多文化共生・多世代交流の拠点に。愛媛・伯方島「ちんじゅのもり」

「伯方の塩」でお馴染み、愛媛県にある伯方島。今治市内から大島を抜けた先にある、人口約6,000人の島です。そこに2021年、島唯一の子ども第三の居場所として「ちんじゅのもり」が誕生しました。日本財団からの助成期間を終え、2024年からは今治市の児童育成支援拠点事業として運営を継続しています。
廃校を再活用して誕生
居場所を訪れると、カラフルなイラストが描かれたレトロな建物が目に飛び込んできました。

ここは元保育所。廃校になった木造校舎を地域住民が中心になり、地域の人が交流する集会所「鎮守の杜」として生まれ変わらせました。子ども第三の居場所「ちんじゅのもり」は、ここで行われる活動の一つです。

出迎えてくれたのは、「ちんじゅのもり」を運営するNPO法人創作クラブGrian代表理事の田窪良子さん。伯方島出身で、横浜での仕事を経て2010年にUターンし、発達障害支援や地域づくり、子どもの居場所づくり活動に取り組んできました。

週3日、みんなで食卓を囲む
現在「ちんじゅのもり」は週3日開所。放課後になると、学校を終えた子どもたちが送迎車で、「ただいま!」と元気に挨拶をしながら居場所に帰ってきました。
到着したらまずは宿題タイム。終わった子どもから順に、おやつを食べて、遊びの時間になります。
17時ごろになると「こどもキッチン」と呼ばれるご飯作りタイムです。居場所で育てた野菜や地元の人からいただいた食材を使った料理を大人も協力しながら準備して、いただきます。

食器の片付けも各自で行います。食べ終わった人からキッチンへ移動して、皿洗い。準備から片付けまでスムーズで、子どもたちの習慣になっていることが伝わってきました。
外国ルーツの子どもの利用が中心
居場所がある伯方島は、愛媛県・広島県を結ぶしまなみ街道の中央に位置しています。周囲の島に比べると、観光や農業、漁業への従事者は少なく、主に造船や海運業が盛ん。近年では外国人労働者の割合も増加傾向で、それに伴い外国にルーツのある子どもも増えています。
しかし、日本語の読み書きを十分にできない保護者にとっては、子どもの宿題を教えることが困難な場合も。「居場所があることで助かっている保護者は多いのではないか」と、田窪さんは話します。
1日の利用平均は7名になります。そのうちの半数以上が外国ルーツの子どもです。
「マンツーマンとまではいきませんが、ここでは子どもたちの宿題を丁寧に見ています。学校で配られたプリントをスタッフが読んで、お迎えの時に保護者に口頭でお伝えするなどして、言語の壁をできるだけ感じないようなサポートを意識しています」
こうして日々の関わりで見えてきた課題を、田窪さんは行政や学校に届け、必要な支援を届けられるよう働きかけもしています。
「外国ルーツの子どもにとっては、『ちょっと』とか『ほとんど』とかの日本語のニュアンスが難しい。そのために言葉を理解しきれなかったり物事をはっきり言いがちになったりすることで、言語が壁になり、学校でも孤立をしがちです。ここには様々な大人が来るので、関わることでTPOや感情に合わせた言葉の使い方を身につけてほしいですね」

広がる子育て支援や地域活動
こうした実績を踏まえて、2023年から「鎮守の杜」は地域子育て支援拠点「子育てひろばしましま」の活動場所にもなり、創作クラブGrianが運営を担っています。赤ちゃん連れの保護者の利用が増えたことで、居場所との連携も可能になりました。
「居場所のお母さんたちから教わった子育て情報を、しましまのお母さんにお伝えすることもあります。居場所利用の様子もみてもらえるので、小学生になったら利用を検討したいという方もいらっしゃいます」
他にも、地域づくりとして長年取り組んできたコミュニティカフェ「HoToRi」を月1回開催したり、「今治伯方島トライアスロン」のバイクエイドステーションのボランティアをしたりしています。また、地域の方の協力を得て伯方島のPR動画も制作しました。「ちんじゅのもり」を拠点にしながら、子どもたちの活動はフィールドを広げています。

多文化共生・多世代交流の場へ
これまで田窪さんは、様々なイベントや交流を通して、地域で”たてよこななめ”のつながりを紡いできました。今では「鎮守の杜」は、国籍や年齢、特性など様々な背景の人が集まる賑やかな場に育っています。
「私は長年、自閉症児者の余暇活動の支援をしてきました。鎮守の杜に来てくれている自閉症の方は、「ちんじゅのもり」の晩御飯の調理を手伝ってくれたり、居場所の子どもたちと一緒にご飯を食べたり遊んだりして、過ごしています。最初、子どもたちは『なんで喋らないの?』と疑問に思っていましたが、一緒に過ごすうちにその方のパーソナリティだとわかったようで、受け入れています。帰る時は見えなくなるまで手を振り合ったりしていますよ」

また、コミュニティカフェ「HoToRi」では韓国やロシア、台湾など多国籍の料理を出したりなど、島にいながら異文化を体験できるような機会も意識的に設けています。
島内の交流だけではなく、島外の人との交流の機会もつくっています。
「鎮守の杜」をしまなみ海道の自転車の休憩所「しまなみサイクルオアシス」に登録。給水したりトイレ休憩に立ち寄ったりできるスポットにしています。そうすることで、外から島を訪れた人がふらっと訪れ、子どもたちと関わることもあるそう。
今後は「ちんじゅのもり」の活動を軸にしながら行政と連携して、外国ルーツの子どもがスムーズに日本語での学校教育を受けられるように日本語の読み書きなどを身につけられる環境づくりを多文化推進プロジェクトとして進めていきたいとのこと。これからも子どもたちが伯方島で安心して暮らしていけるよう、寄り添い続けていきます。
取材:北川由依
「子ども第三の居場所」に興味をお持ちの方は、ぜひ子ども第三の居場所プロジェクトページをご覧ください。