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NPO法人の活動内容は? 法律によって決められた分野や活動事例を紹介

イメージ:ボランティア活動する人々
NPO法人はさまざまな形で、みんなが生きやすい社会づくりに貢献している
この記事のPOINT!
  • NPO法人の活動分野は主に20種類。もっとも多いのは、保健、医療、福祉に関わる活動
  • 1分野のみ取り組むNPO法人は1割程度。多くの団代が複数の分野にわたって活動している
  • NPO法人の活動を始める際は、活動の目的やゴールを定め、市民の信用が得られるよう周知に努める

執筆:日本財団ジャーナル編集部

「NPO」という言葉を知っていても、具体的にどんな活動をしているのか、知らない人も少なくないだろう。

NPO法人の活動は、「特定非営利活動法人制度」(外部リンク)という法律によって社会貢献を目的とした20種類に限られている。社会課題のテーマ(分野)や、対象となる地域、支援するヒト・モノ・コトに応じて、さまざまな団体が多岐にわたる活動に取り組んでいる。

この記事では、NPO法人の主な活動内容やその具体例について解説。NPO法人を立ち上げる際の参考となる他団体の活動内容の調べ方や、設立に関する相談先も紹介したい。

1.NPO法人の主な活動内容

「NPO」は「Non-Profit Organization」(非営利組織)の略称で、社会課題を解決するために活動している民間の組織・団体のこと。活動内容に縛りはなく、幅広い分野で活動が可能だ。

一方、法人格を取得した「NPO法人」の場合は、次の20分野に限定される。

1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
法律で決められた「特定非営利活動」の活動分野

各分野について具体的な定義はなく、社会的常識に従って都道府県や政令指定都市が判断する。

また、NPO法人の活動分野は1つに絞らなければいけないわけではなく、多くの団体が複数の分野にわたって事業を展開している。

1-1.NPO法人の活動内容で多い分野

内閣府NPOホームページ(外部リンク)による、NPO法人が多い活動分野と団体数(2025年3月31時点)は、次のとおりだ。

NPO法人の主な活動分野と法人数
・保健・医療・福祉 28,759
・社会教育 25,031
・子どもの健全育成 24,736 
・連絡・助言・援助 23,587 
・まちづくり 22,830 
・学術・文化・芸術・スポーツ 18,754
・環境保全 13,235 
・職業訓練・就労支援 12,887
2025年3月31日までに認証を受けた49,485法人の定款から集計

特に多いのが「保険・医療・福祉」や「社会教育」「子どもの健全育成」の分野。また、1つの分野のみ取り組むNPO法人は4,791団体と、全体の1割に満たない。

2.NPO法人における活動事例

ここからは、具体的な活動事例を、国内のNPO法人、認定NPO法人(※)、海外で活動するNPO法人に分けて紹介する。

  • 認定NPO法人は、NPO法人の中でも厳しい条件をクリアし所轄庁より認定を受けた法人で、さまざまな税制優遇措置が適用される

関連記事:認定NPO法人とは? NPO法人との違いや申請するメリットを解説(別タブで開く)

特定非営利活動法人I-DO(アイディオ)(外部リンク)

「誰もが安心・安全に移動できるまちづくり」を目的に、自転車を中心とした移動環境の向上に取り組んでいる。

例えば、正しい交通ルールや自転車の乗り方を親子で学べる公園や、駐輪場の運営管理。レンタサイクルの貸出事業や、地元の大学生と取り組む放置自転車の啓発活動などを展開。自転車利用を促進するサービスを提供することで、CO2削減や渋滞緩和といった交通課題の解決を目指している。

NPO法人ICDS(外部リンク)

キャリアコンサルタントのプロ集団として、「未来を担う若者がイキイキとした姿で生きて行くためのキャリア形成の支援」をミッションに掲げ、さまざまな活動に取り組んでいる。

キャリアコンサルタントのスキル・知識の向上を支援する事業や、若者を対象としたキャリア教育プログラムの開発・実施、生活困窮状態にある人の就労支援などを実施。自治体からの委託を受け、岐阜県全域、名古屋市全域、岡崎市、知多半島全域において個別相談、ワークショップ、就労体験等の無料提供も行なっている。

特定非営利活動法人ジャパンハート(外部リンク)

「医療の届かないところに医療を届ける」をミッションに掲げ、アジアの発展途上国や国内の離島・へき地、大規模災害にあった被災地などを対象に、医療支援に取り組んでいる。

海外では医療を受けられない子どもたちに無償で診療や手術を実施し、その数は年間約3万4,000件、累計30万件を超えている。また、国内では小児がんと闘う子どもたちをサポートしている。

認定NPO法人カタリバ(外部リンク)

カタリバは、子どもたちがどんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす意欲や創造力が育めるよう、「キッカケ格差」を解消する支援に取り組んでいる。

高校への出張授業、被災地における教育支援、家庭に困難を抱えた子どもたちが安心できる居場所づくり、地方に住む若者の世界を広げる教育支援といった、多様な出会いと学びの場をつくり続けている。

認定NPO法人自然環境復元協会(外部リンク)

多様な生き物と共に暮らす社会を目指して、「環境人材の育成」と「都市の自然環境の保全」「農山漁村の活性化」に取り組んでいる。

主な活動として、環境保全団体とボランティアを希望者をマッチングし、自然を守る人材を未来へつなぐプロジェクトや、都市と農山漁村の結びつけることで地域と生態系を豊かにするスタディツアーを実施。また「環境再生医」の資格認定講習も行っており、2023年度には97名が受講した。

より良い社会づくりのため、多分野にわたるNPO法人が活動を続けている

3.NPO法人の活動内容を参考にしたいときの情報入手先

NPO法人の立ち上げに際し、他団体の活動内容を知りたいときには、内閣府NPOホームページ、自治体の公式サイト、CANPANを活用するのがおすすめだ。どのサイトも基本的な情報が登録され、それぞれ特徴的な条件を絞って検索することができる。さらに詳しい情報を入手したい場合はNPO法人のホームページやブログ、SNSをチェックしよう。

3-1.内閣府NPOホームページで調べる

内閣府の「NPO法人ポータルサイト」(外部リンク)は、所轄庁の協力を得て、NPO法人に関する基本的な情報を一元的に管理。市民・NPO法人・企業などに広く情報を提供する目的で運営されている。

主な検索機能

  • キーワードから探す
  • エリア(都道府県・市区町村)から探す
  • 活動分野から探す
  • 税額控除の対象団体となるNPO法人に絞って探す など

税額控除の対象団体に絞って検索できる点は、寄付をする市民や企業にとって便利なサービスだ。

3-2.自治体のサイトで調べる

自治体が運営する多くの公式サイトでは、管轄する NPO法人の情報を検索する情報ページを提供している。

例えば東京都のNPO法人検索システム「法人情報検索」(外部リンク)では、法人名・目的・エリア・活動分野のほか、法人の設立年月日や認定の有効期間などからも検索できる。

主な検索機能

  • 法人名称から探す
  • 定款に記載された目的から探す
  • 地域から探す
  • 活動分野から探す
  • 法人設立認証年月日から探す
  • 認定の有効期間から探す
  • 認定の取得状況から探す など

3-3.CANPANで調べる

日本財団が運営するコミュニティサイト「CANPAN(カンパン)」(外部リンク)は、市民やNPO、企業などの活動を支援し、連携を促すことで、より良い社会づくりを目指するプロジェクトだ。

メニュー「団体情報」にある検索機能では、情報開示レベルや、ブログやSNSの実施有無、ボランティア情報なども絞ることができるのも便利だ。

主な検索機能

  • 認証マークの有無
  • 情報開示レベル
  • 法人の種類
  • 団体名
  • 主たる事業所の所在地
  • キーワード
  • Facebookの有無
  • X(旧Twitter)の有無
  • 寄付情報の有無
  • ボランティア情報の有無
  • 設立年
  • 活動地域
  • 中心となる活動地域(県)
  • 活動分野
CANPANのトップページ
CANPANの非営利団体の詳細検索ページ

4.NPO法人設立の際のポイント

NPO法人を立ち上げる際には、団体として行動していくための基礎をつくり、市民から信頼を得るための取り組みが重要となる。ここでは特に重要な2点に絞って紹介する。

4-1.活動の目的を明確にし共有する

団体の立ち上げに関わるメンバーとの話し合いを通じて、活動する目的を明確にし、それを実現するための活動内容を決めて共有する必要がある。とくに次の点において後々揉めたりしないよう、しっかり認識を揃えておくことが大切だ。

  1. 団体の目的・ゴールをどこに設定するのか
  2. 目的を達成するために、どのような活動が必要か
  3. 活動を継続するために、どれくらいの資金・場所・設備・人数が必要か
  4. 資金の調達方法をどうするか

この際、既存のNPO法人の活動内容を参考に、その地域・対象に合わせて方向性を決めておくのも1つの手段だ。

4-2.目的や活動内容の周知に努める

NPO法人として活動を継続し、課題解決というゴールにつなげるためには、団体の情報を発信して社会からの信用を得ることが大切だ。

情報発信するには、ホームページ、SNS、CANPANを使い分けてみよう。ホームページでは理念、活動内容や実績などを掲載し、市民や企業が基本的な情報をいつでも確認できるようにしておこう。また、活動報告やイベントの情報はSNSで積極的に発信し、より多くの人の目にとまるよう工夫しよう。

まだ認知度の低い設立直後は、CANPANを活用して情報発信すれば、社会貢献活動に関心がある人の目にも届きやすいだろう。

5. NPO法人設立に関する相談先

NPO法人の設立や活動する際の相談先として、自治体やNPOサポートセンター(外部リンク)日本NPOセンター(外部リンク)がある。

自治体の窓口では、申請手続きに関する問い合わせや事前相談が可能。また、自治体だけでなく、支援団体が相談窓口を設置している場合もある。設立の手続きだけでなく法人運営や財務のアドバイスも受けられる。

NPOサポートセンターは事務手続きのサポートやコンサルティングを行っている。NPO支援の実績ある専門家に相談できるサービスも提供されている。

日本NPOセンターは、セミナーやワークショップを開催しており、組織の運営について学びを深めることが可能だ。会員同士の情報交換の場も提供されているのが、心強い。

まとめ

任意団体であるNPOは活動内容の制限がない。一方で、NPO法人の活動分野は、医療・まちづくり・就労支援など、20種類に限定される。

それぞれの分野で多くの団体が活動をしており、地域の特性や目的・対象などに応じて多岐にわたる取り組みがなされている。

既存団体の取り組みや、気になる分野の活動内容を参考に、どのようなNPO法人を立ち上げ、どのような社会を目指していきたいか、役立ててみてほしい。

参考文献:

内閣府NPOホームページ「特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要」(外部リンク)

内閣府NPOホームページ「認証数(活動分野別)」(外部リンク)

内閣府NPOホームページ「NPO法人ポータルサイト」(外部リンク)

内閣府NPOホームページ「公表・縦覧情報」(外部リンク)

東京都生活文化スポーツ局「NPO法人ポータルサイト」(外部リンク)

東京都生活文化スポーツ局「法人情報検索(簡単検索)」(外部リンク)

阿久比町「NPOの基礎知識 ~NPOを正しく理解しましょう~」(外部リンク)

太田市ホームページ「NPOの基礎知識Q&A(解説)」(外部リンク)

まつやまNPOサポートセンター「NPOをはじめたい方へ」(外部リンク)

  • 掲載情報は記事作成当時のものとなります。