子ども食堂に“まかないさん”として関わる。大人にとっても居場所になった、長野県御代田拠点。

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御代田拠点では週5日以上、子ども食堂を開催し、食事提供をしています。

今回ご紹介するのは、長野県は御代田町にある第三の居場所です。運営するのは、齋藤百合子さん。御代田で生まれ育った齋藤さんのご実家を借り受け、2018年より第三の居場所として運営しています。

縁側のように誰もが立ち寄れる空間

御代田拠点は、学習塾を母体とした居場所として2018年に立ち上がりました。もともと小学生〜高校生を中心に、知的障がいや学習障がいのある子ども、家庭に困難を抱える子どもの学習支援をしていたことから、第三の居場所運営に関心を示しました。

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食事提供前後に、学習支援を実施しています。

齋藤さんが第三の居場所運営を決めた理由の一つが、「常設の子ども食堂を運営したい」との考えでした。

「まだ『子ども食堂』という言葉がなかった頃から、学習塾ではお腹を空かせた子ども達におやつや軽食を提供していきました。でもあくまで塾の延長線上です。偶然にも塾に集まる子ども達は、不登校、虐待、いじめを経験していたり、ひとり親家庭だったりと何かしらの困難を抱えていました。どんな居場所があったら、子ども達のためになるだろうと考えたのです」

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齋藤さん。1980年から学習塾で教えているベテラン先生。

辿り着いたのは、子どもの食堂の運営。しかも、週1回や月1回のようなイベント要素の強い単発の食堂ではなく、常設の子ども食堂です。

「子ども一人ひとりと向き合うものにしたかった。回数が少なく一度に大勢の子どもが集まると、どうしてもイベントになってしまいます。だから私たちは少人数でちゃぶ台を囲むスタイルの子ども食堂に決めました。日本財団の支援を受けながらなら、やれるんじゃないかと思ったんです」

地元の食材をふんだんに使った家庭料理

子ども食堂は月曜から土曜日(隔週)までオープン。新型コロナウイルス感染症の対策のため、現在は平日7名、土曜は15名までに人数を減らして運営中です。

特徴的なのは、子ども達も一緒に料理をすること。炊事、掃除をできるようになるため、当番制で毎日2名ずつ台所担当をしています。

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地元の方々から提供された野菜がたっぷり入った料理。おいしそうです。

暮らしの中の一コマとして当たり前にある子ども食堂を目指しているため、料理も行事食ではなく家庭料理が中心です。

人気メニューは「ちくわの蒲焼」や「鶏の照り焼き」。そこに頂き物の食材を使った一品と合わせて、食卓に並びます。家庭の食卓を目指しているため料理には「手をかけないようにしている」そうですが、たくさん食材を頂くので、知らず知らずのうちに品数が増えてしまうんだとか。

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ちゃぶ台をみんなで囲んで、食事します。

「土曜日には、子ども達と一緒に料理を作っています。スイカ割り、餃子づくり、南瓜の煮物など季節のものを調理しています。子ども達と作ると、大きな餃子ができたり、割ったスイカがボコボコになったりして、楽しいです。見栄えの良さも大事ですが、私たちは決められた形に嵌め込むのではなく、子ども達のやりたい気持ちにフォーカスして好きなようにさせています」

大人の居場所と仕事にもなる“まかないさん”

御代田拠点の運営は、大人の居場所づくりや仕事づくりにもつながっています。

「ここは、ひとり親家庭だけではなく働く保護者のサポートになっています。拠点に子どもを連れてきたら、仕事の後に買い物や調理、片付けの手間がなくなるので助かるとの声も多いです。また仕事の後ほんの数時間ですが、一人の時間を持つことができるのも、助けになっているようですね」

過去にレストラン経営をしてシェフとして活躍していた方、給食センターで働く方、地元のお母さんなど、調理力のある方々がボランティアとして関わってくれているので、味は抜群。毎日食卓では「おいしい」、「おかわり」の声を次々に聞くことができます。

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みんなで食べるご飯は、美味しいね。

また、ボランティアの他に、“まかないさん”として利用者の保護者を調理スタッフとして採用しています。
「“まかないさん”として働く方には、時給をお支払いしています。子ども達が拠点で学習や食事をする間、保護者は“まかないさん”としてお金を得ることができる。この仕組みをつくれたのは、日本財団の支援があったからです」

新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、職を失ったり休業を余儀なくされたりした保護者もいました。しかし拠点があったことで、「子どもの食事の心配をせずに済んだ」、「食材をもらえたので助かった」との声が届いています。

第三の居場所として運営を始めて約2年。もともとある学習塾との連携もうまく回り始め、御代田拠点は子どもにとっても大人にとっても居場所となる空間に育っています。日本財団の支援は3年間。それまでに「自走していける体制を整えたい」と語ってくれました。

取材:北川 由依

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