一斉休校から3カ月、切らさなかった家庭とのコミュニケーション

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、私たちの日常は様変わりしました。緊急事態宣言は解除されたものの、いきなり全てが元どおりになるわけではなく、新しい生活様式に合わせた行動が求められています。
3月の一斉休校から約3カ月。第三の居場所ではどのような変化があったのでしょうか。兵庫・尼崎拠点の動きをお伝えします。

3月:突然の一斉休校に戸惑う

年明けから徐々に増えていた新型コロナウイルス感染症のニュース。尼崎拠点では、予防策として、手洗い・うがいを徹底していました。当時、尼崎市内の感染者は0。まだウイルスの驚異を実感できていない時期でした。しかし3月2日、いきなり一斉休校が発表されます。
市内の感染者が0だったこともあり、初めはスタッフも子どもたちも、「春休みが早く始まった」くらいに受け止めていました。そのため尼崎拠点では、学校の長期休暇時と同様の対応を取り、午後から夜まで開所しました。

3月後半にかけてウイルスは一気に広がりを見せていきました。そのため、まもなく卒業を迎える6年生を送るイベントは、規模縮小して開催しました。

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6年生を送るイベントで、1年間を振り返る映像やイベントに来ることができなかった友だちやボランティアさんのメッセージを見る子どもたち。
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くす玉一個一個に、1年の思い出が入っている。すべて割ると「1年楽しかったね」というメッセージになる。

4月:変わる子どもたちの生活

緊急事態宣言が出され、通常通りの活動をすることが難しくなりました。「閉所も考えたが、家庭環境を考えると予防した上で受け入れた方が良いだろう」と、尼崎拠点は受け入れを継続することを決定。安全に配慮した運営体制に変えて、開所を続けました。
子どもたちの利用は、密を防ぐため朝から夕方までの三交代制に変更。2時間ごとに上限3人と決めて、安心して来所できる環境を整えました。

様々な変化がありましたが、子どもたちも状況を理解し受け入れてくれました。しかし、わずか1日2時間の来所でやりたいことをやりきるのは難しく、気持ちの切り替えができない様子も見られたそうです。
他にも、おやつと夕食の汁物は拠点で調理していましたが予防のため調理済みのものに切り替えました。また月1~2回開催していた子どもたちとの料理イベントも見送るなどの対応を取り、安心して利用していただけるよう努めました。

5月:先の見えない不安

当初GWまでとされた緊急事態宣言が延長されると、いつまで続くかわからない不安を口に出す子どもたちが増え、保護者からもSOSが届くようになっていきました。同時に、生活面の乱れや学習面の遅れも目立つようになります。
第三の居場所を利用する子どもたちの中には、一人親世帯や低所得などを背景に、新型コロナウイルス感染症によって変わる環境変化に対応しきれない家庭も多くありました。そのため尼崎拠点では、できるだけご家庭とのコミュニケーションを切らさないように努めました。

大きな手助けとなったのが、食事を無償提供する団体の存在です。近隣にある子ども食堂によるお弁当の無償配布に加え、5月からはUber Eatsも支援に乗り出しました。Uber Eatsは、休校で給食がなくなり、食事をする機会が減っている困窮家庭に向けて無償提供する取り組みをスタート。日本財団が取り組む難病児とその家族を支援する施設と合わせて、計1万食が届けられています。尼崎拠点はゴールデンウィーク後から利用を開始し、拠点に届けられた食事を希望する家庭にスタッフが届けることで、保護者や子どもと会話する機会にもなりました。

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Uber Eats から食事を無償で支援いただいた。

5月後半には、緊急事態宣言が解除。長らく休校していた学校が再開するにあたり、再び運営体制を見直しました。分散登校時期は、小学校の登校時間に合わせて、午前と午後の二交代に変更。午前に学校へ行く子どもは、午後から第三の居場所へ。学校が午後からの子どもは午前を第三の居場所で過ごすなど、柔軟な対応で受け入れしました。

平常時からコミュニケーションを

世界的な感染症拡大という経験のない自体にも、迅速な対応で貧困家庭の子どもたちを支援してきた尼崎拠点。運営体制を変更しながらきめ細やかなサポートができた背景には、日頃のコミュニケーションの積み重ねがあります。

例えば生活面。尼崎拠点では平時から体調チェックをして、食事状況や睡眠時間などを把握してきました。また、日頃から保護者が料理している話が出てこない子どもが居ることから、「休校で給食がなくなったために、栄養補給が十分にできない子どもが出るのではないかと推測した」と拠点マネージャーは話します。こうした情報から、尼崎拠点はUber Eatsの支援にいち早く手を上げ、各家庭に食事を届ける体制を整えることができるようになりました。
実際、スタッフが食事を届ける際、保護者に話を聞いてみると「1日1食になっていたから助かる」と話す家庭もあったと言います。一人親家庭で、非正規雇用の保護者の生活事情を詳しく知っている第三の居場所だからこそ、速やかに対応できた代表的な事例です。

楽しみに通う居場所

学校に行くことができない。いつもの日常が送れない。マイナス面も大きかった休校ですが、一方で、「子どもたちにとって、第三の居場所がどういう存在かを教えてもらう機会にもなった」と拠点マネージャーは話します。

就労のため保護者が日中ご自宅にいないために、仕方なく第三の居場所に行くのではなく、子ども自ら「第三の居場所に行きたい」と楽しみに利用してくれている様子が、心に残ったそう。「尼崎拠点には大学生スタッフがいて遊び方も上手なので、子どもたちはお兄さんお姉さんのように慕っていること」、「自宅でも学校でもできない体験や素の自分をさらけ出せるところ」が、子どもたちにとって居心地の良さになっているのかもしれないと考えています。

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第三の居場所での創作活動。色紙を切り貼りしてデザインしたカラフルな鯉のぼり。

新しい日常への期待

緊急事態宣言の解除を受け、第三の居場所も少しずつ日常を取り戻しつつあります。
「6月以降は、子どもたちが楽しみになることをたくさんやりたい。昨年度までと同じようにはできないかもしれませんが、キャンプや旅行も実施できる方法を考えたい」と話す、拠点マネージャー。新しい日常に対応しながらも、子どもたちと楽しい時間を過ごせるよう準備しています。

新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、3月以降、第三の居場所も対応に追われました。想定通りに進まないこともありますが、子どもたちの安全・安心な居場所を守ろうと、各拠点それぞれの状況に合わせたベストな選択をしながら運営しています。
緊急事態の中でも、子どもたちや保護者にとって、今後も第三の居場所が頼れるところであるよう、運営していきたいと思います。

取材:北川 由依

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