日本財団ジャーナル

社会のために何ができる?が見つかるメディア

小型重機研修会で得た学び、人とのつながり。市区町村を超えた連携で防災大国に

写真
長野県小布施町で実施された、小型重機研修会に参加した各自治体職員の方々
この記事のPOINT!
  • 毎年のように起こる自然災害。小型重機の活用がまちの復興の大きな鍵を握る
  • 日本財団とB&G財団では全国規模での防災拠点の設置、小型重機の配備と人材育成に取り組んでいる
  • 災害発生時に被害を抑えるには、小型重機の活用と市区町村を超えた防災体制づくりが必要

取材:日本財団ジャーナル編集部

毎年のように日本各地で起こる大規模な水害や地震。復旧・復興作業の現場では、災害系NPO・ボランティア団体による小型重機(機体重量3トン未満のショベルカーやクレーンなど)を活用した支援活動が数多く見られるようになった。

災害発生時における小型重機の有用性が認識されている背景を受けて、日本財団とブルーシー・アンド・グリーンランド財団(以降、B&G財団)では、2021年から「防災拠点の設置および災害時相互支援体制構築事業」(外部リンク)に着手。全国規模での防災拠点の設置と同時に、市区町村の区域を超えた相互支援体制づくりや、ショベルカー等の小型重機の配備、防災における人材育成に力を入れている。

日本財団ジャーナルでは、2021年11月24日から26日の3日間にわたって長野県小布施町で実施された、B&G財団が主催する自治体職員を対象とした小型重機研修会に密着。参加した各地域の防災担当者への取材を通して、災害発生時に被害を最小限に抑えるためにはどのような取り組みが必要かを探った。

重機があればできることが広がる。防災担当者の思い

小型重機研修会には全国の自治体から19名が参加(※)。今回取材協力をいただいた方々は、過去に被災体験のある自治体職員だ。

  • 小型重機研修会は11月中全4回に分けて実施。今回取材した回も含め、20道県25市町から合計59名の自治体職員が参加した

遠藤匡範(えんどう・ただのり)さん

宮城県亘理町総務課安全推進班に所属。2011年3月の東日本大震災経験者。

小澤大輔(おざわ・だいすけ)さん

千葉県鋸南町地域振興課に所属。2019年9月の令和元年房総半島台風(台風15号)経験者。

高名晴久(たかな・はるひさ)さん

千葉県鋸南町建設水道課に所属。2019年9月の令和元年房総半島台風(台風15号)経験者。

三浦大育(みうら・だいすけ)さん

長野県上松町建設水道課に所属。2021年8月の令和3年8月豪雨経験者。

竹下靖彦(たけした・やすひこ)さん

広島県北広島町危機管理課に所属。2021年8月の令和3年8月豪雨経験者。

田上敬明(たがみ・たかあき)さん

広島県北広島町消防本部に所属。2021年8月の令和3年8月豪雨経験者。

写真
研修の合間を縫って取材に応じてくれた各自治体職員の方々

「鋸南町では、重機を扱える人があまりいません。自分も含め、免許を持っていたとしてもなかなか練習する機会に恵まれず、実際に動かせるかというと自信はなく…」と研修会に参加した理由を話すのは、千葉県鋸南町の職員・小澤さん。

同じく鋸南町の職員である高名さんも「私は仕事でも使うので重機の運転はできますが、他の人に指導するときのノウハウを学びたいと思い参加しました」と話す。

写真
重機の免許はあっても、実践や教育の機会が足りないと語る高名さん(左)と小澤さん

さまざまな立場の自治体職員が集まった小型重機研修会だが、その多くは災害が起こったときに実際に小型重機を動かせる人が少ないことを問題視している。その上で、「災害現場での活用法を知る」「学んだことを人に伝えたい」というのが参加動機の大半を占めた。

三浦さん「私の職場には便利な3トン以下の小型重機を扱える人がいないんです。B&G財団さんの研修は実践的な内容が中心なので、参加するのを楽しみにしていました」

田上さん「自分が学んで、消防団のメンバーに重機の扱いや可能性について伝えたいですね」

遠藤さん「亘理町では、東日本大震災の時に300人以上の方が亡くなっています。小型重機があればもっと復興を早く進められたのではないかと」

写真
令和元年房総半島台風で大きな被害を受けた鋸南町を含む千葉県南西部には、今も屋根にブルーシートかかった家が目立つ
写真
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県亘理町

竹下さん「災害発生時に自分が重機に乗ることは今のところないのですが、重機の扱い方を学ぶことで的確な指示を現場に出せるようになりたいと思っています」

取材に応じてくれた6人の地元は、いずれも災害により大きな被害を受けている。被災した際に課題に感じたことは何だろうか。

東日本大震災を経験した遠藤さんは「被害の規模感に合わせた人的、物的リソースの調達や確保ができる人材がいないと、思うように復興は進みませんね」と振り返る。

写真
東日本大震災での被災体験を振り返る遠藤さん

災害の種類や被害状況に応じて俯瞰的な視点で対応する必要があり、そのためには災害現場での作業を学ぶことや、周辺地域と連携することも大切だと、遠藤さんは強調する。

他の自治体職員も被災経験から得た気付きについて話す。

三浦さん「水害で水道管が流失してしまったことがあります。その時、トイレがしばらく使えなくなり汚物の処理に苦労しました。トイレの重要性を痛感しました」

写真
令和3年8月豪雨の被害について振り返る三浦さん

田上さん「消防では重機を使った訓練をあまり行ってこなかったので、災害発生時のために必要だと感じました」

竹下さん「国の支援にも限りがあり、住民一人一人にまで支援が届きにくいことを感じました。重機を活用することができれば、できることが大幅に増えて、まちの復興も早く進むと考えています」

写真
令和3年8月豪雨での被災体験で得た教訓を語る田上さん(左)と竹下さん

小型重機は人力に比べて格段に作業効率が高く、道を塞ぐ土砂や倒木の撤去だけでなく、倒壊しそうな住宅を支え、家の中に残された大切なものを取り出すことも、車が入れないような細い路地で作業することも可能に。もちろん、支援活動を行う人の体への負担も大幅に軽減できる。

小型重機は、まちの復興の大きな鍵を握ると言っても過言ではない。

学科と実技で小型重機の有用性を実感

3日間の日程で行われた小型重機研修会。1日目は学科研修となり、自然災害とNPOの活動、災害時の重機の活用や安全性と事故、構造や性能について学んだ。2・3日目は、長年被災地で支援活動に取り組んできた技術系災害ボランティアネットワークDRT-JAPAN三重(外部リンク)と一般財団法人日本笑顔プロジェクト(外部リンク)の指導の元、小型重機を用いた実技研修を展開。2日目は、基本動作や平地・斜面での走行、けん引作業、3日目はアタッチメントの交換やトラックへの積み込み作業などを行った。

写真
学科研修の講師を務めたのは、災害支援活動の第一線で活躍する日本財団の黒澤司(くろさわ・つかさ)さん

1日目の学科研修を終え、「復旧・復興作業において時間と労力を大幅に削減可能なことが改めて理解できました」と振り返るのは広島県北広島町の職員・田上さん。

小型重機の有用性については、他の職員も強く実感したようだ。

高名さん「崩落があった場合、これまでは業者に頼まないといけませんでしたが、自分たちが小型重機を所持することで迅速に対応することができますね」

遠藤さん「東日本大震災の時はいろいろなことができずにやきもきしましたが、手元に小型重機があれば、外の力に頼らず自分たちで問題解決できることもたくさんあると感じました。また、災害に備えて日頃からトレーニングを積むことができるのもいいですね」

写真
真剣な眼差しで講師の話に耳を傾ける自治体職員の皆さん

では、2・3日の実施研修で実際に操縦してみた手応えはどうだったのだろう。

重機を操縦した経験の少ない、小澤さん、三浦さん、田上さんからは、「頭では理解していても、実際に操縦してみるとアームとブームを同時に動かす動作などは手間取ってしまった」といった感想が。

写真
小型重機を操縦する小澤さん

災害発生時に指揮者の立場となる遠藤さんは、「実際に何かあったとき、どのような対応ができるのか、上手な操作を見せてもらいながら考えられる貴重な機会でした」と話す。

また仕事で重機を使うことが多い高名さんは「アームを使って機体前方を持ち上げて移動する練習など、普段の現場での使い方と災害時の使い方は違って新鮮でした」、竹下さんは「まじめな研修ではあるものの、講師の方々が明るく面白く教えてくれるので楽しかったです。これからも継続的に練習していきたいです」と、それぞれに実りの多い時間を過ごしたようだ。

講師の指導を受けながら小型重機を操縦する遠藤さん(左端)

自治体間の連携を強化し防災大国日本へ

日本財団とB&G財団が取り組む「防災拠点の設置および災害時相互支援体制構築事業」の目的には、周辺地域と連携した防災体制づくりもある。災害発生時に、市区町村の区域を超えて即応できる仕組みをつくり、被害を最小限に抑えることに注力している。

小型重機研修会に参加した各自治体職員の話を聞く限りでは、被災時に関わりのあったNPOやボランティア団体とは継続してやりとりがあるものの、周辺地域との連携は弱く、まだまだ課題が多いようだ。

写真
2日目の実施研修終了後、みんなでほかほかの玉こんにゃくを楽しんだ

遠藤さん「今回の研修は泊りがけということもあって、各自治体や部署でどのような防災対策を行っているのか意見交換をできる貴重な機会もありました。また、一緒にご飯を食べて、仲良くなれたのもよかった。ここで得たつながりを大切にして、みんなで力を合わせて防災に取り組んでいきたいですね」

写真
小型重機研修会の最後に、参加者も講師もみんな揃って記念撮影

四季や美しい自然を持つ一方で、地形や地質・気象等の特性により災害に対し脆弱な日本。小型重機の配備など各自治体での防災体制を強化する共に、自治体間で情報や人材を共有し全国にわたって支援体制をつくることが、災害大国日本から「防災大国日本」へ生まれ変わる近道ではないだろうか。

撮影:十河英三郎

DRT-JAPAN三重 公式Facebook(外部リンク)

一般財団法人日本笑顔プロジェクト 公式サイト(外部リンク)

小型重機研修会で得た学び、人とのつながり。市区町村を超えた連携で防災大国に

「備え」と「助け合いの心」がまちを守る。災害ボランティアのエキスパートが説く、防災の心得