食事支援が必要な子どもと家族のコミュニティ特定非営利活動法人D-SHiPS32

「スナック都ろ美」でとろみの話を

食べ物を歯で噛んで消化をしやすくして飲み込むことを嚥下(えんげ)と言います。病気や障害でそれが難しい状態を嚥下障害と言い、料理をミキサーにかけて飲み込みやすくしたものを口から食べる、鼻に入れたチューブから、胃ろうで直接胃から、とそれぞれの状況に合わせた形で食事をすることになります。

「スナック都ろ美」は、特定非営利活動法人D-SHiPS32が運営する食事支援(主に嚥下障害)が必要な子どもと家族のオンラインコミュニティ。「もぐもぐは、それぞれ。」をキャッチコピーに、楽しく食事をするための情報交換、調整食のレシピや調理機器の情報共有、オンラインイベントやアンケートを開催し、そこで明らかになった家族や当事者の悩みや困り事の解決に向けた活動をしています。

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もぐもぐは、それぞれ。楽しく食事をするための情報交換をしています

安心して悩みを語れる場所

「子どもの命を抱えて、いっぱいいっぱいのお母さんたちにとって、一人で抱え込まずに日頃の思いを吐き出せる場所は必要です」と「スナック都ろ美」を立ち上げた加藤さくらさんは言います。

このきっかけは、友人の永峰玲子さんの子どもが通う特別支援学校が会場提供をして実施された『特別支援学校の特別おもしろ祭』にて、仲間たちと「スナック都ろ美」コーナーを作ったことでした。嚥下調整食のお寿司やとろみをつけたスープなど嚥下障害の有無に関わらずみんなで食べられるメニューの試食を提供し、スナックのママさんに扮して悩み相談を受け付けたところ、大好評。

「食事の準備に時間がとられる」「外食したくても行けるお店がない」など、食に対する苦労や悩み事が浮き彫りになり、思いを話し合える場所の必要性を感じた加藤さんと永峰さん。この二人が発起人となり、同じ食の悩みをもつメンバーと、日本財団の支援を受けて2020年7月にオンラインのコミュニティ「スナック都ろ美」を作りました。

全国からネットを介して集まるお母さんたちと、画面越しに日頃の困り事を語り合い、日々のメニューの役立ち情報を話したり、専門家によるイベントを開催して、質疑応答やお料理教室、飲み込む力や噛む力の発達を促す方法などの情報提供をしています。スナックをコンセプトにしたサイトの随所には遊び心が見られ、「気軽に話ができてよかった」「また参加したい」と参加者に実施したアンケート調査で満足度は100%。

「安心してフラットになんでも話せる雰囲気を作っています。楽しく前向きなほうがパワーがあり、周囲から共感されて手を差し伸べてもらいやすい。ビジョンを発信すると、自分はこれができるよ、こうしたらいいよといった反応がきて、よい循環が生まれることに気づきました」と加藤さん。

胃から摂取する栄養剤や、とろみのある介護食が食生活の主となる難病や障害のある子どもにとって、通学や外食の選択肢は限られます。家庭や教育機関、外食産業に向けて知識と対応方法などの情報を広めることで、食事支援を必要とする子どもが安心して食事を楽しめるようになればと、「スナック都ろ美」で明らかになったニーズをもとに外食産業への商品提案、コンサルティングも積極的に行っています。

新日本橋で2021年6月にオープンした、難病や重度障害者などの外出困難者が分身ロボットを遠隔操作して働くカフェ「DAWN」。ここでも、食支援(嚥下調整食)の監修をして、嚥下障害のある人も食事を楽しめる「インクルーシブドリンク」がメニューに入りました。お店ではとろみ剤のサンプルの無料提供、食形態を調整できるミキサーや茶こし、シリコンスプーンの貸し出しもしています。

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オンラインイベントは大好評。満足度は100パーセント!

一緒に楽しく食べる幸せ

このように子どもたちの食事の課題を解決することは、高齢化社会にも貢献します。
「自分たちの生活をよりよくしたいという視点が、実は他の誰かの役に立っていることもあります。お母さんたちがもつ、こんな事を言っても仕方ない、とか一見わがままと思われてしまうのではないかというような意見でも、それが変化をもたらす第一歩だということを知ってもらいたいです。自分たち以外の人にも恩恵があるのだというサイクルに気づいてほしい」と永峰さん。

「社会を変えていこうと大きなことは思っていません。結果そうなったらいいなとは思いますが。目の前の我が子を何とかしたいという思いが原動力です。そのために動いていくなかで、他の人にも役立つことが見えてきたのです」と加藤さんは言います。

「駄菓子屋さんに行くと今でもわくわくします。スナック菓子や駄菓子も食べられるようにできないかと考えています。もっと食事の選択肢が増えて、お菓子のわくわく感や自分で選べる喜びも感じてほしいです」。

ネットを使えていないお母さんたちに、いかに活動を知ってもらうか。新規の参加者を増やしていくための情報発信もこれからの課題です。

お母さんが笑顔でいると、子どもは嬉しいし、周りにも笑顔が広がり、その結果、子どもの幸せにもつながります。お母さんたちがやりたいことを何でもやって輝ける場をと、「部活動」をスタートしたばかり。

家族が一緒に笑いながらご飯を食べる。そんな時間が少しでも増えてほしい。自分もみんなも。それを願ってこれからもゆるく楽しくオンラインコミュニティは続きます。

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スナック都ろ美のHP画面。お酒のラベルにも細かな技が効いています

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

特定非営利活動法人D-SHiPS32

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

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