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「備え」と「助け合いの心」がまちを守る。災害ボランティアのエキスパートが説く、防災の心得

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小型重機研修会の合間を縫って取材に応じてくれた技術系災害ボランティアネットワークDRT-JAPAN三重の代表・山本俊太さん
この記事のPOINT!
  • 災害時、主な重機は公共インフラの復旧用として使われ、民間支援はボランティアに頼らざるを得ない
  • 災害支援では、平時とは異なる重機の活用や姿勢、考え方が求められる
  • いつ起こるか分からない自然災害。日頃からの備えと共助の仕組みづくりが減災につながる

取材:日本財団ジャーナル編集部

安定しない場所でも小回りが効き、強力なパワーで作業効率をアップさせる小型重機(機体重量3トン未満のショベルカーやクレーンなど)。その有用性が認識され、近年多くの災害支援の現場で活用されるようになった。

こうした背景から、日本財団とブルーシー・アンド・グリーンランド財団(以後、B&G財団)では、2021年から「防災拠点の設置および災害時相互支援体制構築事業」(外部リンク)をスタート。全国規模での重機配備とそれを扱うための人材育成を行い、万が一の災害に即応できる仕組みづくりを進めている。

今回は、B&G財団が主催する小型重機研修会で講師を務める技術系災害ボランティアネットワーク DRT-JAPAN三重(外部リンク)の代表を務める山本俊太(やまもと・しゅんた)さんに、災害支援現場における小型重機の重要性と、被害を最小限に抑えるための防災の在り方についてお話を伺った。

自然災害を避けることは難しいが「減災」はできる

「時間がものを言う災害支援の現場において、道を塞ぐ瓦礫の撤去や建物を支えて倒壊を防ぐなど、人力ではできない作業を効率的に行えるのが小型重機です。しかし実際の現場では、建設会社などが所持する重機は公共インフラの復興に割り当てられるため、民間の部分、例えば、個人宅の前の瓦礫の撤去や倒れそうな自宅から大切なものを取り出す作業は、どうしても穴が空いてしまいます」

そう語るのは、2011年3月の東日本大震災よりDRT-JAPANで技術系災害ボランティアとして活躍する山本さん。

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小型重機の有用性を語る山本さん

現場で作業に当たるからこそ見えてくる問題は多い。

「全国にネットワークを持つDRT-JAPANでは、常日頃から密な連携をとっており、災害が起こったらできるだけ早く誰かが現場に向えるような体制を整えていますが、どうしても時間的なラグが生じてしまいます。そんなとき、現場に民間のために使える小型重機やそれを扱える人材がいればすぐに対応でき、傷も浅く済みます。この小型重機の研修会を始めた背景にはそんな思いがあります」

地震や台風、水害などといった自然災害自体を避けることは難しいが、被害を減らす「減災」はできると山本さんは話す。

「小型重機の設置や人材育成と併せて、非常時に誰とどんな連携を取れるか、自分たちの地域にどんな人が暮らしているか把握しておくことも重要です。地域にもよりますが、私たちが支援に駆けつけても、よそ者として迷惑がられることもあり…。しかし、自分たちで全てやろうとした結果、復旧作業が大きく遅れるということもありました」

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小型重機の研修会で、参加者に操縦方法を説明する山本さん

「大事なのは、減災のために仕組みづくりと、過去の教訓を活かすこと。そのためには、小型重機の配備やボランティア、近隣地域との連携は欠かせません」

平時とは異なる災害時の重機の扱いを伝えていく

三重県で建設会社の代表を務めながら、災害時には重機ボランティアとして災害救援活動を、普段は全国各地で災害に備えた重機講習を積極的に行っている山本さん。講習は座学と実技研修を分けて行い、現場での体験と一緒に伝える。

「たとえ重機の免許を持っていたとしても、災害時における重機の扱いは平時と大きく異なります。工事現場などでは、平らな地面の上で順番に木材などを組み立てることを前提としていますが、災害時は安定しない足場での作業が主となります。その中で安全に作業を行うには、重機の仕組みや現場をよく見て判断する分析力も必要となります。また、平時の何かを順番に組み立てる作業と、倒壊しているものを安全に取り外していく作業も全く質の異なるものです」

実際に研修では、傾斜路でどのように傾くか体験するため、バランスをとりながら坂を昇り降りするといった実用的な技術も丁寧に説明をする。

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土砂崩れの現場で、倒壊しかけた家を支える作業を行う小型重機
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水害の際には、土砂が流入した家屋の中で作業を行うことも

「重機の扱いに加えて、大切なのがマインドセットです。私たちが災害現場にいるのは被災した人を助けるため、そして自分たちが重機で動かしているのは、被災者にとって思い出が詰まった家であることを忘れないでもらいたい。目の前のものを災害ごみと捉えるか、誰かの大切な財産と捉えるかで、重機の扱いやコミュニケーションが大きく変わります」

現場では、馬力もあって花形とも言える小型重機。動かせるようになったからといって慢心は禁物だと山本さんは言う。

「被災者の方に気持ちを向けることが大事。例えば、私は住宅を解体する時にも『重機で支えておくので、今なら家の中に大切なものを探しに行けますよ』とこちらから提案するようにしています。被災者の方には、現場の状況を把握しているこちら側からしっかりコミュニケーションをとることが大切なのです」

多くの災害現場で活動してきた山本さんだからこそ語れる内容だ。小型重機の研修会では、被災者の大切なものを傷つけないために、ショベルカーのバケットを水平に動かす練習なども組み込まれている。

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ボトルを倒さないようにショベルカーのバケットを水平に動かす練習風景

また、災害用に重機のカスタマイズにも力を入れているという山本さん。

「災害によって被害の種類もさまざま。同じ水害でも起こる場所などの条件によって異なります。なので、経験を通してどのような重機が現場で使いやすいかを常に考え、オプションなど使って災害時に使いやすいようにカスタマイズしています。何かあるごとに次のためにできることはないか、考えることが重要だと思っています」

備えと助け合いの心が防災、減災につながる

「似たような災害が起きて、いくつもの地域が同じような被害に遭ってしまうことをどうにかしたい」と語る山本さん。そのためには、各地域の防災担当者に、地域を超えて現場を見てほしいと強調する。

「気候変動に伴い、毎年至るところで災害が起きています。『ここでは水害が起こったことがない』という地域で水害が起きるなど、固定概念にとらわれていると大きな被害に遭うことも。そこで取り組んでいただきたいのが、実際に現場を見て、そして自分たちの地域でもし起きたらどう減災するか考えることです。現場を見る経験は防災訓練と同じくらい、いやそれよりも価値があることだと考えています」

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現場を見ることの大切さを説く山本さん

防災担当者の判断が、被害後の復旧に大きく影響するケースも多い。時には自ら「助けて」と声を上げることも重要であると山本さんは言う。

「DRT-JAPANも自治体の受け入れなしでは、作業を行えません。自分たちで『できること』と『できないこと』を素早く判断し、できない場合は発信してもらえればサポートしますし、私たちだけではどうにもならないことは他のつながりのある団体に声を掛けます」

「備えあれば憂いなし」「困った時はお互いさま」の精神を、いつ起きるか分からない自然災害からまちを守るために、ぜひ肝に銘じておきたい。

撮影:十河英三郎

小型重機研修会で得た学び、人とのつながり。市区町村を超えた連携で防災大国に

「備え」と「助け合いの心」がまちを守る。災害ボランティアのエキスパートが説く、防災の心得

〈プロフィール〉

山本俊太(やまもと・しゅんた)

株式会社山紀建設の代表取締役、技術系災害ボランティアネットワークDRT-JAPAN三重の代表。東日本大震災をきっかけに災害時の重機ボランティア活動に携わり、以降、平成30年7月豪雨、令和元年房総半島台風(台風15号)、令和元年東日本台風(台風19号)など、さまざまな被災地で支援活動に取り組む。2021年7月、被災地での活動が認められ三重県志摩市との「防災支援活動等に関する協定」締結。
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