日本財団ジャーナル

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NPOがもっとパワフルに活動できる社会に。NPOの課題をコミュニケーション戦略で支援

写真:緑豊かな川辺を背景に写るa−conの加形さん
NPO法人のコミュニケーション活動を300人ものプロボノメンバーと協力し支援するa−conの加形さん
この記事のPOINT!
  • 社会に対しコミュニケーション活動がうまくできずに経営課題を抱えているNPOが少なくない
  • 「誰のために何をやるか、どんな良いことが起きるか」、NPO自身が社会にきちんと伝えることが大切
  • 支援されるNPOが増えれば、非営利活動やボランティア活動への社会の理解も深まる

取材:日本財団ジャーナル編集部

少子高齢化、経済・教育格差、過疎化…。社会課題が複雑化する中で、多くの特定非営利活動法人=NPOが、社会を良くするためにさまざまなフィールドで活動している。

特定非営利活動法人NPOコミュニケーション支援機構(action unit for communicative NPO)、通称a−con(外部リンク)は、NPOのコミュニケーション活動をプロボノ(※)がサポートすることで、NPOが抱えるさまざまな経営課題を解決する支援に取り組んでいる。

  • ラテン語の「pro bono publico(公益のために)」の略。職務上の専門知識・技術を生かして行う社会奉仕活動

今回お話を伺った加形拓也(かがた・たくや)さんは、普段は事業開発のコンサルタントとして、未来のまち、ライフスタイル、テクノロジー起点の事業・サービス開発を行うサービスデザインチームを率いながら、a−conの代表も務めている。

自身もプロボノとして活動する加形さんに、なぜNPOのコニュニケーション活動に支援が必要なのか、実現したい社会像と共に話を伺った。

■ なぜコミュニケーション活動が重要なのか

「解決すべき問題は存在するが、現時点でビジネスモデルが確立されていない。そういった分野に先んじて取り組んでいるのがNPOです。そんなNPOだからこそ長く活動を続けるために自分たちの活動を多くの人に知ってもらうことが重要なのですが、社会に対するコミュニケーション活動がうまくできていない団体が少なくないのも事実です」

写真:川辺を背景にインタビューに応じるa−conの加形さん
NPOの経営課題について語るa−con代表の加形さん

その背景には、NPOが取り組む課題自体が世の中に認知されていないケースが多いこと、NPO自体もコミュニケーション活動に割ける資金や人手が少ないことを、加形さんは理由として挙げる。

「非営利組織ということで予算も限られてきますし、やはり大切なのは『活動をする』ことなので、どうしてもそちらを優先せざるを得ません」

一般企業の場合は、サービスを受ける受益者自身がお金を支払うことでビジネスが成り立つ。NPOの場合は、支援者(寄付者、行政)に資金提供してもらうことで活動することができ、受益者とお金を支払う人が異なる場合が多い。だからこそ、活動内容や目指す社会像を、しっかりと伝えていくことが大切になるのだ。

画像:NPOと一般企業の違い
[一般企業の場合]
自分→お金→企業→受益→自分
[NPOの場合]
自分→お金→企業→受益→他人
一般企業の場合はお金を支払う人と受益者が一致することでビジネスが成り立つ。NPOの場合は、支援者から資金を提供してもらうことで、社会課題に取り組むことができる

「コミュニケーションって結構難しいものですよね。自分のことを人に伝えようとすると意外とうまくいかなかったというご経験は、皆さんもよくあるのでないでしょうか。それはNPOでも同じで、つい専門用語が多くなってしまったり、伝えたい気持ちが強すぎてコンテンツが多くなってしまったりと、客観的な視点が抜けがちになるのです。そんなときに、第三者目線、客観的な目線でコミュニケーションをお手伝いできるパートナーがいれば、NPOの価値向上につながるのではないかと考え、2007年にa−conを立ち上げました」

コミュニケーション活動に必要な視点

ウェブサイトのリニューアル、チラシの作成、イベント企画や動線作成など、a−conにおける、NPOのコミュニケーション支援は多岐にわたる。しかし、どのプロジェクトでも共通していることは、「誰のために何をやるのか」そして「どんな良いことが起きるのか」という視点で取り組むことだと、加形さんは語る。

「ご相談いただいたNPOのプロジェクト開始前に、依頼者の方へヒアリングを行うのですが、そのタイミングやその後の打ち合わせにおいてもこの視点は大切にしています。また、コミュニケーション支援を行った結果について、具体的に成果を数値化して把握することにも重きを置いています」

例えば、アジア地域で子どもたちの教育支援を行うNPO団体では、季節ごとに寄付を募るダイレクトメールを発信していた。資金集めを強化したいとリニューアルの相談を受けて、まずはダイレクトメールを送るターゲットを整理し直し、メッセージの内容、デザインまでトータルで支援し、寄付額が大幅に増加した。

また、現代アートの学びのプラットフォームづくりを目指すNPO団体からは、より多くの人に関心を持ってもほしいという相談を受けた。では、そもそも現代アートを知っている人がどれだけいるのか?という問題を定義し、「初心者に関心を持ってもらうにはどうしたらいいだろう?」とうことを突き詰め、自分に合ったアーティストが分かる「アーティスト診断」というパンフレットを企画。講座への参加者も増えたという。

画像:
見開きチラシ
チラシ左側:30秒でできるMAD(Making Art Different)アーティスト診断
あなたにぴったりの講座を探せ!YES/NOに答えて、ゲーム感覚でできる「MADアーティスト診断」では、11の質問からあなたにオススメのMAD講座を紹介します。さらに講座の特徴から分類されたアーティストに似たあなたの性格を診断します。
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→YES→講座A
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→NO→「旅行/おでかけが好き」→NO→「アートの仕事につきたい」→YES→講座B
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→NO→「旅行/おでかけが好き」→NO→「アートの仕事につきたい」→NO→「企画に興味がある」→YES→「子どもが好き」→NO→講座C
スタート「色んな人の話を聞きたい」→YES→「美術館よりギャラリー」→NO→「グローバルよりかはローカル」→NO→講座D
スタート「色んな人の話を聞きたい」→YES→「美術館よりギャラリー」→NO→「グローバルよりかはローカル」→YES→講座E
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→NO→「旅行/おでかけが好き」→NO→「アートの仕事につきたい」→NO→「企画に興味がある」→YES→「子どもが好き」→YES→講座F
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→NO→「旅行/おでかけが好き」→NO→「アートの仕事につきたい」→NO→「企画に興味がある」→NO→「語り合う仲間が欲しい」→YES→講座G
スタート「色んな人の話を聞きたい」→YES→「美術館よりギャラリー」→YES→「アート作品を買いたい」」→YES→講座H
スタート「色んな人の話を聞きたい」→YES→「美術館よりギャラリー」→YES→「アート作品を買いたい」」→NO→「旅行/おでかけが好き」→YES→「体を動かすことが好き」→NO→講座I
スタート「色んな人の話を聞きたい」→YES→「美術館よりギャラリー」→YES→「アート作品を買いたい」」→NO→「旅行/おでかけが好き」→YES→「体を動かすことが好き」→YES→講座J
スタート「色んな人の話を聞きたい」→NO→「歴史が好き」→NO→「旅行/おでかけが好き」→NO→「アートの仕事につきたい」→NO→「企画に興味がある」→NO→「語り合う仲間が欲しい」→NO→講座K

チラシ右側:おすすめのMAD講座はこちら!※現代アートの学校「MAD」のA〜Kまでの講座は、コースで学べるほかチケット(対象講座)での受講が可能です。
講座A:探究心が強いあなたには…現代アートを知る6つの扉
あなたはまるでレオナルド・ダヴィンチ
・研究者タイプ
・世の中をナナメに見がち
・変わっていると言われると嬉しい
※Dもおすすめです
講座B:面倒見が良いあなたには…アートを支える制度と仕事
あなたはまるでヨハネス・フェルメール
・縁の下の力持ちタイプ
・面倒見がいい
・読書家
※Hもおすすめです
講座C:発想力溢れるあなたには…新しい価値をつくるキュレーションの実践
あなたはまるでマルセル・デュシャン
・アイデアマンタイプ
・実際より若く見える
・思い出し笑いが多い
※Fもおすすめです
講座D:今の自分に満足できないあなたには…「生きる」を考えるアートの有用性
あなたはまるでパブロ・ピカソ
・パイオニアタイプ
・常にポジティブ
・知らない世界に飛び込みたい
※Hもおすすめです
講座E:ふところが深いあなたには…アートとアクセスビリティの新しい視点
あなたはまるでエミリー・ウングワレー
・人の話をよく聞くタイプ
・ハプニングに動じない
・騙されやすい
※Iもおすすめです
講座F:気配り上手なあなたには…子どもとフクシのアートのラボ
あなたはまるでデイヴィット・ホックニー
・世話好きタイプ
・おとなしめだけど言いたいことは伝える
・まわりを良く観察している
※Cもおすすめです
講座G:じっくり考えることが得意なあなたには…ディスコースのラボ
あなたはまるで萬 鉄五郎
・熱血タイプ
・意外とおしゃべり
・目標が高い方が萌える
※Jもおすすめです
講座H:チャレンジ精神旺盛なあなたには…ディスコースのラボ
あなたはまるでオノ・ヨーコ
・敏腕タイプ
・興味を持ったらまずチャレンジ
・理想と現実のギャップに悩むことも
※Bもおすすめです
講座I:流行好きなあなたには…Visit & See「UNKNOWN TOKYO」
あなたはまるでサルバドール・ダリ
・ツンデレタイプ
・サービス精神旺盛
・第一印象とギャップがあることも
※Iは、新宿二丁目や多摩ニュータウンなど、独自の特徴を持つ地域や独自のスポットを巡るディープ東京を発見する1日ツアーです ※Eもおすすめです
講座J:好奇心旺盛なあなたには…Visit & See 長野ツアー
あなたはまるでリジア・クラーク
・オーガニックタイプ
・どこでも寝られる
・ドラマチックな恋に憧れる
※Jは、ユニークで実践的な展覧会が行われている「フェンバーガーハウス」(長野県)を中心に、自然豊かな森の中で五感を満喫する日帰り/1泊2日ツアーです ※Gもおすすめです
講座K:ちょっぴりシャイなあなたには…MAD MINI
あなたはまるでフリーダ・カーロ
・没頭タイプ
・ミステリアスと良く言われる
・芯が強い
※Kは、「ホリスティックな身体性」をテーマに、いま私たちが生きる社会や現代都市を形成する思想や文脈について、ゲスト講師を招き、実験的なワークショップやレクチャーなどを通してみなさんと一緒に考えます ※Gもおすすめです

あなたはどのタイプでしたか?MADのチラシとあわせてお楽しみください♪「いろいろコースがあってどれを選べばよいか迷う」「何がおすすめなのか教えてほしい」方にオススメです。
http://mad.a-i-t.net

action unit for communicative NPO 協力:特定非営利活動法人NPOコミュニケーション支援機構(a−con)
a−conが企画協力した「アーティスト診断」

プロジェクトの期限は多少を前後することもあるが概ね3カ月と決めている。

「複数のプロボノのメンバーがチームを組んで取り組むため、活動に参加しやすいようにスケジュールを明確にする必要があるんです」

プロボノのメンバーとは、普段はFacebook上のコミュニティでつながっている。そして、NPOから依頼が来たら、一度加形さんが詳しく話を聞き、領域や課題を把握し、コミュニティページに投げかける。そこに関心のあるメンバーが集まる仕組みだ。

2021年時点で登録メンバーは300人を超え、マーケティングの専門家やエンジニア、メーカー勤務、学生まで幅広い。

「いろんな職業の人がいるだけにプロジェクトの進め方や手段、価値観の違いなどは生じるものの、普段出会う機会の少ない人とチームを組むことで、プロジェクトを通していろんな知見を得ながら共に経験を積むことができる。それが縁となって新たなビジネスにつながることもあるんです」

それは、プロボノがa−conの活動に参加する大きな魅力と言えるだろう。

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毎月1回開催されるa−conメンバーによるプロジェクト成果共有会の様子

プロボノの多様な視点で戦略を練る

実際にa−conに相談を依頼した、発展途上国の社会起業家に投資するという手段を用いて支援している認定NPO法人ARUN Seedの池島利裕(いけしま・としひろ)さんと、そのプロジェクトリーダーを務めた横山領(よこやま・りょう)さんに話を伺うことができた。

ARUN Seedでは、ソーシャル・インベストメント(※)の理解促進、人材育成のためのスクールを運営している。それを新たに基礎知識が学べる「入門編」と、専門家を養成する「探究編」という2つのコースに分けて展開することとなった。a−conには2021年度中に開講予定の探究編の広報戦略・ウェブサイト作成を依頼したという。

  • ビジネスを通じ、社会課題の解決を目指す企業に対する投資で、経済的リターンだけでなく、社会的リターンの両方を追求する

「新しいスクールの試みということで、どんな層にどのようにアプローチすれば良いのか、という点に一番頭を悩ませていました」

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オンラインで取材に応じてくれたARUN Seedの池島さん

そう話す池島さんは、ウェブサイトのデザイン云々ではなく、a−conの持つネットワークを活かしたさまざまな分野の潜在受講者へのヒアリング、講座内容に関するニーズの抽出などに期待したという。

このプロジェクトにメンバーとして加わったのは、外資系、IT系企業、NPOに務める社会人、学生などを含む5人。a−conの活動に初めて参加したというメンバーも3人おり、横山さんもそのうちの1人でありながらリーダーを買って出た。

「私たちがプロジェクトとして重きをおいたのは、どういった人々に届けるかと言うことです。競合調査に加え、インパクト投資・ESG投資に携わる方や金融機関の方にヒアリングを行った結果、間口を広げていろいろな人が関われるようにした方が、ニーズが高いということが分かりました。さまざまなバックグラウンドを持った人たちが交流できる機会を増やすことでコミュニティとしての価値を高め、それを打ち出した講座づくりをしていくことになりました」と横山さん。

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オンラインで取材に応じてくれたプロジェクトリーダーの横山さん。普段はIT系企業でシステム構築の仕事に携わっている

池島さんは3カ月のプロジェクトを振り返り、「ページの構成要素や講座内容など素晴らしいものを提示していただきました。また、私としては、そこに至る過程も非常に勉強になりました。戦略を練るフォーマットができているというと少し堅苦しく聞こえてしまうかもしれませんが、誰かの意見を否定せずに傾聴し褒める姿勢など、学ぶべきところがたくさんありました」と話す。

横山さんも、「a−conでは、クライント案件というよりは、クライアントも含めて多様なメンバーと一緒に問題解決に取り組むといった感覚で、プロジェクトを進めていく過程がとても楽しかったです」と振り返る。

写真:サイトの構成案を共有しながら話し合いを行う池島さんとプロジェクトメンバー
池島さんとプロジェクトメンバーによる打ち合わせの様子

NPOがパワフルに活動できる社会に

新型コロナウイルスの影響もあり、対面ではまだ一度も会ったことがないという加形さん、池島さん、横山さんの3人。しかし、長年の友人のような親しい雰囲気が取材を通して伝わってきた。

「プロボノということで、もちろんモチベーションの維持などは大変ですが、金銭が絡まないつながりなので、その分お互いへの信頼度も高まります」

自身も含めて、a−conの活動では決して会社にはない経験やつながりが得られるという加形さん。

「素晴らしい活動をされているNPOはたくさんあります。私たちはそのコミュニケーション部分をお手伝いすることで、そういった方々の活動を社会に広め、多くのNPOが支援者や理解者を得てパワフルに活動に取り組める社会を目指します」

社会を良い方向に変えようとするNPOの活動が理解され、広がれば、社会はもっと生きやすく豊かになるはず。加形さんたちa−conの活躍に期待したい。

撮影:十河英三郎

[ご案内]
a−conでは月に1回程度、プロボノに興味があるメンバー向けにオンラインでの活動説明会を実施。詳しくはa−conのコーポレートサイト(外部リンク)まで。

〈プロフィール〉

加形拓也(かがた・たくや)

特定非営利活動法人NPOコミュニケーション支援機構(a-con)代表理事。広告会社のコンサルティング部門で未来のまち・ライフスタイル・テクノロジー起点の事業・サービス開発を行うサービスデザインチームのリーダー。自治体顧問や大学院でのまちづくり研究なども行っている。NPOの広報・マーケティングを支援するプロボノ集団a−conの代表としてこれまで数十のNPOのコミュニケーション支援を行っている。趣味はウクレレの弾き語り。
特定非営利活動法人NPOコミュニケーション支援機構 コーポレートサイト(外部リンク)