はじまりは沖縄初の子ども食堂。公民館を活用したコミュニティモデル型の拠点を運営。

写真:ネオももやま子ども食堂の室内で、自由に遊んでいる様子
それぞれのやりたいことを尊重して

沖縄県沖縄市。ここに、2021年8月から子ども第三の居場所に仲間入りした拠点「ネオももやま子ども食堂」があります。運営するのは、一般社団法人みんなのももやま子ども食堂。沖縄で初めて子ども食堂をスタートさせた団体でもあります。

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親戚の家に集まってきているような雰囲気です

沖縄・コザのコミュニティモデル型拠点

主な利用者は、徒歩圏内に住む小学生から高校生。平日2日間と土曜日、計3日を活動日として、子どもたちの居場所づくりをしています。

おやつや夕食の提供といった食事の提供に加え、定期テストや受験に向けた学習支援も、子どもたちのニーズに合わせながら柔軟に対応しています。

また、活動プログラムは、公民館にある広いホールを活かして体を動かすスポーツ系やじっくりと物事を考える力を付ける思考系、自らを表現するクリエイティブ系のものを用意しています。

スポーツ系プログラムでは、かくれんぼ、鬼ごっこなど多くの子どもが好きな遊びに加えて、ドッジボールや卓球、時にはモルックやボッチャと言ったフィンランドのスポーツやパラスポーツにもチャレンジ。また思考系プログラムでは、トランプやカードゲーム、クリエイティブなプログラムとして、お絵描きなども取り入れています。

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公民館の床に広げてカルタ遊び

手探りで始めた子ども食堂

もともと運営団体は、同じ校区内にある「みんなのももやま子ども食堂」を2015年から運営してきました。今回なぜ子ども第三の居場所の仲間入りをすることにしたのでしょうか?スタッフの菅原耕太さんは、このように語ります。

「2020年頃から、子ども食堂の中だけで完結するのではなく、地域の人と交流することで子どもたちが成長する機会をつくれないだろうかと考えていました」

今ほど子ども食堂が知られていなかった開設当時、活動は全てボランティアベース。何をすればいいのか、どんなことを求められているのかわからないまま、手探り状態で進んできたと振り返ります。

「最初は毎週土曜日に食材を持ち寄り、みんなで料理を作って食べていました。次第に寄付も増えて、子どもたちも毎日来たいと話すようになったんです。また、見ず知らずの僕の膝の上に無邪気に座る子どもの姿を見て、一緒にご飯を食べる以外の関わりが必要なんじゃないかと思いました」

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はじめての流しそうめん

子ども食堂から支援活動へ広がる

子どもたちに引っ張られるように次の展開を模索し始めた菅原さん。また2015年末には、厚生労働省が日本の相対的貧困率を発表し、「子どもの7人に1人が貧困状態にある」ことが広まり、社会的にも注目され始めた年でもありました。

沖縄県も貧困対策に力を入れるようになり、「みんなのももやま子ども食堂」も活動を拡大していきます。2016年からは子ども食堂を週5日実施。一時は年末年始も休まずに子どもたちを受け入れたそう。

「ゆっくりスタートしたつもりが、子どもたちに引っ張られて活動が一気に広がり、支援になっていきました」

食事の提供から子どもの支援活動に領域が広がるにつれ、菅原さんは「支援の難しさ」を感じるようになったと振り返ります。

「同じ地域で生きているのに、支援される側とする側に分かれてしまい、次第に距離を感じるようになりました。これが良い関係なんだろうかと疑問を持つようになりました」

転機となったボランティア活動

支援の難しさを感じていた菅原さんが、「地域」に目を向けるきっかけになったのが、「みんなのももやま子ども食堂」に通う中学生の男の子でした。

小学生から通っていたその子は中学生になり、子ども食堂だけでは物足りなさを感じるようになっていたそう。そこで、フィールドを広げ、地域の中でいかに遊ばせてもらうかを考えた時に思いついたのが、地域のボランティア活動でした。社会福祉協議会が募っている清掃ボランティアに手を挙げて、菅原さんは男の子と一緒に高齢者のご自宅の清掃に出向きます。

「掃除を終えるとおばあちゃんがニコニコと見送ってくれて、お土産も持たせてくれて。参加した男の子も達成感を得たようで、その後もボランティアをするようになったんです。社会福祉協議会から賞状をもらって、学校でも表彰されて。周りの子どももやってみたいとなりましたし、保護者の方もすごく喜んでいました。子どもも変わり、地域の人も喜ぶ。これが転機となって、地域の人と交流する機会を増やしたいと思うようになりました」

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地域の農家さんの招待でジャガイモ掘り

地域の誰でも立ち寄れる公民館に

そんな折、子ども第三の居場所のことを知った菅原さん。「子ども食堂だけでは子どもたちの受け皿としては不十分。意味合いのある場所でありながら、誰でも気軽に立ち寄れる場所であるコミュニティモデルが、僕らの考えとマッチした」と話します。

地域の公民館をお借りする形で、2021年8月に拠点をオープン。地域との関わりを大切にしながら、運営を始めました。

「子どもが通う公民館にしたいと言ってもらい、お借りすることができました。週3回、子どもの出入りがあることをすごく喜んでいただいています」

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あそぶ あまえる のびのび

公民館には自治会の事務所が入っていているため、自治会長さんや事務員の方とコミュニケーションが取りやすいことも特徴的。また自治会長さんは菅原さんと同年代とのことで、お互いの悩みや課題意識も相談しやすい関係にあります。

「今後は公民館に限らず、地域のいろんな場所でフリーマーケットなど交流のきっかけになる場を、一緒に企画しようと話をしています。自治会のもつネットワークと僕らのノウハウを掛け合わせながら、活動を広げていきたいですね」

拠点を公民館に置くことで、公民館は利用料収入を得ることに繋がり、また自治会に加入していない子どもともつながる機会になっているそう。拠点をきっかけに、自治会への加入世帯を増やし、お互いに顔の見える関係性を築けたら、より安心して暮らせる地域になるとも考えています。

「週1回、中学校にボランティアスタッフとして訪れ、草刈りや学習支援をしています。学校の先生とも顔見知りになることで、子どもたちの拠点での様子を伝えたり、逆に気になる子どもを拠点に紹介してくれることもあります」

子ども食堂から始まり、支援にも活動領域を幅を広げてきた「みんなのももやま子ども食堂」。その背景には、子ども達の声をしっかりと聴いてそれに応えようとする姿と、地域全体で子どもたちを見守るために、自治会や学校とも日々の関わりを大切にしている姿がありました。地域と連携する拠点の良いモデルになっていきそうです。

取材:北川由依

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