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世界では5分に1人の子どもが、さまざまな暴力(ぼうりょく)によって命を落としてる?

イラスト:(左)紛争地から逃れる家族。(右)大人から怒鳴られる子ども
紛争(ふんそう)や虐待(ぎゃくたい)などで多くの子どもがぎせいになっている

小学生のためのSDGs入門記事。第6回は、目標(もくひょう)16「平和と公正をすべての人に」について考えてみましょう。

体や心を傷(きず)つけられる心配をせず、安心して暮(く)らせることは、全ての人が生まれながらに持っていて、守られるべき権利(けんり)です。

しかし、世界中のあちこちで紛争(ふんそう※1)やテロ(※2)などの争(あらそ)いごとが起こっており、そのことで命を失(うしな)ったり、傷(きず)つけられたりして、悲しい思いをしている人がたくさんいます。

  • 1. 宗教(しゅうきょう)や文化のちがい,政治(せいじ)や経済(けいざい)問題などで起こる争(あらそ)い事
  • 2.自分たちの考えを認(みと)めさせるために、物をこわしたり、人々を傷( きず )つけたり殺(ころ)したりして人々をこわがらせること

特(とく)に、子どもは自分で身を守れないため弱い立場に置(お)かれやすく、世界中で5分間に1人の子どもが、紛争(ふんそう)で傷(きず)を負ったり、虐待(ぎゃくたい)にあったりするといったさまざまな暴力(ぼうりょく)によって命を落としているのです。

だれもが平和に暮(く)らせるために、私(わたし)たちに何ができるのでしょうか?

【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)

世界の4分の1の人が紛争(ふんそう)のえいきょうを受けている

争(あらそ)いごとの中でも、たくさんの人が巻(ま)きこまれてしまうのが紛争(ふんそう)です。

紛争(ふんそう)の原因(げんいん)は、国をもっと大きくしたい、エネルギー資源(しげん)がほしい、宗教(しゅうきょう)についての考え方のちがい、人種(じんしゅ)や民族(みんぞく)に対する差別(さべつ)、などいろいろあります。

例(たと)えば、2022年にロシアがウクライナに対して戦争(せんそう)を始め、今もまだ戦(たたか)いが続(つづ)いています。2023年にはパレスチナとイスラエルの間でも戦争(せんそう)が始まりましたが、この地域(ちいき)では70年にわたって何度も争(あらそ)いが起きています。

今は平和に思える日本も、過去(かこ)に第一次・第二次世界大戦(たいせん※)という大きな戦争(せんそう)に参加(さんか)した歴史(れきし)があり、決して他人事ではありません。

  • 第一次世界大戦(たいせん)は、1914年7月〜1918年11月に起きた、ヨーロッパを中心に30か国以上(いじょう)が参加(さんか)した世界戦争(せんそう)。第二次世界大戦(たいせん)は1939年9月1日〜1945年8月15日に起きた、ドイツ・イタリア,日本の三国と,アメリカ合衆国(がっしゅうこく)、ソ連(れん)、イギリスなどの連合(れんごう)国が戦(たたか)った世界戦争(せんそう)

暴力(ぼうりょく)は、子どもの未来(みらい)をうばう

紛争(ふんそう)のえいきょうを受ける場所で暮(く)らしている人は、世界の全人口の4分の1にあたる20億(おく)人もいます。

その内の5人に1人、4億(おく)2,600万人は子どもたち。紛争(ふんそう)が子どもたちにどんなえいきょうをおよぼすのか、2005年から2022年の間に起きた30以上の紛争(ふんそう)を調べた結果(けっか)、こんなデータが出てきました。

  • 12万人以上の子どもが、命を落とすか、重傷(じゅうしょう)を負った
  • 10万5,000人の子どもが、子ども兵(へい)として戦(たたか)わされた
  • 3万2,500以上の子どもが、ゆうかいされた
  • 1万6,000人以上の子どもが、性暴力(せいぼうりょく)(※)を受けた
  • 相手に許可(きょか)をもらわないまま、無理(むり)やり体をさわったり、相手に体をさわるよう求(もと)めたり、ちかんやとうさつ、着替(きが)えやトイレ・お風呂をのぞく、といった行いをすること
激化(げきか)する紛争(ふんそう)からのがれ、一時避難施設(いちじひなんしせつ)に身を寄(よ)せる家族。スーダン、2023年5月12日撮影(さつえい) © UNICEF_UN0844227_Mohamdeen

これらは確認(かくにん)できた範囲(はんい)のことなので、本当はもっとたくさんの被害(ひがい)を受けた子どもがいると考えられます。

このほか、紛争(ふんそう)によって食べるものがなくなる、安全な水が飲めなくなる、住む家がなくなる、家族や友人を失(うしな)う、お医者さんにみてもらえなくなる、といった問題も起こり、毎年10万人の赤ちゃんが命を落としています。

また、子どもにとっては、学校に行けなくなって勉強ができなくなることも、未来(みらい)の可能性(かのうせい)をうばう、という点で大きな問題です。

ダマスカス郊外(こうがい)にあるユニセフが支援(しえん)するセンターで、爆発物(ばくはくぶつ)の危険(きけん)について学んだ子どもたち。シリア、2023年1月撮影(さつえい) © UNICEF_UN0826115_Shahan

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生まれても「存在(そんざい)しない」ことになってる子どもたち

平和で公正な社会をつくる、という点では、出生登録(しゅっしょうとうろく)されていない子どもが増(ふ)えている、というのも問題です。

日本では子どもが生まれると、役所に届(とど)けを出し、「戸籍(こせき)(※)」に登録(とうろく)します。それにより、予防接種(よぼうせっしゅ)を受ける、学校に入学するなど、健康(けんこう)で幸せな成長(せいちょう)を助けるためのサービスが受けられるようになります。

  • 日本の国民であることを登録(とうろく)し、証明(しょうめい)するもの

しかし世界では、5才までの子どもの4人に1人が出生登録(しゅっしょうとうろく)されていません。その理由には、出生届(とど)けのことを親が知らない、届(とど)け出る場所が遠(とお)くて行けない、届(とど)けるのにかかるお金がはらえない、などがあります。

出生登録をされていない子どもがぶつかる問題を示すイラスト:
世界の4人に1人の子どもが法的に存在せず、予防接種や教育を受けられず、犯罪に巻きこまれても裁判をすることができない
出生登録(しゅっしょうとうろく)をされていない子どもは、十分な医療(いりょう)や教育を受けられないほか、裁判(さいばん)をすることもできない

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子どもへの虐待(ぎゃくたい)が問題になっている日本

日本では近年、子どもを取りまく暴力(ぼうりょく)の問題が増(ふ)えており、その1つが虐待(ぎゃくたい※)です。2022年には、児童相談所(じどうそうだんじょ)が虐待(ぎゃくたい)相談に対応(たいおう)した数が、これまでで最(もっと)も多くになりました。

  • 心と体に何らかの苦しみを与える行動

相談の中で最(もっと)も多いのが、大声を出しておどす、無視(むし)する、いやなことをくり返(かえ)し言うなど、心を傷つける行動です。次に、なぐる・ける、寒いのに家の外に閉(し)め出すなど体を傷(きず)つける行動、食事をあたえない、服を着がえさせないなど、子どもの世話をしないで放っておく行動、と続(つづ)きます。

虐待(ぎゃくたい)は貧困(ひんこん)や孤立(こりつ)など、いろいろな理由が重なって起こるもの。親だけのせいにするのではなく、どうすれば虐待(ぎゃくたい)が起こりにくい社会になるのかをみんなで考えることが大切です。

児童相談所における虐待相談対応件数とその推移を示す折れ線グラフ:
2011年 59,919人、2012年66,701人、2013年 73,802人、2014年 88,931人、2015年 103,286人、2016年 122,575人、2017年133,778人、2018年 159,838人、2019年 193,780人、2020年 205,044人、2021年 207,660人、2022年 219,170人
児童(じどう)相談所における虐待(ぎゃくたい)相談対応件数とその推移(すいい)。出典(しゅってん):こども家庭庁(かていちょう)「令和4年度 児童(じどう)相談所における児童虐待(じどうぎゃくたい)相談対応件数〈速報値(そくほうち)〉」(外部リンク/PDF)

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日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み

日本財団(にっぽんざいだん)ウクライナ避難民支援(ひなんみんしえん)(別タブで開く)

ロシアとウクライナの戦争(せんそう)で、日本に避難(ひなん)してきたウクライナの人たちが安心して暮(く)らしていくためのサポートをしています。

日本に来るための飛行機(ひこうき)代や、住む場所を見つけて家具や家電を揃(そろ)えるためのお金に加(くわ)えて、生活にかかるお金の一部を支給(しきゅう)。また、日本語を勉強するウクライナ避難民(ひなんみん)には、日本語学校に通うお金も支給(しきゅう)しています。

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連載(れんさい)【避難民(ひなんみん)と多文化共生(たぶんかきょうせい)のかべ】(別タブで開く)

こども基本法(きほんほう)プロジェクト(別タブで開く)

「こども基本法(きほんほう)」とは、子どもの権利(けんり)を守るための法律(ほうりつ)です。

日本財団(にっぽんざいだん)では、この法律(ほうりつ)が日本で作られることを目指して、2019年から活動をスタート。国に対して働(はたら)きかけを続(つづ)け、2023年4月から実行されることになりました。

全ての子どもの権利(けんり)が守られ、幸せに成長(せいちょう)できる社会づくりを目指し引き続(つづ)き活動しています。

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「子どもの権利(けんり)」どう守る?スコットランド「子ども若者コミッショナー」ブルース・アダムソンさんに問う(別タブで開く)

世の中から暴力(ぼうりょく)をなくし、みんなが平和で公正な社会で暮(く)らすために、私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう?

その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。

本や図書館、インターネットで調べてみよう!

  • 世界のどこで紛争(ふんそう)が起きているのか、その原因(げんいん)は何なのか、調べてみよう
  • いろいろな国の出生登録(しゅっしょうとうろく)の仕組みについて調べて、どんなちがいがあるのか、登録(とうろく)すると子どもはどんなサービスが受けられるのか、調べてみよう
  • 子どもに対する虐待(ぎゃくたい)や、性暴力(せいぼうりょく)の問題をなくすために、どのような取り組みが行われているのか、調べてみよう

紛争(ふんそう)や子どもの権利について学べるおすすめの本

出版(しゅっぱん):評論社(ひょうろんしゃ) 作:ルイーズ・スピルズベリー 絵:ハナネ・カイ 訳(やく):大山 泉(おおやま・いずみ) 解説(かいせつ):佐藤 学(さとう・まなぶ)

『今、世界はあぶないのか? 争(あらそ)いと戦争(せんそう)』(外部リンク)

世界中で起きている問題をみんなで考えていくシリーズです。

この本では、戦争(せんそう)って何だろう? どうして起こるの? どうしたらやめられるの? 子どもたちに出来ることは? を考えます。

出版(しゅっぱん):弘文堂(こうぶんどう) 著(ちょ):山崎聡一郎(やまざき・そういちろう) イラスト:伊藤ハムスター

『こども六法(ろっぽう)』(外部リンク)

いじめや虐待(ぎゃくたい)は犯罪(はんざい)です。大人であれば警察(けいさつ)につかまってばつを受けますが、それは法律(ほうりつ)という社会のルールによって決められていることです。

けれど、子どもは法律(ほうりつ)を知りません。もし法律(ほうりつ)という強い味方がいることを知っていたら、多くの子どもが救(すく)われるかもしれません。

この本は、子どもでも読めて、法律(ほうりつ)とはどんなものかを知ることができます。

まわりの人に話を聞いてみよう!

  • お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに日本で起きた戦争(せんそう)のことや世界の紛争(ふんそう)をなくすために何ができると思うか、意見を聞いてみよう
  • 出生届(しゅっしょうとどけ)や戸籍(こせき)がなかったとしたらどう思うか、についても意見を聞いてみよう
  • もし、考え方がちがうグループがいた場合、暴力(ぼうりょく)を使わず、仲良(なかよ)くなるにはどんな方法(ほうほう)があると思うか、意見を聞いてみよう
  • いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう

自分にできることからやってみよう!

  • 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
  • 紛争(ふんそう)についてのニュースや新聞をチェックする、紛争地域(ふんそうちいき)に暮(く)らす人たちを支援(しえん)している団体に寄付(きふ)をする、などできることはたくさんあるはず

自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!

セーブ・ザ・チルドレン(外部リンク)

100年以上(いじょう)の歴史(れきし)を持つ、子どもの支援(しえん)を専門(せんもん)とした国際組織(こくさいそしき)で、日本をふくむ世界の約(やく)120カ国で活動しています。暴力(ぼうりょく)や虐待(ぎゃくたい)から子どもたちを守るほか、被害(ひがい)を受けた子どもたちの支援(しえん)をしています。

ウェブサイトでは活動報告(かつどうほうこく)や、「子ども虐待(ぎゃくたい)とは?」「紛争(ふんそう)とは?」など、子どもたちを取りまく課題(かだい)やその解決策(かいけつさく)についても情報(じょうほう)を発信(はっしん)しています。

NHK|戦争(せんそう)について考えてみよう(外部リンク)

1945年に太平洋戦争(たいへいようせんそう※)が終わるまで、日本も戦争(せんそう)をしている国の1つでした。

このウェブサイトでは、戦争(せんそう)について改(あらた)めて考えるために、太平洋戦争(たいへいようせんそう)が始まる前の世界や日本の動き、戦争(せんそう)中にどんなことが起きたのか、戦争(せんそう)中の子どもたちはどのように暮(く)らしていたのかなど、当事の様子をたくさんの動画で伝(つた)えています。

  • 1941年から1945年まで行われた戦争で、第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)の局面(きょくめん)の一つ

こども家庭庁|こどものみなさんへ(外部リンク)

国や社会のかたちを「こどもまんなか」に変(か)えるリーダーとして、2023年4月に「こども家庭庁(かていちょう)」が誕生(たんじょう)しました。

子ども向けの情報(じょうほう)を発信(はっしん)している「こどものみなさんへ」というページでは、「こども基本法(きほんほう)」や「児童福祉法(じどうふくしほう)」といった子どもの権利(けんり)を守る法律(ほうりつ)について、分かりやすく学ぶことができる動画やパンフレットが用意されています。

[関連記事]
虐待(ぎゃくたい)、いじめ、貧困(ひんこん)——子どもを取り巻(ま)く社会課題(しゃかいかだい)。「こども家庭庁(かていちょう)」発足で解決する?(別タブで開く)

[参考文献]

日本ユニセフ協会「#ENDviolence」(外部リンク)

日本ユニセフ協会「1日平均20人の子ども、武力紛争で死傷 過去18年で計12万人 紛争下の権利侵害は計31万件超」(外部リンク)

国際連合広報センター「「平和構築と持続的な平和:複雑な課題に対するレジリエンスを高めるための人々への投資」に関する安全保障理事会公開討論における アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長発言(ニューヨーク、2023年1月26日)」(外部リンク)

OCHA「Children Affected by Armed Conflict, 1990-2019」(外部リンク)

セーブ・ザ・チルドレン「報告書『子どもに対する戦争を止める』を発表-紛争により毎年10万人の赤ちゃんが犠牲に」(外部リンク)

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