児童館の中に子どもの居場所をつくる。沖縄・浦添市の「みんなの森の子あしびなぁ」

那覇市に面する浦添市勢理客(じっちゃく)。ここに、「森の子児童センター」に併設した子ども第三の居場所「みんなの森の子あしびなぁ(以下、あしびなぁ)」があります。
2022年から25年まで日本財団の助成金を受託し、2026年からは浦添市地域こどもの生活支援強化事業として運営されています。

現在、登録者数は小学校低学年を中心に27名(令和6年度3月時点)。児童館の一角にあることで、支援を必要としている子どもに自然と手を差し伸べやすいと、あしびなぁを運営する「一般社団法人まちづくりうらそえ」の代表・大城喜江子さんは話します。

児童館運営から見えた、支援の必要性
あしびなぁの開所は2022年。きっかけは2015年より児童館(0歳から18歳未満のこどもを対象とした遊び場)の指定管理者として森の子児童センターを運営する中で、様々な状況に置かれた子どもたちの存在が浮き彫りになったことでした。
「児童館でイベントや体験活動を開催すると、児童館で毎日のように遊んでいる子どもよりも体験イベントを目指して参加する子どもの方が多くいました。いつも遊んでいる子どもが保護者にお便りを渡していない、保護者に情報をキャッチアップする余裕がないといった家庭の状況が見えてきました」

そこから子どもたちにじっくり話を聞くと、「勉強したいのに家は環境が整っていない」「お金がなくて塾に行けない」などの課題が見えてきたそう。そこで、ボランティアで中高生向けの学習支援を開始。その中で、「夜ご飯がお菓子だけ」「家に帰っても食べるものがない」と口々にいう子どもたちに対して、食料支援も始めました。
「当時、館内に自転車で乗り込んで来たり、学校へ通わず遊んでばかりいたりするやんちゃな子がたくさんいました。でも彼らにも学びたい気持ちがあるとわかり、ボランティアを集めて、40名ほどの中高生を対象に勉強を教えました。複雑な家庭環境にある子どもが多く、みんな自分の居場所を探していたんだと思います」
児童館や近隣の放課後児童クラブとの連携を模索
支援の対象を小学校低学年にも広げるため、2022年、子ども第三の居場所の助成金に申請。開所当時は児童館の2階に仕切りを設けて、児童館の一部を居場所とする形で運営をスタートさせました。当初居場所は「無料の学童」という形を取り、体験活動、学習支援、食事支援を主に行う登録制の形を取り、児童館にあそびに来る子と居場所を利用する子を分けて関わっていました。
しかし、一つの建物の中で子どもたちの行動範囲を制限することは難しく、児童館を利用している子どもが2階へ遊びに来たり、居場所の利用者が1階のイベントに参加しに行ったりすることが頻繁にあったそうです。
そこで、1階・2階で利用者を分けるのを止めて、誰でも遊びたい場所で遊べるようにし、子どもたち全員をセンターみんなで見守る運営体制に切り替えました。

また、もう一つ懸念点となったのが、児童館で放課後の時間にひらかれる放課後児童クラブ(学童保育)との違いです。放課後児童クラブは有料である一方、居場所は無料なのはなぜなのか。その違いを、「近隣の放課後児童クラブのみなさんに丁寧に説明をした」と大城さんは振り返ります。
重要な役割を果たしたのが、10年以上継続している「五者会議」です。
五者会議とは、隣接する小学校・こども園、そして近隣学童・市の職員、そこに森の子児童センターの職員が加わる形で月1回開催されている会議のこと。地域の子を地域で育てるための連携や協力のあり方を模索してきました。
「個人情報保護に関する誓約書を結んだ上で、気になる世帯の情報交換をしています。五者会議が地域で地域を見守る土台になっており、具体的で効果的な役割分担ができています。そうした積み重ねがあったので、放課後児童クラブと居場所の違いも理解していただけました」
今では近隣の放課後児童クラブでは支援が行き届かない子どもをあしびなぁで受け入れることもあり、地域全体で子どもを見守る体制ができつつあります。

専用スペースがなくても個別ケアは可能
日本財団からの助成を終え、浦添市地域こどもの生活支援強化事業として運営される現在も、児童館と居場所は空間によって分けられておらず、館内の中でごちゃ混ぜです。
居場所のための専用スペースはありませんが、「個別ケアは可能」と、あしびなぁのマネージャーである普久原小百合さんは話します。

「やんちゃな子として一括りにするのではなく、一人ひとりの背景を大切にしながら向き合っていけば、児童館の中でも個別ケアは可能です。あの子はどんなことを考えているんだろう、どんな背景があるんだろう、ということを想像しながらコミュニケーションをとって、得られた情報を職員同士や五者会議で共有していく。すると、行動の背景を読み取ることができ、適切な関わりができます」
そのためには、宿題を一緒にやった時、遊んだ時、子どもが何か話したそうにしたら、「じっくりと聞くことが大切」と、普久原さん。
「子どもが『お風呂が冷たかった』とぽろっと呟いた一言から、家のガスが止まっていることが想像でき、いつから続いているのかなどを聞いて状況を把握できます」
日常の関わりの中から気になる子どもを発見し、適切なサポートや関わりをすることで、虐待の早期発見にも繋がっています。こうした一貫した関わりが可能なのは児童館ならでは。
「遊び場として子どもたちに認知されているため、来館ハードルが低く、課題のある子どもとも繋がりやすいのは、児童館のメリットです。児童館のみを利用する子どもも一緒に遊ぶのでスティグマもありませんし、居場所の利用を辞めても遊びに来たときに状況を窺い知ることができるので私たちも安心です」
0歳から18歳までを見守る児童館の可能性
まちづくりうらそえが、あしびなぁを運営して4年、森の子児童センターを運営して10年以上の月日が経ちました。かつてやんちゃだった子どもたちの中には、児童館の職員になった人もいます。今は成人した子どもたちの中には、「児童館(居場所)はどんな存在か?」と聞くと、「実家みたい」と答える人もいるそうです。
「大きくなって、就職や結婚などの報告に来てくれる人もいます。ここにはいつも知っている顔がいるということが、気軽に寄れる理由になっていると思います」と普久原さん。
近年、児童館の運営を都市部の民間企業が受託するケースが増えています。様々な事情があるのでしょうが、森の子児童センターを見ていると、児童館を地域の人が、地域のために運営することが、地域の力になっていくことがわかります。
「学校が落ち着くと地域が落ち着く。地域が落ち着くと学校が落ち着く。0歳から18歳まで子どもたちを継続して見守れる場所は、児童館しかありません。可能性は無限大です」

全国に児童館は公営・民営合わせて4,248カ所(厚生労働省『社会福祉施設等調査』,令和6年10月1日現在)ありますが、支援要素のある「子ども第三の居場所」機能をそなえた児童館は限られています。あしびなぁのような場所が増えれば、生まれた時から成人するまで、一貫して子どもの成長を見守ることができ、安心して子育てできるまちが増えていくのではないでしょうか。
取材:北川由依
「子ども第三の居場所」に興味をお持ちの方は、ぜひ子ども第三の居場所プロジェクトページをご覧ください。