ツリーハウスがつなぐ、21人の沖縄の子どもたちの「もう1つの家」

NPO法人沖縄青少年自立センター「ちゅらゆい」の平林勇太さん。画像上側にメッセージ「子どもが子どもでいれる場所」

日本財団へ集まった寄付によって、子ども第三の居場所の沖縄県うるま拠点に設置されたツリーハウス。ロープをよじ登ると現れる1.5畳ほどの小さな空間は、さながら子どもたちの秘密基地のようです。

ふとしたときに集まり、子どもたちは思い思いの時間を過ごします。内緒の相談をしたり、ゆっくり漫画を読んだり、外で遊ぶ友だちをぼんやり眺めたり─。

うるま拠点では、これまでは外でみんなで遊ぶ子と、室内で遊ぶ子で別れてしまっていました。しかし、建物と庭のちょうど間に位置するツリーハウスが、子どもたちが交じるきっかけになったそうです。

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ツリーハウスで子どもたちが過ごす様子

「ツリーハウスができたことで、室内で遊んでいた子どもがツリーハウスで本を読み始めました。ツリーハウスからはみんなが遊んでいる様子がよく見えるんですね。

『一緒に遊んでみるか?』と声をかけると、いつもなら断るのに、『やってみる』と集団遊びの輪の中に入っていきました。結局、泣かされたんですけど(笑)。

でも、それもいじめられたわけではなく、自然に遊んでいた中での出来事なので、良い経験だと思っているんです。その後は何度も集団遊びに入って来てました。

いろんな経験をした上で最終的に子どもが『選択』をできるようにしてあげる。それが私たちの役目なので」(平林さん)

放課後の居場所がない子どものためのもう1つの家である、子ども第三の居場所。そのうるま拠点にできた小さな空間は、子どもたちに少しずつ変化をもたらしはじめています。

うるま拠点を運営するNPO法人沖縄青少年自立センター「ちゅらゆい」の平林勇太さんから、寄付者の皆さんへ。「ありがとう」のメッセージが届きました。

必要な子どもたちに支援が届かない沖縄の現状

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沖縄県うるま市勝連城跡からの景色

沖縄県の貧困率は29.9%と、全国平均(13.5%)の2倍以上。高校、大学への進学率もそれぞれ全国ワースト1位。「沖縄の抱えている課題は根深い」と、平林さんは語ります。

「山形大学・戸村准教授の調査がはじまった1992年頃から、沖縄の貧困率はずっと継続して30%近くを推移しています。また、貧困率が1位であるにもかかわらず、生活保護や就学援助を受けている家庭の割合はそれぞれ5位と10位。1位であるべきなのにそうではありません。制度があっても使えていないのが沖縄の現状なのです」(平林さん)

少子高齢化が叫ばれる世の中で依然として1.82%という高い出生率の沖縄。一方で、「ひとり親」「多子世帯」も多く、夜遅くまで1人で留守番をしなくてはいけなかったり、きちんとした栄養バランスの食事をとれていなかったり、やりたいことをあきらめなくてはいけなかったり。一部の子どもたちにとって困難な状況が生まれています。

NPO法人沖縄青少年自立センター「ちゅらゆい」は中高生を中心に引きこもりや不登校などの若者支援を行っていくなかで、より早期の小学生を対象にした支援の必要性を感じていました。

そこで、沖縄県が本格的に子どもの支援に乗り出したタイミングで、日本財団の事業を請け負い、子ども第三の居場所をうるま市に開設するに到ります。

口癖だった「どうせ」が「やりたい」に変わる

事業を統括することになった平林さんは、市や地元の小学校と連携して子どもたちの状況を聞き、さまざまなルートで家庭にアプローチします。結果的にアプローチしたすべての世帯とつながり、2021年5月現在、うるま拠点に通う子どもは総勢21名です。

不登校の子どもも多いうるま拠点では、学校のようにきっちりとカリキュラムを決めるのではなく、あえて時間やルールも子どもの自主性に任せることに。自分で考えて決める。それで失敗したら、また考え直す。それを繰り返していくなかで、子どもたちは成長していくのだと、平林さんは考えました。

そして、子どもたちと接する際に平林さんが特に重視しているのが「遊び」です。

「遊びのなかでも『Sケン』や『王様とり』のように集団で楽しむ、昔ながらの遊びはすごく大事にしています。遊びの最中にトラブルが起きたときに、どう解決するか。人との関わりは遊びのなかで学ぶことができます。

ほかにも、拠点ではベーゴマや泥団子づくりが流行っています。うちは指導員に若いメンバーが多いので、指導員も未経験の遊びが少なくありません。だから、まずは指導員が遊んでみて楽しむんです。指導員が泥団子づくりに夢中になっていると、子どもが自然と『自分もつくりたい』と駆け寄ってくるんですよ」(平林さん)

大人も一緒になって遊び、そのなかで学び、成長していく。その中心にあるのは、子どもが「自分で決める」ということ。そして決めるための「選択肢」を用意してあげるということ。そのために、うるま拠点ではさまざまな企画を実践しています。

「最初、本当に印象的だったのが、子どもたちがみんな『どうせ』『どうせ』と口癖のように言うんです。きっと、これまでいろんなことをあきらめてきたのだろうと思います。

サッカーを本当はやりたいけど、他のみんなと同じように道具を揃えられなかったり、親御さんの協力が難しかったり。いつの間にか『どうせやれない』とあきらめてしまっていた子がいました。でも、昨年FC琉球の方が交流で訪れてくださったのですが、すごくうれしそうな顔でサッカーをしていました。『どうせやれない』が『やってみたい』に変わるための後押しは意識的にやっていきたいと思っています。

最近では、お金プロジェクトといって、施設内のオリジナルの通貨をつくりました。施設内で子どもが自らアルバイトを企画して、お金を稼ぐのです。稼いだお金で駄菓子や寄付でいただいたおもちゃや雑貨を買うことができます。

小説を書いて売ったり。絵を描いて売ったり。先日は施設で鶏を飼いたいというので、全員から50円分ずつ集めて出資する、ということも決めました。そのお金はそれぞれが施設内のアルバイトで稼ぐんです。最近は『本当にやりたいのなら企画書を持って来なさい』と言っています。驚くことに、ちゃんと持ってくるんですよ。

やりたいことがある。そして、それに向かっていくことができるようになったのは、子どもたちの成長だと思います」(平林さん)

子どもたちに「決める」ための力と選択肢を

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うるま拠点に建てられたツリーハウス

少しずつ、確実に、変わっていく子どもたち。今回建てられたツリーハウスも、ニス塗りや組み立てなど、子どもたちができる範囲で手伝いをしたそうです。

「一生懸命やった子どもほど、ツリーハウスに愛着を感じている」と平林さんが語るように、子どもたちはやりたいことに向かっていく、楽しさ、喜び、に気づきはじめているようです。

新しくツリーハウスが建ったように、今後も子どもたちの「やりたい」とともに、うるま拠点も、そこで働くみなさんもまた、成長していくのかもしれません。

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ログハウスの塗装を手伝う様子

最後に、平林さんから寄付者の皆さんへメッセージをいただきました。

「うるま拠点で働きはじめてから2年。子どもたちから学ぶことも多く、私自身勉強させられました。

私たちが思っている普通と、ここに通うような子どもたちのそれには大きな違いがあります。でも普通には明確な基準があるわけではないし、相手の普通を否定しても何も生みません。

だからこそ、子どもたちに選択をできるようにしてあげるべきだと思いました。最終的に選ぶのは自分。でも選べないのはきついですよね。私たちはその選択の礎になる経験や体験を子どもたちに与えたいと考えています。

さまざまな方からの寄付のおかげで、うるま拠点でも子どもたちにいろいろな経験をさせてあげられるようになりました。それらが人材育成の手助けになっていると感じます。

うるま拠点に通うような子どもたちの状況は見える人には見えるし、見えない人には見えないものです。そして、それは沖縄に限った話ではありません。

是非、寄付いただいたみなさんには、お近くの子ども食堂などの施設に顔を出していただき、実際に子どもと触れ合ってみていただきたいと思います。『ああ、そうなんだ』と話を聞くだけでもいいと思います。

そうするだけで、子どもたちに思いを馳せることができるようになったり、自分にも何かできると思えるようになるのではないでしょうか」(平林さん)

寄付の状況 2021年4月末現在
5億8,449万9,634円
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日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。