京都市南区で子ども食堂を起点にした居場所づくりを進める、NPO法人happiness

「お腹すいた!」、「今日のメニューは?」。夕方になると、子どもたちが次々と扉を開けて集まってくる。
ここは京都市南区にある「and happiness.(アンドハピネス)」。子どもも親も独りにしない、親子にとっての居場所づくりを目指して、NPO法人happinessが運営している子ども第三の居場所です。happinessはカフェ営業をしながら、「ハピネス子ども食堂」を週3回実施しています。子ども食堂から見えてきた、居場所の必要性とはどのようなものでしょうか。また、助成期間終了後の自走に向けた取り組みについて聞きました。
公民館の一室からボランティアで始まった活動
happinessの始まりは2016年、ボランティアチームで子ども食堂を実施したことに始まります。回数を重ねるごとにボランティアスタッフも利用する子どもも増えたこともあり、2019年にはNPO法人化。子ども食堂の運営費を捻出するため、モーニングやランチを提供するカフェを運営するようになりました。
地域の子どものために活動していた実績が認められ、2023年には京都市八条市営住宅団地再生事業で建てられた分譲マンション「メイツ京都西大路」の一角に、カフェ「and happiness.」をオープン。みんなで本を持ち寄って本棚をつくる「まちライブラリー」を併設し、本やイベントを通して地域の人との交流を深めながら、現在は月・水・土曜の週3回、子ども食堂を実施しています。

子ども食堂から見えた、子どもが抱えるさまざまなしんどさ
子ども食堂には、小学生から高校生まで毎回40名ほどが訪れます。スペースの関係で二部制をとっており、17時半からが主に小学生を対象に、18時半からは中学生と高校生を対象に夕食を提供。ボランティアの調理スタッフを含めて10名ほどで準備をし、栄養満点の食事を作り、子どもたちを出迎えます。

希望者が増えていることもあり、利用は予約制です。また、曜日によっても対象を変えています。月・水曜は誰でも利用が可能ですが、土曜日は複雑な背景を抱える子どもを中心に受け入れています。対象を分けているのは、「手厚い支援が必要な子どもと密にコミュニケーションをとるため」と、理事長の宇野明香(さやか)さんは話します。
「初めはひとり親家庭や、保護者が働いていて孤食の子どもの利用を想定していました。しかし、子ども食堂を運営していると、ヤングケアラーや障害のある兄弟姉妹がいるきょうだい児、ステップファミリーで家に居づらい子どもなども来て、さまざまなケースのしんどさがあることがわかりました」

子ども食堂があることで、見守り続けることができた子どももたくさんいたと、宇野さんは振り返ります。しかし、家庭環境の複雑さから家出を繰り返したり、SNSを通じて不適切に見知らぬ人と繋がったりして危険に出くわす可能性から子どもを守るためには、子ども食堂や居場所だけでは不十分であると宇野さんは痛感してきました。
そこで2022年には、少女たちが安心して立ち寄ったり寝泊まりしたりするための住居(シェルター)「ハピネスハウス」を立ち上げ、生活のサポートも開始。子ども食堂から見えた子どもを取り巻く課題に対して、できることを一つずつ広げています。
自立した運営を見据え、地域や企業との連携を強化
happinessは、2021年7月から子ども第三の居場所になり、2024年春で3年間の助成期間が終了しました。助成期間のうちから宇野さんは、4年目以降、自走していくための資金づくりに奔走してきました。
happinessの収入源は、カフェ事業の売上に加え、宇野さんの講演費や自治体からの助成金や委託事業などさまざまあります。特に力を入れたのが、「地域や企業と連携し寄付を募ることだった」と宇野さんは話します。
happinessでは、継続的な寄付をする個人・法人を「ハピネスサポーター」と呼び、イベントへの招待やコミュニティへの参加などの機会を提供しています。個人であれば月1,000円から、法人であれば月30,000円から継続寄付を受け付けています。
「現物を寄付してくれる個人や企業さまもいますし、きのこ狩りやおもちつき大会を開催したり、子どもたちを遠足に連れて行ってくれたりする企業さんもあります。さまざまな体験活動を、地域のみなさんや企業さんのご協力いただくことで実施できています」

こうした寄付を集めるためには、自団体の活動を適切に発信し、周知していく情報発信が欠かせません。期間中には日本財団が提供する7カ月の広報伴走支援を受け、広報の年間計画を立てる他、WEBサイトや寄付者とのコミュニケーションの見直し、プレスリリースの書き方や配信方法などを学んだことが大いに役立ったそうです。数年で寄付金も数百万円単位で増加し、運営を支える大きな柱になりました。
「子ども食堂は全国各地で実施されていますが、回数が少なかったり不定期だったりして、精力的に活動しているところは多くはありません。週3回のハピネス子ども食堂を継続することで、信頼に繋がり寄付をいただけるようになったと考えています」

子ども食堂から始まり、カフェ、シェルターと活動の場を広げ、子どもを見守ってきたhappinessは、2024年からは、より長期で子どもを支えられるよう自立援助ホームの立ち上げ予定。これからも子ども食堂を軸に、地域や企業と連携しながら子どもに必要な居場所をつくり続けていきます。
取材:北川由依