当たり前のことを誰もができる社会をフラットの取り組み
こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は社会福祉法人フラットの取り組みをご紹介します。
格差のないフラットな社会作り
千葉の白井市で社会福祉法人フラットが運営する地域交流の拠点、フラットヴィレッジ。ヤシの木が植えられた前庭を抜けると、そこにはアメリカ西海岸のリゾートをイメージした開放感あふれる建物が。赤ちゃんからお年寄りまで誰もが利用できるカフェを中心に、レンタルスペースや子どものための自習室、障害をもつ人のための就労施設、児童発達支援施設が併設されており、就労施設ではホールでの接客やキッチンでの調理など、みんな自分のやりたい仕事を選び、活き活きと働いています。
「みんなが、ここで働いていることを誇りに思える場所を作りたかった」とフラットの理事長、林晃弘さんは言います。フラットでは、団体名にあるように、すべての人に格差のない「フラットな社会」を作ることを目指し、児童から成人の活動場所の提供、就労支援、相談、グループホーム運営などの障害福祉サービスを提供。障害のある人が障害を感じることなく地域で自分らしく生きていくためのサポートをしています。
障害児、障害者向けに地域生活支援サービスを始めた2006年の設立当時、市内に福祉の事業所はなく、障害をもつ人たちが地域で暮らすために必要なサービスや支援を次々と作り上げることから始め、事業を広げていきました。
「一般の就労支援施設の、通所する人たちが一か所に集められてやりたいことに選択の自由がないことに違和感を感じるのです」と林さん。当たり前のことが当たり前に誰もができる社会の実現のために。障害のあるなしに関わりなく多様な人たちが共に生きていける社会を作りたい。そんな思いを軸とした活動を実践してきました。今ではそうしたフラットの考えに共感して医療的ケア児の受け入れを始めた事業所が生まれるなど、他の事業者に刺激を与える存在になっています。
地域の連携拠点フラットヴィレッジ
もともと白井市には人気の場所や観光地など、目立つ特色がありませんでした。地域の財政にゆとりがないため児童館などの子どものための放課後の居場所が少なく、マンションのエントランスで勉強する子どももいたそう。
また、人工呼吸器や経管栄養などが必要な医療的ケア児とその家族は社会との接点が少なく、閉ざされた状況にあることがわかってきました。「正直、福祉の仕事に就くまで医療的ケアの方に出会うことが全くなかった。医療的ケアの方々は社会に出て過ごすという当たり前のことができていない。外に出るのが簡単ではないならば、地域の人に来てもらって交流ができる場を作ろうと思いました」と林さんは語ります。
これら地域の課題や福祉の問題解決のための地域の連携拠点をと考えていた矢先に、日本財団の助成を受けられることになり2018年4月にフラットヴィレッジが完成します。ヴィレッジはいまや多様な人が訪れる場となり、子どもが学習スペースに集い、ママ向けイベントなども開催。地域の親子ためのサロンでは、障害児と健常児が一緒にハロウィンなどの季節にちなんだ工作やリトミックなどを楽しんでいます。
障害児と地域の人が触れ合う機会を
毎年恒例の地域交流イベント「きらりフェスタ」を2019年9月に開催し、1,300人が参加する大盛況。初の試みとして発達障害者が見ている世界を体験できるVR(バーチャルリアリティ)、嚥下障害がある人でも安心して食べられるケーキの試食をしました。会場では、障害者と共にお笑いライブを観覧し、チョウの羽を工作するワークショップに医療的ケア児と健常児の親子が一緒に参加するなど、自然な交流が生まれます。「思っていたよりも健常者と変わらないのね。こんなこともできるんですね」との参加者の声も。
12月に行った医療的ケア児に関わる多職種勉強会には行政、医療、福祉、教育、保育など幅広い職種の参加者が。認定NPO法人うりずんの髙橋昭彦理事長、認定NPO法人Ubdobeの加藤さくらさんを講師として招き、加藤さんからは家族の立場のお話を、髙橋さんからは医療的ケア児を地域で支える仕組み作りとその取り組みが紹介されました。今後、医療的ケア児のための連絡協議会をこの地域で立ち上げて勉強会を続け、政策提言もしていきたいとフラットは考えています。
フラットのグループホームでは、お風呂に入る時間も寝る時間も決められていません。私たちと同じように入りたい時に入り、その日の疲れや翌日の予定にあわせて寝る。そのために人員を増やすなどの対応が必要になりますが、初めてフラットに来た利用者や家族からは「これが普通なんですよね」という言葉が。自分で選択をする自由を得ることで人生に膨らみが生まれるのです。
「障害をもった瞬間にあなたはそこしかないからねと言われてしまう社会は人生イコール先がないと思ってしまうし、そんな社会は私たちと差がありすぎる。その差を縮めたい。それがこの活動をしている理由ですし、一番の目標です」。と林さん。
当たり前のことを誰もができる社会を目指して、フラットの挑戦は続きます。
日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。
難病の子どもと家族を支えるプログラム
社会福祉法人フラット
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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子
日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。