら」のごみ拾いが参加しやすい理由の1つに、手ぶらで来られるという点があるだろう。ごみ袋やトングなど、参加者は何も用意しなくて良いので、思い立ったらすぐに足を運ぶことができる。

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映画『海獣の子供』のパネルを手に持つ「海さくら」ごみ拾い隊長の面々。その右側で挨拶をする「海さくら」代表の古澤さん

ここで「海さくら」代表の古澤純一郎(ふるさわ・じゅんいちろう)さんが挨拶に登場した。今回のごみ拾いは、江の島を舞台にした漫画が原作のアニメーション映画『海獣の子供』とのコラボレーション。作品の舞台である江の島の魅力も語りつつ、今日のプログラムの説明が終わると、いよいよごみ拾いのスタートだ。

写真:砂浜でごみを拾う参加者の母と息子
親子での参加者も多く見受けられた

「早く行こうよ〜!」と駆け出しそうな勢いの子どもたちに続いて全員で海岸へ向かうが、パッと見たところごみがほとんど落ちていないように見える。それもそのはず、「海さくら」は毎月大勢でごみ拾いをしているのだ。

「ごみを拾いに来たのに拾うものがないのでは…」と、変な心配をしてしまうほどである。

しかし足元をよく見ると、細かなプラスチックごみや発泡スチロールの破片など、さまざまなごみが見つかった。目立つごみを拾うと「大物」の流出を防げたのだと海に貢献した気持ちになれる。

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落ちていたプラスチックごみ
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次々と見つかるたばこのフィルター

中でも多かったのが、たばこのフィルター。これに注目した「海さくら」は定期的に「タバコフィルター選手権」というゲームを実施している。3分間で誰が一番フィルターを拾ったか、みんなで競うというもの。裏を返せば、大勢で競い合えるほど大量のフィルターが浜に流れ着いているということになる。

そうして集められたフィルターはプラスチック製品にリサイクルされ、たばこの葉と紙の部分はコンポスト(堆肥)として再利用されるそうだ。

「海さくら」のごみ拾いは“とにかく自由”であることがポイント。近所で買い食いして休憩しつつ、ごみ拾いを楽しんでもよいのだ。また「子どもはどんどん遊んで!」と代表の古澤さんは言う。自身も海を愛してやまない彼は、「とにかくまずは海を楽しんでほしい」という思いが根幹にある。

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ごみ拾いをしつつ、砂遊びをする子ども

大勢の人がなぜごみ拾いに参加するのか?理由から見える「海さくら」の魅力

ここで、ごみ拾いに参加されている方に突撃インタビュー。なぜ「海さくら」の清掃活動に参加したのだろう。まずは神奈川県・横浜市から来たという井上さんに話を伺った。

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今回が2回目の参加となる井上さん

井上さんは、「海さくら」代表・古澤さんの大学時代の同級生だそう。知り合いを通じて彼の活動を知り、今回が2回目の参加となる。

「海は昔から好きで、サーフィンもしていたんです。沖にいるとごみはあまり気にならないんですが、浜に来るとこんなにあったのか!と改めて驚くこともよくありました。遊んでいる側としても、やっぱり海はきれいにしたいなと思ったんです」

江の島の浜辺は美しいが、ごみ拾いをしていると、砂の中にさまざまなごみが紛れていることに気付くそうだ。

「この砂の中に、どれだけごみが埋もれているのかと思うと…。ちょっと恐ろしい気持ちになりますね」

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ごみ拾いに参加する井上さんのご家族

初回は1人で参加した井上さんだが、重要な課題を押し付けがましくなく解決に導こうとする「海さくら」のポリシーを面白いと感じた。これは子どもにも体験させたいと思い、今回は家族3人で訪れたそう。「家族で来た方が楽しいしね」と少し嬉しそうだ。とはいえ、まだ小さな子どもに環境問題は難しいのでは?

「ええ、確かにこの子もよく分かってないでしょうね(笑)。でもそれでいい。ここでの活動を見ていれば、なんとなくごみは捨ててはいけないということは感じてくれると思うんです」

続いて、楽しそうにおしゃべりしながらごみ拾いに勤しむ学生を発見!古くからの友人同士であるという小池さんと野村さんにも、話を聞いてみた。

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左からごみ拾いに参加した、学生の小池さんと野村さん

野村さんは中学2年生の頃から「海さくら」の清掃活動に参加しており、今年で5年目になるという“ベテランごみ拾い”。彼女は学校行事で出会った日本財団の職員に「海さくら」を紹介され、参加するようになったそう。

「初めて参加した時は正直、これで本当に海がきれいになるのか、意味があるのかなって思ったんです。だけど古澤さんの話を聞いて、“社会貢献”に縛られ過ぎず、気ままに楽しくごみ拾いをしている海さくらの一員に私もなりたいと、だんだん思うようになりました」

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おしゃべりをしながらも、目に入ったごみはしっかり拾う小池さんと野村さん

最近参加するようになった友人の小池さんは、中学生の頃から野村さんを通して「海さくら」の存在を知っていたという。

「彼女がごみ拾いを楽しんでいることはずっと知っていて、気になってはいたんです。だけどごみ拾いというと“奉仕活動”とか“ボランティア”という堅苦しい印象が強くて、少しためらいがありました」

しかし実際に参加してみると、想像以上に自由で気楽な雰囲気。今ではすっかり江の島でのごみ拾いにハマり、今回で5回目になるそうだ。

ところで、「これまで見た中で驚いた海洋ごみは?」と尋ねたところ、2人はうーん…と顔を見合わせ、「鉄板」「鍋」「タイヤ」「釣りざお丸ごと」など、かなりの大物を列挙してくれた。今回のごみ拾いでは小さなものが多かったが、雨上がりには大きなものが流れ着くのだという。ちなみに「海さくら」では「面白いゴミ拾った選手権」を行うこともあり、彼女たちが挙げてくれたようなごみは皆の前で発表されるそうだ。

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いざ鎌倉!と言わんばかりに、鎧を着てごみ拾いに参加した方

ふと見渡すと、圧倒的な存在感を放つグループが目に入った。脇差しの代わりにトングを携えた武士が浜辺を清掃している…。彼らは一体何者なのだろうか。

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ごみ拾いに参加する鎌倉武士隊の皆さん

手作りの鎧(よろい)を身に着けた彼らは「鎌倉武士隊(かまくらもののふたい)」。普段は子どもたちに歴史を伝える活動をメインに行っているそう。

「鎌倉といえば源頼朝が有名で、彼が活躍した平安期以外の鎌倉の歴史は注目されづらいんです。そこで、平安以前の鎌倉の姿を伝える活動をしています」と、同団体副代表の葛西さん。歴史を楽しく伝えるため、鎌倉ガイドや鎧レンタル、鎧作り教室なども展開しているという。

そんな彼らはなぜ、ごみ拾いに参加することにしたのだろうか。きっかけは、もともとビーチクリーンをしていた方が「鎧を着てごみ拾いをしたい」と鎧作り教室に訪れたことだった。

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鎌倉武士隊の副代表、葛西さん

「オリンピックに向けて日本文化を発信しつつ、よりきれいな浜にしたいとのことでした。その輪が広がり、こうして鎧を着て海さくらさんのごみ拾いに参加するメンバーが増えたんです」

葛西さん自身は今回が3回目の参加。鎧を着てごみ拾いをするのも、慣れれば苦がないという。「最近、『鎌倉武士クリーン隊』を結成したんです。今はこうしてイベントに参加させていただいていますが、今後は仲間を増やして、独自にクリーン活動ができればと考えています」

「海さくら」の活動は多くの人に影響を与え、その輪は広がっているようだ。

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きれいな浜辺からは想像もつかないほど集まった、大量の可燃ごみ
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不燃ごみの中にあった、街から流れ着いたであろう傘

集まったごみを並べてみると、不燃と可燃のごみを合わせて40袋以上となった。拾うものがないように見えた江の島の浜辺でも、わずか45分ほどでこれだけのごみが見つかったのだ。

そしてこの浜辺で見つかるごみの大半が、街から流れてきたもの。海をきれいにするには、その元となる街のごみを減らさなければならないのだと実感させられる。

ごみ拾いのご褒美!ビーチヨガで心身を癒す

ごみ拾いが終わったら、後半はインストラクターによるビーチヨガを開催。大人と子どもに分かれてレッスンが始まった。

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海の目の前、大空の下というぜいたくな環境で体をほぐす参加者

寄せては返す美しい海の音をBGMに、潮風を受けながら参加者はじっくりと体をほぐしている。日頃のストレスや凝りもあってか、初めは痛そうに見えた大人たち。しかしゆっくりと呼吸を繰り返すうち、徐々に表情も身体もやわらいでいく。

子どもたちも、隣で特別なプログラムを受けていた。海の生き物をテーマにした易しいヨガを実践し、波打ち際でバランス感覚を高めるポーズを楽しんだ。

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インストラクターに導かれながら、波が引いた後の浜でヨガを楽しむ子どもたち

たっぷり45分ほどビーチヨガを楽しみ、今日のプログラムは終了。映画『海獣の子供』によるオリジナルのシールや、栄養ドリンクがお土産に配られた。また、参加するごとに捺されるスタンプが12個たまった参加者には「ゴミ拾い達人Tシャツ」が贈呈された。

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ひんやり冷えた栄養ドリンクをもらう参加者たち

ちなみに、2年間休まなければ「ゴミ拾いの鉄人Tシャツ」、3年間継続すれば「ゴミ拾いの福来人Tシャツ」、4年目には「ゴミ拾いの超人Tシャツ」がもらえる。最終的には「ゴミ拾いのMASTER(マスター)」用のオリジナルブラックトングが手に入る。

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「ゴミ拾い達人Tシャツ」を手に入れた参加者。彼が129人目
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「海さくら」151回目のごみ拾いに参加した皆さん

「海ごみゼロウィーク」の一環として「海さくら」によって6月8日に開催されるイベントは、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とコラボしたごみ拾いだ。「リトルマーメイド」がテーマで、ビーチコーミング(海岸に打ち上げられた漂着物を利用すること)で作った楽器の演奏が楽しめるという。

「ごみ拾いとか楽しくなさそうだな…」。そう思っている方にこそ足を運んでほしい、自由な雰囲気と楽しいコンテンツが「海さくら」のごみ拾いには詰まっている。海のために良いことをして、気持ちの良い時間を過ごせば、「これ以上、海にごみを出さない」という人もきっと増えることだろう。

撮影:十河英三郎

〈プロフィール〉

NPO法人 海さくら(うみ・さくら)

神奈川県の江の島で2005年から「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」をモットーに 14 年間ビーチクリーンを行い清掃活動にイノベーションを起こしてきたごみ拾い団体。江の島に「かつて生息していたタツノオトシゴが戻ってくるくらいキレイにする」という目標をかかげ、体験・体感を大事にし「楽しく」「楽しめる」活動を継続している。
海さくら 公式サイト(別ウィンドウで開く)

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