地域のボランティアさんと共に歩む。東京・墨田区「ラーニングラボすみだ」

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運営するキッズドアの大塩達さん(左)と、中本菜穂子さん(右)

東京メトロ「押上駅」から徒歩10分ほど、十間橋通り沿いを進んでいくとピンク色の建物が見えてきます。ここは、2024年4月に開所した「ラーニングラボすみだ(以下、LLすみだ)」。元表具屋さんをフルリノベーションして誕生した、子ども第三の居場所です。

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表具屋さん時代の趣を残す「ラーニングラボすみだ」の外観

LLすみだは子ども第三の居場所として週3日開所しており、毎日20名ほどが利用しています。事前登録制で、小学生を中心に中・高生も利用が可能。今年度の利用登録者は100名以上にのぼります。

運営するのは、「すべての子どもが夢や希望を持てる社会」の実現を目指して⽇本国内の子ども支援に特化して活動する「認定NPO法人キッズドア」。2007年の設立以来、学習支援や居場所支援、体験活動やキャリア教育プログラムを提供してきました。

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LLすみだ2階の学習スペース

長年の活動から、子どもの居場所の必要性を把握していたキッズドアは、LLすみだを開所する以前も、足立区を中心に中央区、文京区、港区で子どもの居場所の運営をしてきました。

そんな折、「地域の子どものためにこの建物を活かしてほしい」という家主さんの温かい想いから、厚意的な条件でご提案をいただいたそうです。「キッズドアにとっても本当に心強いものでした」と事業推進部チーフの大塩達さんは語ります。同時期に日本財団の助成金採択を受け、建物を現在の形にフルリノベーションをしました。

地域と共にある子ども第三の居場所

家主さんの想い、そして元表具屋さんとして地域の方々に愛されていた建物を大切に受け継いでいきたいと、LLすみだのモットーに「いつまでも地域とともに、どこまでも子どもと未来のために」と掲げました。

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ご近所さんがふらっと足を運んで、立ち話をして帰っていく姿もよくある風景

リノベーションする際も、地元の工務店や電気屋さんなど、可能な限り地域事業者に仕事を依頼しました。また、町内会や社会福祉協議会と連携し、ボランティアの募集も行っています。

「50名以上がボランティアの登録をしてくれています。学生からシニアまで幅広く、開所日には毎回数名がお手伝いにきてくれます」と2024年4月からLLすみだの職員の中本さん。ボランティアは約半分が墨田区にお住まいの方で、働いている現役世代が多いのが特徴。仕事終わりや休日に手伝いにきてくれると言います。

「大人にとっても、会社とも家とも違う第三の居場所になっているようです。ここではみなさんニックネームで呼び合っています」(中本さん)

また、墨田区の地域性か、「何かおもろいことをやりたいという方がたくさんいる」とも。そんなニーズに応えるように、ボランティアも様々な切り口から関われるように工夫しています。
受付や子どもの見守り、料理、得意を活かした館内整理、学習支援など。ボランティアさんが得意とすることややりたいことを活かしてLLすみだに来やすい環境づくりにも注力してきました。

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入り口に飾られている、ボランティアさんの切り絵作品。庭づくりや工作など他にも様々な得意を活かしてボランティアさんが館内を彩っている

LLすみだは「やりたいことができる場所」

まさに地域のみんなに見守られる居場所に育ってきたLLすみだ。様々な大人の関わりによって、利用する子どもたちも少しずつ変わり始めています。

「当初はドアをきちっと閉められないとか、パスタを啜って食べるとか、生活習慣が身についていない子どももいましたが、注意することも減りました。一人で遊んでいた子も、他学年や大人と臆することなく話し、コミュニケーション力の向上を感じています」(中本さん)

また、保護者からも「LLすみだに支えられている」「しんどい時期も居場所があったから乗り越えられた」との声が届いています。特にひとり親家庭からは、「ご飯が食べられて、話を聞いてもらえる場所があることはありがたいです。子どもを家に一人で待たせずに仕事に出かけることができるので安心」と、頼りにされていることが窺えます。

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子どもたちが来る前に、受け入れ準備を進めるスタッフ

子どもにとっても、保護者にとっても、そしてボランティアとして関わる地域の人にとっても拠り所となっているLLすみだ。安心安全な環境をベースに、子どもたちの小さな挑戦がたくさん生まれています。

「飼っているザリガニを紹介する新聞を作ったり、タブレットでダンス動画を撮影して発信したり。また、建物が大きく何をやっているのかわからないからと、掲示板を作ってニュースを発信するなど、子どもたちの様々なアイデアが形になりました。『やりたいことができる自由な場所』と子どもも言ってくれています」(中本さん)

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LLすみだに掲示されているザリガニ新聞

物語のある一軒家だからできる場づくり

開所2年目、利用者は右肩上がりです。子どもも大人も居心地が良いと思える居場所になっている理由を、中本さんはこのように考えています。

「きっと一軒家だからこそ生まれる温かい空気感があるんでしょうね。大きなガラス扉から光が差し込んで、天井が高く、畳のスペースもある。ついついリラックスしてしまう心地よさがあるのだと思います」(中本さん)

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1階と2階それぞれに畳スペースがある

そうした空間に加えて、家主さんがこの地域で暮らし得てきた信頼やネットワークの恩恵にも預かりながらLLすみだは運営されています。だからこそ、「この地域だからこそできる唯一無二の居場所」だと語ります。

「今後も地域の力になれるような居場所にしていきたい」と強く語ってくれたキッズドアのお二人。2025年12月からは日中に不登校などの中高生を支援する「キッズ・ポートすみだ」も開設予定。ますます地域にとって必要な場になっていきそうです。

取材:北川由依


「子ども第三の居場所」に興味をお持ちの方は、ぜひ子ども第三の居場所プロジェクトページをご覧ください。