子どもの「やってみたい」を実現。沖縄・うるま拠点の企画書づくり

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企画書づくりを進める子ども達の様子。

今回ご紹介するのは、沖縄・うるま市にある拠点です。うるま拠点では、子ども達の「やってみたい」をスタッフが後押しし、様々な願いを叶えてきました。

チャレンジを諦めている 子ども達

うるま拠点は、現在15名の子どもが利用。この事業は主に小学生低学年を対象としていまが、多子世帯が多いことからここでは4歳から中学3年生までを受け入れています。通うのは、経済的な課題や放課後の居場所がない家庭の子ども達です。

「複雑な家庭環境から、物事を諦めがちな子どもも多い」と話すのは、うるま拠点の平林さん。2019年の拠点開設当時から子ども達を見守ってきました。

「拠点に通う子どもの多くは、自己肯定感が育まれないまま成長しています。家庭環境により諦めざるを得ない経験が多いことから、『どうせ』が口癖になっている子どももいます」

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寝っ転がり、子どもをお腹の上に乗せて、本の読み聞かせをする平林さん

やりたいことにとことん付き合う

小さいことでもいいから、できた経験をしてほしい。そう思い、拠点スタッフは「子ども達のやりたいことにとことん付き合う」ことを決めています。

例えば、ある雨の日。「なんで外で遊んだらいけないの?」と子どもが聞いてきたことがあるそうです。「濡れるから」「風邪を引くから」と返答してしまいそうですが、うるま拠点ではやりたいことをどうしたらできるのかを考えます。

「立ち止まって考えてみると、雨だから外で遊んだらダメな理由はないんですよね。私たちは安全に遊べる準備をすることにしました。怪我をしないよう事前に危険物は退けておく。雷がなったら部屋に入るなどのルールを決めて、雨の日の外遊びをしました」

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雨の中、泥んこになって遊ぶ子ども達。とても楽しそうですね。

またある時は、「ノネズミを飼いたい」と相談されました。拠点では食事も提供していることから、衛生管理面から飼うことができません。一度は「無理だよ」と返答したそうです。しかし、願いを叶えるため「他にアイデアはないか」を子ども達と一緒に考えることにしました。

「そこで出てきたのが、秘密基地で飼うでした。拠点の近くに、子ども達が見つけたいい場所があるそうで。『雨風はしのげる?』『エサはどうする?』とリスクを一つずつ確認し、飼えるかを検討していきました」

こうした丁寧なやりとりの中で、子ども達は想定できる全てのリスクをクリア。無事ノネズミを秘密基地で飼うことができました。

思いを言葉に、言葉を文字に

子ども達の「やりたい!」気持ちに寄り添い、実現に向けたサポートをしてきたうるま拠点。最近では子ども達の成長を感じ、もう一歩踏み込んだ取り組みを始めました。それが「企画書づくり」です。

「拠点に通う4割の子どもが不登校です。そのため書くことに抵抗がある子どもがほとんど。でも、やりたいことをやるには、できる方法を模索し、大人を説得しなければなりません。このプロセスは、社会に出た時にも必ず役立ちます。そこで、口頭でやりとりしていたものの文書化に取り組み始めました」

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一つひとつ言語化し、最終的に出来上がった企画書。

企画書といっても、拠点スタッフがフォーマットを提供するわけではありません。裏紙などに自由に、「やりたい理由」「やる方法」などを書きます。初めて作った企画書の内容は、「ニワトリを飼いたい」だったそう。

「最初は『なぜ飼いたいのか書いてみて』と言っても、『飼いたいから』と理由になっていない理由が書かれました。だから『なぜ飼いたいの?』と掘り下げて、企画書を書き直してもらいました」

その後も、スタッフと子ども達の間では何度も企画書のやりとりがされました。「飼いたい理由」「ニワトリを飼う時注意すること」などを一つずつ言語化し、文字にする訓練になっています。

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ホワイトボードを使って、スタッフは子ども達の思いを整理するお手伝いをしました。

「本気度がないと、企画書をつくってまで飼いたいとは思いません。企画書づくりは、子ども達にとっても気持ちを整理する機会になっているんですよ」

飼うための準備も念入りに進めます。スタッフは、地元の養鶏場へ見学に行く機会も用意しました。

「ニワトリを飼うために、どんなところに注意する必要があるかを、本物の養鶏場へ学びに行きました。訪問のアポ取りから子ども達主体でして、どこの誰かわかるように名刺も作りました」

社会に出ても通用する力を身に付ける

企画書づくりを終え、今後は養鶏場見学なども実施予定。「ニワトリを飼いたい」という願いを叶えるため、一歩ずつ進んでいます。
今後、うるま拠点では、プロの大工さんに習ってニワトリのゲージを手づくりしたり、最終的にニワトリを食べるかどうかを考えたりする機会も設け、木育や食育にもつなげる予定です。

「拠点に通う不登校の子どもの中には、集団行動が苦手だから将来就職せずに起業すると言っている子どももいます。しかし、起業するにしても自分のやりたいことを形にし、周囲を説得していく力は必要です。拠点での日々の遊びの中からも、社会で生き抜く力を身につけていって欲しいですね」

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ニワトリの飼育が実現したら、毎日拠点で卵が生まれるかもしれませんね

子ども達が何か「やりたい!」と言った時、「無理だね」と諦めてしまうのではなく、どうしたらできるのかを一緒に考えて後押しする、うるま拠点のスタッフ。これからも、小さな成功体験の積み重ねることをサポートし、子ども達は自己肯定感を育んでいきます。

取材:北川 由依

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