みんなが繋がる「小児糖尿病バーチャルキャンプ」公益社団法人日本糖尿病協会

1型糖尿病の子どもたちを支えるサマーキャンプ

1型糖尿病の子どもたちが学びあう場として全国で毎年夏に開催されていたサマーキャンプ。コロナ渦のために2020年と2021年の2年間、中止を余儀なくされていましたが、2021年の10月にオンラインで実施されました。

1型糖尿病のこと、ご存じですか?
子どもの発症が多い1型糖尿病とは、血糖値を一定に保つ働きをするインスリンを作り出す膵臓の細胞が何らかの理由で壊れてしまう病気で、その発症には成人の糖尿病の原因となる生活習慣は関係ありません。インスリンが不足すると体の様々な機能が低下し、命にかかわる危険な状態に陥ってしまうこともあります。それを防ぐために血糖値をコントロールするインスリンの注射を毎日数回続けなければならず、それは一生続きます。

サマーキャンプは、日本糖尿病協会の主催事業として全国にある50の団体が毎年各地域で開催してきました。それは夏休みの楽しみとしてだけでなく、同じ病気を持つ仲間とともに一生付き合っていく糖尿病について学び、自分の健康を守るための自己管理能力を身につけ、病気と共に生きる心を育み、人との関わりを学んで人格形成をする場としても機能してきました。

毎年開催を楽しみにしていた子どもたち。再会の場面では「久しぶり!元気だった?」と、はずむ声が飛び交いました。

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全国のキャンプメンバーとスタッフたち。たくさんの笑顔が見られました

個性が活きる発表の数々

小児糖尿病バーチャルキャンプは3日間に分けて開催され、全国から20団体が参加し、総参加者数は745人に上りました。1日当たり6~7の団体が約30分、それぞれの活動について工夫を凝らした個性的な発表をしました。

オンラインキャンプをすでに試みていた団体がその報告をしたり、密にならない開催方法を提案してくれたり。アニメーションでキャンプの初日から終わりまでを紹介した団体もいれば、60年にわたるサマーキャンプの歴史を紹介した団体もいました。糖尿病の勇者マリティスが高血糖や低血糖を回避しながら悪と戦うユニークな実写映像を作った団体も。

「他のキャンプではこんなことをしているんだ」とオンラインでなければ会うことのなかった別の地域の団体の活動を知り、交流を深める機会にもなりました。

キャンプの一番の盛り上がりは、日本糖尿病協会が用意したバーチャル山登りというすごろくゲーム。実際の山登りで起こり得る血糖値の変化を体験しながら様々なミッションをクリアしてゴールを目指すという内容です。団体から5人ずつが参加してチーム対抗で競い合い、ゴール直前に何度も同じマスに止まり後退を余儀なくされるチームがいるなど、歓声や悲鳴が響きました。

実際に運営することで、双方向のやりとりをもっと増やしたいという希望や多様なネット環境への対応の必要性など、今後の検討事項も見えてきましたが、「それ以上にオンラインならではの良さがたくさんあった」とオンラインキャンプを運営する日本糖尿病協会理事の坂本辰蔵さんは振り返ります。

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勇者マリティスが巨悪を退治する実写ストーリーを披露(ペガサスの会)

病室からも時間と空間を超えて繋がる

全国各地、自宅から外からと様々なところからバーチャルキャンプへのアクセスがありましたが、その中には入院中の子どもの参加者もいました。

「画面の背景で病院からだと分かりました。その子は話しかけると丁寧に返事をしてくれて、最後まで残り、少し話をしてからお礼を言って退室していきました。普段キャンプに参加したくてもできない子どもたちが、毎日同じことの繰り返しの閉ざされた場所からでもオンラインなら繋がることができます。そういう意味でもやって良かったと思いました。糖尿病になってしまってこれから先のことを不安に思うなかで、ちょっと気軽に話ができて、それが脱出口というか、少しでも明かりが見えるものになれば」と坂本さん。

遠く離れていてもオンラインを利用することで、時間と空間を超えて繋がり、寄り添うことができるのです。

ゲームの1シーン。
日本糖尿病協会が提供したバーチャル山登り。血糖値の変化を体験しながら様々なミッションをクリアしていきます

糖尿病と共に生きていく

サマーキャンプの参加者の中には、成長して医療や社会貢献活動に携わる人も少なくありません。大人になってスタッフとして参加するOBOGも数多くいます。

医師になってキャンプに参加したあるOGは、「高校生の時にキャンプに参加したことで自分が糖尿病であることを受け入れ、共に生きていこうと前向きな気持ちになった」と話してくれました。

坂本さん自身も1型糖尿病を子どもの時に発症し、サマーキャンプに参加していた当事者です。

「自分の経験が何かお役に立つことがあればと、日本糖尿病協会の活動に関わらせてもらっています。患者のリアルな生の声が反映されてはじめて協会として成り立つと思っていて、医師のような専門知識はなくても、自分の経験があるからこそ、分かることもあります。血糖値を測るのに針を刺すのはやはり嫌だなと思う気持ちも分かります。両者の気持ちを分かったうえで、専門家と子どもたちの橋渡しの役割ができれば」。

バーチャルキャンプ開催後のアンケートでは、「楽しかった!」「自分が元気だということを伝えることができて良かった」「全国にこんなに仲間がいると知ることができた」という喜びの声があふれました。医師やスタッフからも、小学校から付き合いのあるその子が成長して受験生になりどうしているのかなと思っていたなか、1年半越しの近況が聞けて安心したという報告もありました。

小児糖尿病バーチャルキャンプは、今後、対面でのキャンプができるようになっても継続される予定。日本糖尿病協会ではこれからも糖尿病の子どもたちを応援し、糖尿病の認知を広げる啓発と共に、誰もが気軽に入ってこられる場を作り、関わるすべての人の健康、幸せを支えていきます。

アニメーションの1シーン。画面中央に「この6人でキャンプを案内するよ」の文字
キャンプの一連の流れをアニメーションで再現(兵庫県小児糖尿病部会)

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

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公益社団法人日本糖尿病協会

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文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

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