子どもの変化を見守り、成長を応援する「支援シート」

写真:工作で装飾された室内の様子
島根県雲南市にある第三の居場所をご紹介します。

支援シートを用いて、丁寧な支援をする拠点があるー。そんな話を聞きつけて訪れたのは、島根県雲南市にある第三の居場所。2019年春に開所した、新しい拠点です。
雲南で唯一の居場所を運営する、キラキラ雲南の土江博昭さんと佐藤一美さんが、お出迎えしてくれました。

雲南らしさに触れるプログラム

約2年間の準備期間を経て、雲南拠点は2019年春にスタート。現在は、市内の小学校に通う8名の子どもが利用しています。平日の学校が終わった後と土曜日の午後が、居場所での活動時間。遊びや勉強を中心に、畑での野菜作りや遠足など屋外での活動も盛んです。

また、地域の人との関わる機会をつくろうと、木工所での工作体験やフルート奏者、劇団で活躍する人を招いての芸術鑑賞会など、体験イベントの機会も豊富。
同市内にあるブルーシー・アンド・グリーンランド財団の海洋センターとも連携した、プール遊びや自然体験なども充実しています。雲南の文化や自然を満喫するプログラムを展開しているところが特徴的です。

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第三の居場所でお絵かきをする子ども達。

拠点を運営するのは、株式会社キラキラ雲南。市から委託を受ける形で、運営に携わっています。
居場所の運営責任者であり常任相談役の土江博昭さんは、前雲南市教育長。長年教育に携わってきた経験とネットワークを活かし、市の教育方針と連動した居場所のプログラム作りを推進してきました。

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土江博昭さん(雲南拠点運営責任者)

土江さんと共に居場所の立ち上げに関わり、現在は拠点マネージャーとして働くのが、佐藤一美さんです。佐藤さんは、土江さんの元教え子。東京の教育系出版社で働いていた佐藤さんに、「一緒にやらないか」と声をかけたことから、今に至ります。

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佐藤一美さん(雲南拠点マネージャー)

子どもの成長に合わせたサポートを可能にする「支援シート」

雲南拠点の中で最大の特徴は、一人ひとりの子どもに合わせて作成する「支援シート」にあります。「支援シート」は、佐藤さんがスタッフと協議を重ねて開発。居場所開設時から運用してきました。

PDCAサイクルの図。
PLANは、「支援シート1」を用いて年度計画を立てます。
DOは、「毎日の記録」を用いて記録します。
CHECKは、短期的なものと長期的なものがあります。
短期では、「毎日の記録」を毎日のスタッフミーティングで共有し、話し合います。
長期では、子どもの面談を行い、「面談記録」と「毎日の記録」をもとに「支援シート2」を作成し、その子の成長を確認します。
このシートをもとに、小学校との意見交換会をしたり、スタッフ会で共有したりします。
そこで出てきた意見などをACTIONとして実行に移します。
まず「支援シート1」を用いて年度計画を立て、「毎日の記録」と「支援シート2」を使い短期・中期で子どもの変化をチェックしながら、成長に合わせた丁寧なサポートを実現しています。
画面イメージ
「支援シート1」の見本。保護者と子どもと面談をし、個別に年度計画を立てます。
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「毎日の記録」の見本。「健康」「コミュニケーションできる」「自分とうまくつきあえる」「学ぶ力がある」「チームで取り組める」等の観点をベースに、スタッフが記録します。
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「支援シート2」の見本。「毎日の記録」から印象的なエピソードや言動を抜き出し、評価。子どもや保護者との面談や学校との意見交換時に使用します。

「支援シート」を導入した一番のメリットは、「誰でも客観的に子どもの成長を確認できることにある」と佐藤さんは話します。
子どもとの面談時、シートに書かれた具体的なエピソードを用いて話をすると、子ども自身が成長を実感しやすく目を輝かせている様子を何度も見てきたそう。また、保護者にとっても、普段見えない子どもの様子を具体的に知る機会になり、居場所と家庭で目指す子どもの姿を共有する機会になっているようです。

写真
居場所のあちこちに飾られた、手作りの装飾。ここが楽しく、居心地の良い空間であることが伝わってきます。
絵画
居場所を利用する子どもが描いた絵。キラリと光るものを感じ取ったスタッフの計らいで、プロの画家に絵を教わる時間がプレゼントされました。

とはいえ、「支援シート」の運用もまだまだ模索中。
シートへの記入は個々のスタッフの観察力が求められます。子どもへの接し方を含め、スタッフ研修で目線合わせをしていく必要があります。また、週に1~2回勤務のスタッフも多い中で、一人ひとりの子どもの状況を共有する時間をいかに確保するかは現時点での課題となっており、今後も検討していくことになりそうです。

ツールを用い、一人ひとりにあわせた個別支援を実現

写真:絵本を確認している様子
第三の居場所が子ども達にとって安心・安全な環境であるよう、スタッフは日々試行錯誤しています。

第三の居場所が子ども達の自立する力を育む環境になるためには、愛情いっぱい子ども達を迎えることと同時に、「支援シート」のようなツールを開発・運用し、効果測定することも欠かせません。

全国に広がる拠点同士の情報・ノウハウ共有をしながら、日本財団ではこれからも子ども達にとって、安心・安全な居場所を広げていきます。

取材:北川 由依

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