子どもたちの作品をNFTとして販売。新しい寄付のカタチがメタバースではじまる
2021年11月10日、子ども第三の居場所 新さいたま市拠点において、デジタルアートのワークショップを開催しました。
子どもたちが制作した作品は「NFTアート」として販売され、売上はすべて子ども第三の居場所基金へ寄付されます。
ブロックチェーン及びNFTを活用した新しい寄付の形へのチャレンジ。はたしてどうなるのでしょうか。当日のワークショップの様子をご紹介します。
そもそも、NFTってなに?
「NFT(Non-fungible Token)」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?「NFT」とはブロックチェーンという技術を用いて、デジタルデータの取引記録を残し、その所有権を明確にすることができる、鑑定書や証明書のようなもの。
たとえば、オンラインで公開された写真やイラストのデータ。従来、これらは簡単にコピーすることができ、誰に所有権があるのかが不明瞭になってしまいがちでした。そのため、紙に描かれた絵画には高値が付くけれど、絵画の画像には値が付かない。それがこれまでの常識です。
しかし、「NFT」が登場したことで、デジタルデータに所有という概念が生まれるとともに、新たな価値と取引をできる市場が生まれました。
先日、小学生が夏休みの自由研究のために描いたドット絵のNFTアートが、80万円で落札されたことがニュースになりました。今、NFTをめぐる新しい経済が注目を集めているのです。
NFTからはじまる、新しい寄付の形
今回、日本財団はこのNFTを活用した新しい寄付の形にチャレンジします。
子ども第三の居場所 新さいたま市拠点の子どもたちと一緒にワークショップ形式でアート作品を制作。子どもたちの作品は株式会社TARTの協力のもと、Metaaniというキャラクターの柄になり、NFTアートとして販売されます。そして、収益は全額、子ども第三の居場所のために寄付されるという仕組みです。
今回、子どもたちがアートショップで制作するのはマーブリングアート。水に絵の具を落とすことでできるテクスチャを利用したアート作品です。
ワークショップはMetaaniの製作者であるMISOSHITAさんによるプレゼンテーションとマーブリングアートの制作の2部構成。さあ、上手くできるでしょうか?
メタバース(仮想空間)ってなんだ?
アートワークショップが開催される午後3時。テレビ局の取材が来ていたりと、どこかいつもと違う雰囲気に少し緊張気味?の子どもたち。みんなきちんと着席して、ワークショップがはじまるのを待っています。
まずはアーティストのMISOSHITAさんによるプレゼンテーション、のはずが…会場にMISOSHITAさんはいません。
今回のプレゼンテーションはMISOSHITAさんのいるメタバース(仮想空間)と会場をオンラインでつなぎ、会話形式で進められました。
「今日は皆さんにメタバースとは何かというお話をしたいと思います。みなさん、メタバースって聞いたことあるかな?僕はVtuberやVRアーティストとして活動をしているのですが、実は今僕がいる空間も、自分でつくったものなんです」
メタバース(仮想空間)から子どもたちに語りかけるMISOSHITAさん。
おそらく、メタバースにいる人とのはじめての対話となったであろう子どもたち。難しい話題にも関わらず、集中して話を聞いています。
「VRって知ってる?」という問いかけには会場の子どもの半数以上が「知ってる!」と回答。意外と子どもたちはテクノロジーのことを知っているものです。
MISOSHITAさんのいる空間はClusterというメタバースプラットフォームを利用して作られたもの。
メタバース上では人が集まって会話するなど、現実世界のようにさまざまな活動をすることができます。
今、Clusterの他にも、VR chatやThe Sandboxなど、世界中でさまざまなメタバースが生まれ、注目されています。
既存のメタバースにはそれぞれ特徴があり、中には自分のアバターとなるキャラクターを操作したり、アバターが着用するファッションアイテムを着せ替えたりできるものも。また、デジタルアイテムを自分で作成したり、売買することもできるそうです。
子どもたちが作ったマーブリングアート柄のMetaaniで、MISOSHITAさんのように仮想空間の中で自由に動き回ることもできるのです。
ちょっと難しい言葉もでてきたけど、みんな理解できたかな?
「それでは、みなさんも一緒にメタバースを作りましょう。バイバーイ!」
「バイバーイ!」
子どもたち一人ひとりの個性が現れるマーブリングアート
MISOSHITAさんのプレゼンテーションが終わると、お待ちかねのワークショップの時間です。
子どもたちの目の前にマーブリングするための画材が置かれると、一気に会場が騒がしくなります。
「じゃあ、お手本を見せるね」
水溶液に特殊な絵の具をぽたりと落とすと、水面上にゆっくり現れる模様。その模様に長串でアクセントをつけていきます。
満足できる模様ができあがったら、そこに紙を落として写し取ると……世界にたった1つのマーブリングアートの完成です
「はい、みんなもやってみよう!」
慎重にちょっとずつ色を重ねていく子。豪快に失敗を恐れずに色を足していく子。作っている過程にも子どもたちの個性が現れます。
「できたー!」
「わー、かっこいい!」
「もう一回やりたい!」
当初は1人1作品の予定でしたが、子どもたちの創作意欲はとどまることを知らず、次々と作品ができあがっていきます。
1時間の作成時間はあっという間に過ぎていき、まだ作りたそうな様子の子どもたちもいましたが、ここで終了。
出来上がった作品はTARTさんが大切に持ち帰り、NFTアートのMetaaniとして生まれ変わります。
世界に1つのNFTアートが完成
そして、2週間後──。子どもたちの作品とのコラボレーションで生まれた、オリジナルのMetaaniがこちらです。
これらの作品はOpenSeaというNFTアートのマーケットプレイスで11月24日より固定価格で販売されました。
日本財団の中村一貴は、今回の取り組みの経緯について次のように語ります。
「以前から新しい寄付文化として、暗号資産による寄付に着目していました。暗号資産の特徴はブロックチェーン技術により、お金の流れを見える化できることです。
つまり暗号資産で寄付から支援までを行えば、寄付者の方が自分の寄付がどこでどのように使われたのかまでトレースすることもできます。
また、暗号資産の中でも特にNFTは寄付との親和性が高いと考えていたときに、株式会社TARTの高瀬さんのことを知りました。それでお声がけをさせていただき、今回の企画に至りました」
今回の取り組みに伴走してくださった、株式会社TARTの高瀬俊明さんも、今回の取り組みがNFTによる新しい寄付文化のはじまりとなることに期待を寄せます。
「今回はNFTアートを販売して、その売上をシンプルに寄付するという形です。一方で、NFTの特徴は購入されたアートが2次流通、3次流通したときに、元の販売者に収益が入るようにロイヤリティを設定できる点です。これを利用すればアートが売買されるたびに継続的に寄付が発生するという仕組みも可能です。
またNFTを購入した人にとっては、自分が寄付をしたという証がデジタル上に残ることになります。寄付をするという行為が自らのアイデンティティを示す役割を果たすようになるかもしれません。
今後、NFTを活用することで寄付はもっと身近な存在になっていくと思います。今回の取り組みはそれらの第一歩。寄付の新しい形がこれから生まれ、定着してくれることを期待しています」
日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。