自分らしく学び、働く環境作りポケットサポートの取り組み

こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は認定特定非営利活動法人ポケットサポートの取り組みをご紹介します。

ポケット(空白)を支えたい

病気や怪我のため学校を長期欠席する子どもたちは全国に約5万人以上(学校基本調査より)。また、小児がんなどの疾患による長期入院を強いられる子どもの数は6300人という文部科学省の調査結果もあります(2015年)。入院や療養のために学習や社会経験の機会が不足してしまう子どもたちは、「勉強についていけないかもしれない」「学校に戻っても自分の居場所がないかもしれない」と復学の不安や悩みを抱えています。

彼らのそうしたポケット(空白)を埋めたいと、自身も子ども時代に慢性疾患で長期入院をした経験を持つ三好祐也代表が2011年に仲間と共に設立したのがポケットサポート。学習・復学支援活動を中心に、自立や交流支援、就労支援も行い、病気を抱える子どもたちが自分らしく、将来に希望を持って安心して暮らせる社会を目指し活動を続けています。

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毎週水曜の午後に事務所を開放し、通院後に集まって遊んだり勉強したりする場を提供しています。別室では保護者のための相談窓口も。

学ぶこと、働くことが生きる力になる

ポケットサポートでは、小児病棟や事務所での学習支援の他に、テレビ電話で自宅療養中の子どもの学習や、家庭や病床を訪問して個別の相談にも応じています。学習支援では、できるだけ笑う時間を増やし、「できた。分かった」と純粋に楽しむ時間をと心がけています。また、年に4回の夏祭りやクリスマスなどの交流イベントを開催。同じ環境の子どもたちが集まって一緒に楽しんだり悩みを打ち明けたり、保護者同士がクリスマスリースなどを作りながら気軽に話す機会を設けています。

大好きな家族や友達と離れて厳しい治療に向き合いながら入院生活を送る子どもたちにとって、算数の計算をしたり、英単語を覚えたりしている間は、病気から解放されて子どもらしく過ごすことができると言います。

ある小学生の女の子の言葉が、代表の三好さんの心に深く残っています。その女の子は小児がんと闘い、つらい治療の合間にも院内学級に通い勉強を頑張っていました。お母さんが「しんどいのになぜ勉強をするの?」と聞いたところ、その子は「だって、勉強しとる時は病気のこと忘れられるんやもん」と答えました。それを聞いた三好さんは「学ぶことは生きることなのだ」と心から思いました。子どもたちからもらったそうした言葉や思い出は、活動の糧となっています。

復学支援をした心臓疾患を持つ男の子は、高校卒業後、ポケットサポートのスタッフとして働いています。HPやブログを一手に引き受けて、メールで担当者とやりとりをしたり、テレビ会議に参加するなど、仕事をすることで社会とのつながりを持ち、「働くために今日も治療を頑張ろう」と、仕事が生き甲斐であり、やりがいになっています。

一方で、就労できず週に一度の通院が唯一の社会とのつながりになっている慢性疾患を抱える若者もいるなど、その現状を何とかできないものかとポケットサポートでは、就労を啓蒙するイベントを企画しました。

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スタッフとして画像加工をしているところ。得意分野を活かした仕事をしています。

障害者の就労啓発イベントを開催

「岡山で障害のない働き方を考える」と題して2018年12月に障害者の就労啓発のイベントを開催。参加者は、企業担当者、支援団体、保護者、教育・行政関係者など多岐にわたりました。

講演では、就労支援サービスを行う株式会社LITALICOが「障害のない社会を作るために」というテーマでB型作業所、発達障害、難病の大学生を支援した事例と、企業やハローワークの協力の必要性、当事者の声について発表を行いました。それを受けたシンポジウムでは「重い病気を抱える若者が働く環境作り」について三好さんや、岡山の倉敷で支援活動をしているNPO団体が話をし、病気を抱える子どもたち、若者が社会に出るために何が必要かを討論しました。

企業の認知が進まず、連携体制がなかなか構築できないため、NPOや自治体が啓発活動を進める必要性や、障害者でもできることを知ってもらう機会を持ちたいという話題も。「障害は人ではなく社会にある」という言葉も登壇者から出て、障害の有無に関わらず「誰もが働くことで役に立てる喜びを感じられる社会」にするための仲間作り、仕組み作りを継続していくことが話されました。

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イベントの登壇者たち。一番右はポケットサポートでエバンジェリストとして働くスタッフ。

希望を持って生きていける社会に

事務局スタッフとして働く奥田さんも小学校時代に免疫不全で入退院を繰り返していました。復学時の体験、その後の学校生活の経験から、学校現場で不安を抱える子どもたちの等身大の声を担任や保護者に届け、安心して相談ができる場を作るようにと心がけています。

「医療や教育はどうしても縦割りになりがちですが、医療機関や教育機関、行政と連携しながら、切れ目のない支援を提供していきたいです」と奥田さん。また、支援者の中には、医療者、教育者、当事者も数多く、学習支援ボランティアは現在40名以上。教育学部や看護師、養護、学校の保健室を目指す学生です。その育成や活動資金の確保にも努めています。

病気で入院中であっても、自宅で治療を続けていても、将来に希望を持って笑顔で生きていけるように。「病気の子どもたちが安心して過ごし、教育を受けられる地域や社会を作るため、多くの人たちと手を取り合いながら活動を続けていきたいと思います」
ポケットサポートは、子どもたちとその家族を温かく見守り、寄り添い続けています。

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宿題をする男の子。感染症対策の問題で学校にいけない子どもなど、自宅療養中の子どもにはテレビ会議で遠隔での学習支援をしています。

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

難病の子どもと家族を支えるプログラム

認定特定非営利活動法人ポケットサポート

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子

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