障害を持つ子どもが当たり前に暮らせる社会を目指して特定非営利活動法人うりずんの取り組み

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
こんにちは。国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。

子どもたちの経験値を0から1に

私たちの住む地域のどこかで、重い障害をもつ子どもたちと家族が24時間介護を続けながら暮らしています。人工呼吸器を装着すると、3時間おきあるいはさらに頻回の痰の吸引が必要で、経管栄養は一回あたり1時間以上かかることもあるなど、在宅で子どものケアをする家族は片時も離れずに見守らなければならず、睡眠も、家事やきょうだいにかける時間もままなりません。

2006年、栃木県宇都宮市の小児科医、髙橋昭彦さんは子どもの在宅介護をする家族のこういった状況を訪問診療を行うなかで知り、親が安心して休め、ケアの必要な子どもも友だちと楽しく過ごせる時間をつくりたいと、当時の日本にはほとんどなかった呼吸器をつけた子どもの一時預かり事業を行うことを決意。研究費助成事業を経て、2008年、自ら営むクリニック内に重症障害児のレスパイトケア施設「うりずん」を設立しました。

2012年には特定非営利活動法人に、2016年には利用者が増えたことから日本財団の助成を受けて新施設を建設し、移転。レスパイト(日中一時支援)事業に加え、重症心身障害児を対象とする児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型保育の新事業もスタートしました。この3月に相談支援事業を開始、将来的には訪問看護や宿泊可能な事業を展開していく予定です。これらの運営は、事業収入と、自治体からの委託事業と賛助会員の会費、全国の個人や企業の寄付から成り立っており、支援の輪を広げて、財源を確保していくことが今後の課題だといいます。

うりずんではいつも明るい笑い声が聞こえてきます。
「子どももスタッフも共に楽しく過ごしていて、支援する側とされる側という垣根を越えた関係。子どもたちの笑顔と成長に、こちらがいつも元気をもらっています」と事務局長の我妻さん。重い障害をもつ子どもはあらゆる経験がどうしても少ないのが現状です。そこで、経験値を0から1にしよう、1を積み重ねてその子の成長につなげようと、歌や踊り、散歩、季節の楽しい催しなどを用意しています。子どもたちは来た時よりも帰る時のほうが元気でご機嫌になっており、うりずんに通いだしてから明るく、よく話すようになったという子も。

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お庭で鯉のぼり。楽しい経験をたくさんしようね!

地域に開かれた交流の場「多目的スペースゆいま~る」

うりずんの玄関を入ってすぐのホールは、交流サロン「ゆいま~る」として地域に開かれ、様々なイベントが行われています。ここで不定期に家族向けのカルチャー教室、相談会などを行っているボランティア団体「わおん」は、特別支援学級に通う子どもを育てた親の会。支援が必要な子をもつ家族の先輩として何か役立てるのではないかという思いのもと集まった仲間です。

このほかにゆいま~るではハープ演奏会、バクバクの会(人工呼吸器をつけた子を持つ親の会)主催の映画上映なども開催。いずれも家族同士が交流できる機会になっています。最近始めたドリンクバー付きのカフェでは、うりずんに子どもを預けたお母さんが、ほっとするひと時を過ごしています。なかには初めて友だちとお茶ができたというお母さんも。

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子どもたちと読み聞かせボランティア。みんなに喜んでもららいたいとマジシャンになった男性ボランティアもいます。

地域と交流する「ふれあい祭り」

毎年秋には、地元の学校や企業など地域の人たちを巻き込む一大イベント「ふれあい祭りinうりずん」を開催。うりずんの施設を開放して、模擬店や障害者施設の販売品、関係団体の活動発表、地域企業協賛のワークショップなど様々なブースが出展。フェイスペイント、かぶりものなりきりコーナーは子どもたちに大人気です。中庭の特設ステージでは、地元の中学校の吹奏楽部の演奏、和太鼓、フラダンス、バンドなどで盛り上がります。障害のあるなしに関係なくみんなが一緒に楽しみ、子ども同士が出合い、遊ぶ機会になっています。

共催者には、親の会「わおん」や、障害児の親の会、ネグレクトやDV被害者家族の支援など、さまざまな形で子どもたちを支援する地域のNPO団体が名を連ねます。このイベントは、地域で生きにくさを感じている子どもについて知る、新しい出会いの場でもあるのです。

参加者の集合写真
地域の多くの人によびかけて、総勢405名が参加しました。

社会全体で子どもと家族を支えるために

うりずんは、長年にわたる医療的ケア児支援の経験を活かし、地域の福祉を担う人材育成にも力を入れています。2017年度には、喀痰吸引等研修や地域の専門職によるケース検討会などが行われました。

外出できる環境を整える負担、かかりつけ在宅医の不足、多職種連携、家族・きょうだいの負担、人材やサービスの不足・・・。今後ニーズが増えていく18歳以降の活動の場をどうするかについては、現状では見合う制度がないため、日中一時支援の定員枠をなんとか広げていくしかないといいます。医療的ケア児をめぐる環境には無数の課題が散在し、それらに対応するための様々な仕組みの構築が必要とされています。「それらひとつひとつに対して、うりずんとして提言を行っていきたい」と我妻さんは語ります。

障害があってもなくても、あらゆる子どもと家族が当たり前の生活ができる社会。みんなで支えあえる社会を目指し、うりずんはこれからも活動を続けます。

写真:研修の様子
介護職、保育士を対象に、2日間の喀痰吸引等研修を行いました。

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

特定非営利活動法人うりずん

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子

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