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「海ごみゼロ王に俺はなる!」笹川会長がルフィにコスプレ?世界のコスプレイヤーが集うごみ拾いイベントが話題に
- 海洋ごみの8割は、レジ袋やペットボトルやなど街で発生したごみが流出したもの
- 街中のごみを減らすことで、街だけでなく海まできれいになる
- 海洋ごみの問題は「正しく知り、アクションを起こす」ことが大切
取材:日本財団ジャーナル編集部
近年、日本だけでなく世界で一大ブームとなっているコスプレ。アニメや漫画、ゲームのキャラクターになりきった世界中のコスプレイヤーたちが、2019年6月8日(世界海洋デー)東京タワーにて行われたごみ拾いイベントに参加した。その名も「コスプレde海ごみゼロ大作戦!in東京タワー」。
このイベントは、増加し続ける海洋ごみ対策を目的としたプロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」(別ウィンドウで開く)の活動の一環として開催されたもの。日本財団とコスプレ海ごみゼロ実行委員会によって主催され、イタリアやメキシコ、台湾など世界各国・各地域の代表として海外コスプレイヤーも集結した。一般参加者と合わせて総勢430名が当日回収したごみの量は、なんと2,700リットル(1袋30リットル)。今回はそんなイベントの様子を、コスプレイヤーたちの声とともにご紹介する。
海とごみを巡る問題
2019年6月8日(土)東京タワー周辺は、普段とは少し違う雰囲気に包まれていた。そこにいるのは、思い思いのキャラクターに扮したコスプレイヤーたち。その多くが、ごみ袋やごみ拾い用のトング、「海ごみゼロ」と書かれた青いバッグを持っている。この日は、「コスプレ撮影をしながら、楽しく海洋ごみ対策に取り組もう!」という主催者の呼びかけのもと、日本や世界各国からコスプレイヤーたちが集まったごみ拾いイベントなのだ。
日本財団ジャーナルの記事「2050年の海は、魚よりもごみが多くなるってホント?いま私たちにできる2つのアクション」(別ウィンドウで開く)でも紹介したが、海洋ごみの問題はかなり深刻だ。世界中で年間約800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、2050年には、その量が魚の数を上回る可能性があると言われているが、そのごみの8割は街から出たものだ。ポイ捨てされたごみが、雨などにより川を伝って海に流れ込んでしまうことが原因とされている。
今回のイベントは、その事実を海洋ごみ問題の解決に熱心なコスプレイヤーたちと共に発信することで、海ごみゼロの輪を広げることが目的だ。
図表:海洋ごみの発生メカニズム(プラスチック)
ごみ拾いに先駆けて、ステージで開催されたのは、海ごみ問題についてのトークセッション。ゲストに全国で街の清掃イベントを行っている「リアルライフヒーロー」名古屋代表のプリヅィアさんや、モダンな和装で渋谷の街ごみを拾う“ごみ拾い侍”こと「一世一代時代組」代表・高橋さんを迎え、日本財団・海野光行(うんの・みつゆき)常務理事が登壇した。
「今日からできることを始めよう」をコンセプトに、BS11の八木菜緒(やぎ・なお)アナウンサーによる司会進行のもと、海洋ごみに関する諸問題に関してディスカッションを繰り広げ、プリヅィアさん、高橋さん共に、自身の美化活動をベースとした見解を述べた。海野常務理事は「生活ごみを減らすことで街がきれいになるだけではなく、海まできれいになる。海洋ごみ問題の解決には、まず『知ること』が大事」と、会場にいるコスプレイヤーたちに訴えかけた。
トークセッションが終わると、いよいよごみ拾いに向けた「出発式」。ステージには、世界の有名コスプレイヤーたちと共に、人気漫画『ワンピース』のモンキー・D・ルフィに扮した日本財団・笹川陽平(ささかわ・ようへい)会長が登場!
「ルフィです!海賊王を目指しているんだ。でも最近海に出ると、ごみがたくさんある。街のごみが海に流れ込んでいるんだ。だから今日は世界中から集まったコスプレイヤーの皆さんと一緒に、海のごみをゼロにしたい。皆さん、頑張りましょう!」
笹川会長は、キャラクターになりきって会場の笑いを誘いつつも、このイベントの趣旨を語り、会場の士気を大いに高めた。
世界各国のコスプレイヤーは、海ごみ問題をどう考えているか
ごみ拾いの合間には、海外で活躍するコスプレイヤーたちによるトークセッションも行われた。まず登壇したのは、イタリア代表のデイジーさんとイムリエルさん。彼らが扮しているのは、「リトルマーメイド」のキャラクターだ。そんな2人が以前海辺で撮った、海洋ごみのために瀕死状態のアリエルと王子の写真は世界に衝撃を与えた。
投稿した写真は、地元の新聞にも掲載され、SNS上でも「海の問題を解決するにはどうしたらいいのか」という会話が始まったという。このような発信方法は、コスプレイヤーだからこそできる表現だとも言える。
会場ではその後も、日本の海でごみ拾いを体験した各国の代表や、在日ニカラグア特命全権大使ロゴリゴ・コロネルさんが登壇し、ごみ拾いについてインターナショナルな議論が交わされた。
その他にも会場では、毎週日曜の16時から文化放送でオンエアされている「WADAX Radio」の公開生放送や、ドラえもん役の水田わさびさんをはじめ人気声優たちによるごみに関するトークセッション、そしてコスプレイヤーたちによるランウェイショーも開催され、盛りだくさんの1日となった。
ごみ拾い中のコスプレイヤーを直撃取材
ここからは、コスプレイヤーの皆さんの想いをコスプレと合わせてご紹介!
会場からそう遠くない、緑地でごみ拾いをしていたのは、コスプレイヤーあみちゃんさん(会社員)と、東京ディズニーシーのキャストに扮したアキバさん(医療関係者)と団長@萌えさん(医療関係者)。
あみちゃんさん:ごみ拾いは高校の時からやっていました。今回は、コスプレでごみ拾いする、というユニークなコンセプトに惹かれて参加しました!宇宙に一つしかない地球なのできれいにしたいです。
団長@萌えさん:東京ディズニーシーから来ました(笑)。海ごみの大半は街から出たごみだということは、初めて知りましたね。拾うだけじゃなく、ごみを出さない心掛けも大切なんだと感じました。今日は見かけたごみは全部拾います!
茨木県から来た『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターに扮するふうたさん(システムエンジニア)とゆりまさん(会社員)。
ゆりまさん:私の会社では、大量にコピーをして簡単に捨ててしまうこともあるので、極力減らせるように身近なところから改善していけたらと考えています。
ふうたさん:裏紙はメモ帳代わりにも使えるしね。コスプレの撮影は、自然を背景に撮られることも多いので、今日はしっかりごみを拾って、コスプレ撮影も楽しみたいと思います。
北は北海道から、南は沖縄まで全国でごみ拾いを行う清掃ボランティア集団「リアルライフヒーロー」。今回は、見過ごしがちな側溝(そくこう)のごみを集めていた彼らにも話を伺った。
ばれん太さん:今日は誰よりもごみを拾うつもりで参加しました。毎週渋谷でごみ拾いをしているので、ごみを見つける力は鍛えられていると思います!溜まりやすいのは、側溝や人の目につかない植樹帯の中。ごみにもいろいろ種類がありますが、環境に与える影響が大きいプラスチックはしっかり拾って行きたいです。
いすゞさん:活動を行う際は、ごみが与える衛生面での影響や、通行人の方へも気を配るようにしています。最近流行りのタピオカドリンクのプラスチックカップなどのポイ捨ては、衛生面的に見ても良くないので、若い人たちには注意してほしいですね。通行人の方には、ぶつからないようにするのはもちろん、不快感を与えないコスプレをするように配慮しています。
最後に話を聞いたのは、統一感抜群の3人組。さきまつさん(学生)、フランス人のアメさん(会社員兼ジャーナリスト)、すいかふぇいさん(学生)だ。
さきまつさん:海洋ごみが増加した1つの原因とも言われる中国のプラスチック廃棄物の輸入規制などは耳にしていましたが、街のごみが海に与えている影響や、プラスチックごみが与える影響については今回初めて知りました。プラスチックは、海中で400年以上も分解されずに残るなんて…。未来のためにも気を付けなければですね。
すいかふぇいさん:今日聞いた海ごみの話は、小学生の頃に授業で聞いて知っていました。いまだに改善されていないんと、少し悲しい気持ちになりました。
アメさん:私はマイバッグを持っているので、コンビニではいつもレジ袋を断るのですが、時には断る前に商品をレジ袋に入れて渡す店員さんなんかもいて…。このイベントは、コスプレをすることで私たちも楽しくごみ拾いができて、通行人の方にも注目してもらえるので、いい取り組みだなって思います。
ここからは、ごみ拾い後の会場の様子と撮影で人だかりができていたコスプレイヤーもご紹介。
りょうしさん:僕アイアンマンなんで、しゃがみにくかったりするのですが、みんなと協力しながらごみを集められました。
せりりさん: ごみの中にはタバコの吸い殻などが多かったですね 。これが海に流れ出るんだと思うと悲しくなりました。
今や、世界的な問題である海洋ごみ。国境を超えて活躍するコスプレイヤーたちが中心となり、世界中の人たちみんなで力を合わせて豊かな海を未来に引き継げることを期待したい。
撮影:十河英三郎
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。