一人ひとりの人生に寄り添い続けるむそうの取り組み

こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は社会福祉法人むそう「あっと名取」の取り組みをご紹介します。

震災で居場所を失った子どものために

宮城県名取市閖上地区は、2011年の東日本大震災で多くの家屋が流され900人以上の尊い命を失う甚大な被害を受けました。三世代同居が多く、放課後の子どもの面倒はお年寄りがみて、親が働きに出ることが多かったこの地域。震災で逃げ遅れ亡くなったお年寄りが多く、障害児や難病の子どもの面倒をみる担い手がいなくなってしまった一方、地元の福祉施設は従来の利用者を守ることに精一杯で、新たに子どもたちを受け入れる余裕はありませんでした。

全日本手をつなぐ育成会の理事として現地の支援に入っていた社会福祉法人むそう理事長の戸枝陽基(ひろもと)さんは、家族の困窮する状況を知り、他にやる人がいないのならばと、子どもたちを預かる場所を作ることを決意。歯科医師による社会貢献活動TOOTH FAIRYプロジェクトの助成を受けて、トレーラーハウス2台を購入し、2015年に「あっと名取」を開設しました。

むそうは愛知県半田市を本拠地に、福祉事業を幅広く展開する社会福祉法人。名取市での開設は、事業を広げる目的ではなく「応えることができるならとにかくやろう」ということでした。

トレーラーハウスの脇の車が通る道に子どもが飛び出さないように、柵を作るために訪れた大工さんが建物の趣旨を聞いて、車いすでも出入りがしやすいようにとスロープを作ってくれました。当時の名取には地元のみんなが助け合い、復興に向けて共に頑張ろうという思いがあったといいます。

開所式に訪れた歯科医師会の方からは、在宅介護の家庭に歯科医が訪問診療できるという情報が得られました。障害がある人にとっては歯の問題はとても大切。こうした新しい繋がりが生まれたこともありがたかったといいます。

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あっと名取の外観。大工さんが作ってくれた木のスロープが大活躍しています

当事者の立場で動き、寄り添う

あっと名取では0歳~6歳の障害がある子どもの一時預かり、入浴や食事の介助など、介護に追われる家族の生活を支えています。子どもは家族以外の人に会うことで社会性を身に着け、他の子どもと触れ合い遊ぶことで育ちが促されます。

地域の医療関係者とも連携し、医療と福祉の両面から難病の子どもと家族をサポート。今後むそうは東京と名古屋では訪問看護を自前で進めますが、名取では地元にある既存の看護ステーションと協力して、地域の資源を生かしたビジネスモデルを展開していきます。

むそうは、障害者福祉サービス施設(就労移行、生活介護)やグループホームなどを運営し、障害者本人が望む自立した生活の継続を目指しています。「誕生から看取りまで一人ひとりに寄り添い、その人らしい人生を生きられるようにサポートし、一時的なものではなくその後の人生にも寄り添い続けます」と戸枝さん。

戸枝さんのこうした思いの原点は、自身も母親に障害があり、子どもの頃から福祉が救ってくれないことに対する疑問を持っていたことでした。役所や学校の縦割りの役割分担で、助けてと手を伸ばしてもその願いが叶えられないことも。障害者は貧困と隣り合わせ。なぜ福祉は助けてくれないのかを知りたいがために、この世界に飛び込んだといいます。

「この経験から、当事者の立場で常に動いているのです。求めに対してとことん寄り添いたいという思いが強く、福祉と他がどうすれば一緒に実現できるのかを考えています。ピアカウンセリングという言葉がありますが、同調性が高いからできる支援をしている団体なのかもしれません」。

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あっと名取に通い、どんどん快活になったという女の子。

どうしたらもっと楽しく生きられる?

「お母さんが復職して良い顔をされている時や、子どもが成長してむそうを卒業していく時に手応えを感じます。普通の小学校に入ることができて、教室ですまして顔を上げている子どもの様子をスタッフから聞くと、教育委員会との話し合いなど大変なことも多かったけれど良かったなとしみじみ感じます」と戸枝さん。

時には子どもを看取ることもあります。「お子さんがいかに生きるか、いかに亡くなっていくかで残されたご家族のそれからが全然違ってきます。精一杯、思いきり生きたなと親御さんが思える瞬間があると、そうした伴走支援ができたと思えるし、親御さんが少しでも前向きに思えるなら、良い仕事をしたなと思えます」。

むそうは未就学の医療的ケア児の受け入れに力を注いでいましたが、放課後等デイサービスにも注力していきたいといいます。「卒園したら終わりではなくて、出会った子どもたちが求めることを受け止めて、適切な伴走支援ができるような体制を用意していきます」。また、社会支援システムの充実への働きかけも続けていきます。

医療的ケア児が18歳を超えてからの受け入れ先、さらに年齢を重ねた先の居場所など、今後の課題は多くあります。
「医療的ケア児という言葉ができて10年。どうしたらもっと育つのか、どうしたらもっと楽しく生きられる? ということを彼らに聞きながら、共に開発していく。何が必要なのか問い続けることをしっかりやっていきたいです。まだ前例がないことですから」。

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ハロウィンパーティでにっこり。子どもたちの笑顔に寄り添い続けます

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

難病の子どもと家族を支えるプログラム

社会福祉法人むそう

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

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