生きる土台をつくる、教育プログラム

写真:モンテッソーリ教育の玩具を使った図形遊び
埼玉県和光市の第三の居場所を訪問

2018年秋にオープンした、埼玉県和光市にある第三の居場所。全国でも珍しい保育所、一時・病児等そして、学童保育が一体となった多機能施設で、子どもたちの生きる力を育んでいます。特徴は、多様な専門家が提供する教育プログラム。子どもたちにはどのような変化が生まれているのでしょうか。

生きる力を育む学童保育

訪れた施設の母体は、社会福祉法人が運営する認可保育園。英語、体育、音楽など多様なプログラムを提供しています。
和光市から相談を持ちかけられる形で、第三の居場所 和光拠点として、動きはじめたのが今から約1年前、2018年秋のこと。生活困窮家庭の小学1年生から3年生を対象にした学童保育として、子どもたちに関わってきました。

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中嶋 雄一さん(和光拠点 教育統括)

教育プログラムづくりを統括するのは、かつて学研の幼児教育研究所所長を務めていた中嶋雄一さん。教育一筋の中嶋さんが専門性をもち、拠点で取り入れているのがモンテッソーリ教育法です。モンテッソーリ教育法では、子どもたちは生まれながらにして知ることに強く関心があり、環境を整えれば自発的に学び始める力を持っていると捉えています。

「子どもが自立し自信をもてるようになるには、自分の好きな物事をたくさん体験することが大切」と考えた中嶋さんは、多様なプログラムを提供してきました。

第三の居場所は「教育」と「生活」の場

もともと中嶋さんが理学部出身だったこともあり、拠点ではロケットづくりやプラネタリウムづくりなどの実験工作も頻繁に行われています。また、地域の方やプロを招いてのプログラムも充実。拠点運営者だけではなく、地域のみんなでみんなの子どもを育てる環境を整え、将棋や音楽教室(ピアノ指導)、野菜作り体験など子どもたちの好奇心を引き出しています。

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手作りの太陽系モビール

多様なプログラムを用意はするものの、強制はしません。ホワイトボードに1日の予定を書き、子どもたちが自ら考え行動できるよう促しています。
子どもたちと日々向き合っている保育士の角田未希さんは、こう話します。

「通い始めてすぐの頃、子ども達はホワイトボードに見向きもしませんでした。しかし、お迎えまでの時間を一緒にスケジューリングするうちに、見通しを持って生活できるよう日に日に変化してきました」

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角田 未希さん(和光拠点 保育士)

また第三の居場所は、「教育の場」であると同時に「生活の場」であるとの考えから、食事マナーや挨拶なども力を入れて指導しています。

「親でも学校の先生でもない大人と拠点で関わることで、挨拶などの社会性も身につけてもらいたいですね。ご家庭での習慣が強くでるシーンでもあるので、保護者の方にも一緒に考えてもらえるよう直接お話ししたり、毎月のおたよりで知らせることもあります」

子どもが前向きになれる「時」を貯める

好きなことを選べる環境の中で、少しずつ変わっていった子どもたち。生き生きとした時間を過ごすことで、「心は穏やかに、そして素直になっていった」と角田さんは振り返ります。また、子どもが変わることで、保護者にも変化が生まれはじめているそうです。

「『子どもを頼もしく思えるようになった』と話す保護者もいます。子どもから家庭が変わっていく様をこの一年で見てきました」

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モンテッソーリ教育の玩具を使って、立体図形を学ぶ

宿題をやらなかった子どもが、自ら取り掛かるようになった。
できないことから逃げいた子どもが、できないことに向き合えるようになった。
集団に自分から入っていけない子どもが、積極的に参加するようになった。

自分の好きなことを知り、夢中になる時間を積み重ねることが、子どもたちの前向きな心を育むことに繋がっています。

日々の積み重ねから子どもも家庭も変わる

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拠点では、子どもたちが興味を持ちやすいような学びの仕掛けを準備している

子どもたちの変化を目の当たりにした運営スタッフの皆さんは、今後、この学童保育モデルの拠点を、和光市内に増やしていきたいと考えています。

多様な大人と関わる中で、自信を育み、前向きな心を持つ子どもたちが増えたら、家庭も社会ももっと明るくなるはず。その一歩は、「認められる」「褒められる」といった日々の積み重ねから育まれていくものなのでしょう。
こうした小さな行動は、誰でもどこでもできること。大人の関わり方が変われば、子どもたちの伸びしろは私たち大人が想像しているよりどこまでも広がっていくことを感じさせてくれました。

取材:北川 由依

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