きっかけは被災地の学習支援。子どもの主体性を伸ばす宮城「しろいしきち」

2011年の東日本大震災をきっかけに立ち上がったNPO法人アスイク。「復興後にやってくる明日のために教育を」を掲げて、4人のボランティアとともに避難所での学習支援を始めたところから、県内の自治体と協働しながら支援の輪を広げてきました。2022年から子ども第三の居場所の運営を始め、現在は宮城県内に4ヵ所に拠点があります。今回は、白石市にある「しろいしきち」を訪問しました。
学習支援から子どもの居場所づくりへ
震災以降、長期間に渡り学習支援を行ってきたアスイク。活動を続ける中で出会った子どもや若者、その家庭の声に耳を傾けながら、必要とされる支援を形にしてきました。
関わることで見えてきたのが、震災以前から生活に困窮している家庭や、住居を転々としてほとんど学校に通ってこなかった子どもなどの存在でした。
アスイクは、2013年から仙台市にて生活困窮家庭の子どもの学習・生活支援事業を開始。2022年には、岩沼市と日本財団「子ども第三の居場所事業」の協定を締結し、以降、白石市、多賀城市、大河原町にて子ども第三の居場所を広げています。


自治体と二人三脚で運営
しろいしきちは2024年に開所しました。平日の週5日、14時から20時まで利用可能で、希望者に食事提供や入浴支援を提供しています。1日の利用定員は20名に対してスタッフ3〜4名を配置し、手厚いサポートをしています。
ユニットリーダーである佐藤みゅうさんは、開所時から子どもたちの成長を見守ってきました。

「小学校高学年から中高生に向けて学習支援をする中で、複雑な背景を抱える子どもの支援のためには低学年からの予防的なアプローチが必要と考えていました。その中で、これまで学習支援で協働してきた自治体との関係性を活かし、新たな協働のカタチとして提案させていただき開所に至りました」
長年、宮城県内で学習支援をしてきた信用があったため、開設前から現在に至るまで、自治体と二人三脚で取り組んできたというアスイク。なかでも担当課である子育て支援課とは密に連携をしながら、運営をしています。
自治体からの紹介で利用に繋がる子どもも多く、「支援を必要としている子どもやご家庭にアプローチしやすい体制です」と、佐藤さんは話します。
子どもの主体性を伸ばす居場所
しろいしきちでは、子どもの主体性を育てることを重視した関わりをしています。それを象徴するのが「意見ポスト」です。

「子どもたちの間で体験格差が広がっているのを実感しています。夏休みにどこも行けないからと、宿題の絵日記に作り話を書いている子どももいるんです。子どもたちはどんなことが好きなのか、やってみたいのかを拾い上げたいと思い、意見ポストを始めました。開所当時はスタッフがイベントの企画をすることが多くありましたが、今では子どもからたくさんの意見が出るようになり、月1〜2回実施しています」
子ども企画で最初に実施したのは、流しそうめん。流しそうめんをやったことがなく、どんなものかわからないという子どもがいたことから、みんなで準備をし、楽しみました。

その後も、たこ焼きパーティ、スイートポテトづくり、送別会の実施など、子どもたちの発案で様々な催しを実現し、しろいしきちの仲間で楽しい時間を共有してきました。それを可能にしているのがイベント実施のためのフォーマットです。

「やりたいことがあっても、実現に至らないこともたくさんありました。そこでフォーマットを取り入れて、記入するようにしました。すると、子どもたちも考えやすくなったようで、様々な活動を行うことができるようになりました。自分がやりたいという気持ちだけではなく、他の子にも楽しんでほしいと企画してくれる子どもが多いので、すごくいいなと思っています」
中学生以降も切れ目のない支援
開所から3年目を迎え、しろいしきちには、「笑顔が増えた」「遠慮がちだった子どもが大きな声を出せるようになった」など子どもの変化を喜ぶ声が届いています。また、保護者からも、「子どもが安心して過ごせる居場所ができて、心に余裕を持てるようになった」という声が届き、子どもと保護者の双方にとって頼れる居場所になっていることが窺えます。
その上で、今後は「切れ目のない支援を目指していきたい」と佐藤さんは続けます。
「しろいちきちでは、白石市と協働して小学生から高校生年代を対象にした学習サポートも実施しています。今は週2回、居場所の2階のスペースを使って行っていて、毎回5〜6名が参加をしています。居場所を卒業しても、学習サポートの利用に繋げて子どもたちを見守っていきたいですし、何かにつまずいた時に、しろいしきちを思い出して来てもらえるような場所でありたいですね」

4年目以降、しろいしきちは、日本財団の助成から児童育成支援拠点事業に切り替えて運営を継続予定できるよう準備中です。しかし、しろいしきちだけでは支援は行き届かないと、佐藤さんは考えます。
「地方は都市部と比べて選択肢が限られています。夜間帯の一時預かりやショートステイなどの支援も少なく、行き場のない子どももいます。様々な場所に居場所があることが理想だと思いますし、アスイクとしても、目の前のニーズに寄り添う事業をつくっていきたいです」
自治体と二人三脚で子ども第三の居場所を広げてきたアスイク。今後も地域ニーズに合わせた居場所づくりに期待したいと思います。
取材:北川由依
「子ども第三の居場所」に興味をお持ちの方は、ぜひ子ども第三の居場所プロジェクトページをご覧ください。