日本財団ジャーナル

多様な人との出会いが子どもたちの未来を拓く「子ども第三の居場所」みぬま拠点

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プレオープンした「子ども第三の居場所」みぬま拠点で勉強に取り組む子どもたち
この記事のPOINT!
  • 子どもたちの抱える困難は、地域ぐるみで成長を見守る中で対応していく
  • 年齢も経歴も異なる人々と交流することで、子どもたちに憧れの気持ちが芽生える
  • 子ども、保護者、そして地域の人々。みんなでつくる「みんなの居場所」

取材:中野綾香

日本財団では、全ての子どもたちが安心して過ごせる環境で将来の自立に向けて生き抜く力を育む「子ども第三の居場所」(別ウィンドウで開く)を日本全国に拡げており、2025年までに500拠点を目指している。

今回は、2021年3月に全国で38番目に埼玉県さいたま市見沼区にオープンした「子ども第三の居場所」みぬま拠点の運営団体「NPO法人さいたまユースサポートネット」(別ウィンドウで開く)の青砥恭(あおと・やすし)代表に、この拠点で大切にしたいことをお聞きした。

子どもたちを受け入れ、支えてくれる地域をつくる

新たに「子ども第三の居場所」ができるさいたま市見沼区は、緑豊かで農業が盛んな地域であり、古くからその地域に居住する人々と、マンションの購入などを通じて新たに居住することとなった人々の、新たなつながりが存在している。

運営団体の「さいたまユースサポートネット」はこれまでもさいたま市で小中高生向けの学習支援や、若者向けの交流拠点「たまり場」の運営、若者の就労支援などの活動を実施している。ここでは、昔から地域に住み続ける地域のおじさん、おばさんが、活動に参加する子どもたちの送迎をしてくれるなど、地域ぐるみで子どもたちの成長を見守っている。

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「子ども第三の居場所」みぬま拠点でインタビューに応える青砥代表

青砥「ぼくたちの活動に関わっている多くの子どもの中には、本当に多様な背景の子どもがいます。安定した家庭を持ち、帰宅すれば温かいご飯が出てくる家庭の子どももいれば、経済的に厳しい家庭の子ども、中には家庭内の複雑な問題でトラウマを抱えている子どももいます。子どもたちが抱えている困難は違いますが、その全てを私たちの活動の中だけで解決することはできません。ですから、子どもたちが今、毎日生活をして、これからも過ごしていく地域こそが、優しく子どもたちを受け入れ、子どもたちを支えることができる場になっていくことが大切だと感じています」

「自分とは違う」多様な人たちと出会える居場所だからこそ面白い

子どもたちの抱える困難には制度的な支援が確立しつつあるものもある。ただ、教育や福祉制度によって子どもたちの最低限の生活を形として支えることができたとしても、子どもたちが困ったときに相談でき、安心感を得ることができる、心のよりどころとなる居場所を見つけることはなかなか難しい。

だからこそ、子どもたちにとって心のよりどころとなる学校でも家庭でもない「第三の居場所」が必要となる。このような居場所で、仲間として認められ、自分とは体験が違う人や時には憧れとなるような人たちと出会うことで目標ができ、子どもたちは自分たちが「そこにいてもいい」という自己肯定感を抱けるようになる。

青砥「子どもたちにとっての心地良さとは、『自分とは違う』けれど、自分たちの置かれている立場に寄り添ってくれる多様な人たちがいるからこそ感じられるようなものだと思います。子どもたちは、居場所での活動を通じて年齢も経歴もまったく異なる地域のおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんから、人や社会の多様性を見つけたり、その中で自分たちにはないものを感じ取ったり、楽しさや憧れというかたちで刺激を受けていきます。そして、そのような人々と一緒にさまざまな体験をし、経験したことのない話をする中で目を輝かせ、『自分もこうなりたい!』というロールモデルをも見つけていくのです」

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多様な大人たちとの交流を通して成長する子どもたち

「さいたまユースサポートネット」は、子どもたち一人ひとりとの「肌感覚」を伴ったつながりを大切にしながら支援をしている。

時には、ここでの活動を通じて知り合った子どもたちから、生きていくことの辛さを打ち明けられることもある。そこでは、子どもたちの辛さの原因に真摯に寄り添いながら、「一緒にご飯を食べる」、そして「一緒にたわいもない話をする」という何気ない日常を共に歩んでいくことを大切にしている。時に悪さをする子どももいるが、「この子は難しい子だから」といって決して見捨てたりはしない。

このように子どもたちとの内面でのつながりの中で支援をすることで、やんちゃだった子どもから「先生、病気、しないでくださいね」と、気恥ずかしさを隠した気遣いのメールが届いたりする。

青砥「子どもたちは、自分の身の周りにある見えやすい世界を捉えることで『これが社会だ』と思うかもしれません。ですが、社会はとても多様です。地域は多様な人たちがいるからこそ、大変ですが面白い。多様であるからこそ、新たな問題も新たな発見も生まれてくるのです。将来、そのような社会に出ていく子どもたちに、『自分とは違う』けれど心地良いなと思える経験をしてもらうことにこそ、学校の外で行われる子どもたちへの支援の意味があるのではないでしょうか」

サッカーにマルシェ、地域の人々とつくる「子ども第三の居場所」

多様性のある環境で子どもたちの成長を支えていくためには、地域からの協力が欠かせない。このため、「子ども第三の居場所」みぬま拠点では、「地域によって支えられ、地域から見える第三の居場所」をコンセプトとして、拠点での子ども支援についての検討を進めている。

ここでは、行政や日本財団との連携だけではなく、サッカーを通じて国内外の子どもの心を育む活動を続ける浦和レッズ「ハートフルクラブ」などとの連携も視野に入れながら、地域に開かれた子ども支援を考えている。

青砥「『子ども第三の居場所』みぬま拠点は、地域の誰もが気軽に立ち寄れる場所にしていきたいと考えています。日中は周辺地域に居住する小さなお子さん連れのお母さんが遊びに来られるようになればと思っています。そこには、ご高齢のおじいさん、おばあさんたちも、気軽に立ち寄っておしゃべりをしたりしながら、子どもも保護者も高齢者もみんなで『どんな場としていきたいか』ということを考えながら、活動ができればいいですね。例えば、子どもも大人も関係なく、それぞれが意見を出し合う中で野菜作りをしたり、その野菜を売るマルシェを開いたりなど、みんなが楽しめるイベントをやっていければと思います」

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日本財団への遺贈寄付によってつくられた明るくカラフルな建物。ここで、地域みんなの居場所をつくっていく

「みんなでつくっていく」ことを大切にするからこそ、「子ども第三の居場所」みぬま拠点では、スタッフだけで活動の方針を固めて、子どもたちを出迎えることはしない。拠点の活動を地域にも開いていくことで、急がずゆっくりと、「みんなの居場所」をつくり上げていく。

このように立場や年齢が異なる多様な人たちが集う居場所ができることによって、子どもたちが抱える困難を地域ぐるみで受け入れ、みんなで子どもたちを支えることができる文化がこの地域に根付いていくのである。