【現地レポート】千葉県鋸南町、閉じる花農家 学生がボランティア

ガラスがあったはずの屋根からは青空が見えていました。2019年9月の台風15号で被災した千葉県鋸南町。毎年美しいカーネーションを育てていたガラスハウスで、大学生が黙々と作業にあたっていました。

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大学生が被災したガラスハウスで撤去作業にあたる様子

鋸南町は激しい暴雨風に見舞われた結果、多くの家屋や建物が壊れ、町内の農業用ハウスの損壊は167棟に及びました。さらに10月の台風19号も追い打ちをかけました。

被災した農家を支援しようと、日本財団学生ボランティアセンター(通称:Gakuvo)が参加者を募ったところ、2月5日の活動に明治大学のボランティアサークルが手を上げ、21人が現地に入りました。

この日の現場は川崎周治さん(72)と妻礼子さん(70)の畑。2人は40年以上にわたりカーネーションを栽培してきた農家でした。丹精込めて育てたカーネーションは東京などの卸売市場に毎年4万本ほど出荷され、「青山フラワーマーケット」といった有名花屋にも並んでいました。

台風でハウス損壊、再開を断念

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栽培していたカーネーションを一覧にした紙を見せる川崎礼子さん

しかし、昨年の台風でカーネーションを屋内栽培するガラスハウスが全壊。修復に数千万円の費用がかかることや高齢であることを考えて、川崎さん夫妻はカーネーション栽培をやめることを決めました。

カーネーション畑には、常に畑を湿らせておく水源を確保するために、コンクリート板とそれを支える鉄の杭が埋まっていました。栽培をやめたことにより、それらを取り除いて畑を更地に戻す必要がありました。そこで、学生たちがその作業を担うことになりました。カーネーション畑だった300平方メートル余りの土地は平らに整えられていきました。

畑の整備「学生が助けてくれた」

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大学生が畑に埋まったコンクリート板を取り除く様子

「被災して困っている人のためにボランティア活動に来ているのに、活動をしている自分たちのほうが元気をもらっています」。ボランティアに参加した明治大学1年の駒井一斗さん(19)はそう話します。鋸南町でのボランティア活動は初めてですが、昨年の台風被害では、茨城県大子町でも、浸水被害にあった家屋の掃除などのボランティア活動に参加しました。

駒井さんは復興に大事なのは、「何度も人が訪れること」と感じているそうです。その理由を「何度も人が集まれば、被災状況が多くの人にも伝わり、風化しにくくなります。人と人との交流にもつながると思います」と話しました。

学生たちの活動を受けて礼子さんは「畑の整備は家屋ではないから、どうしても後回しになりがちな作業でした。学生のみなさんのボランティア活動はすごく助かりました」と目を細めていました。

ブルーシート、とれない家屋多数

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被災してブルーシートが屋根にはられた川崎さん夫妻の2階建て住宅

一方で、被災から5カ月経った2月時点でも、屋根にブルーシートをはった家屋が目立ちます。

今回の活動にスタッフとして同行したピースボート災害支援センターの関根正孝さん(38)は、鋸南町の現状を「被災者は今、生活はできますが、被災前の水準には戻っていません。屋根がブルーシートのため、雨漏りをしてカビが生えるといった潜在的な困りごとは多いはずです。継続的な支援が必要と思っています」と話しました。


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