15年待ち焦がれた医療的ケア児の居場所認定特定非営利活動法人ホームホスピス宮崎

みんなが集うあたたかな家

宮崎県宮崎市橘通東地区の繁華街の一角にある「HALE(ハレ)たちばな」は、宮崎県内で4カ所のホームホスピスや訪問看護ステーションなどを運営するホームホスピス宮崎が開設した、ケアの必要な子どもたちのための新しい居場所。医療的ケア児、重度の障害のある子どもが訪れ、日中一時支援、短期入所のサービスを受けるほか、訪問診療、訪問介護、研修など多機能型拠点の役割も備え、地域の人々が共に寄り添える場を目指しています。

ホームホスピス宮崎は24年前に設立された団体。当時、宮崎には緩和ケア病棟(ホスピス)がなく、民家を借りて、家庭のような環境のなかで安らぎを感じながら人生の最期を過ごせる「かあさんの家」を開設しました。今では4か所のホームホスピス「かあさんの家」と、訪問看護ステーション、訪問介護ステーション、短期入所事業所、日中一時事業所、在宅医療診療所を運営しています。

大切な家族の人生最期の時を「かあさんの家」で看取られたご遺族から、その方が住んでいた土地を福祉や医療に役立ててほしいとの申し出を受け、「ごちゃまぜプロジェクト」と名付けて2年の間、毎月有志が集まって、そこでできることの構想を練り夢を語り合いました。

そこで出された結論——この地域で最も必要とされていたものが、医療的ケア児とその家族を支援する居場所でした。というのも、訪問看護の現場では医療的ケア児の在宅医療に関する制度や地域の連携先の不足など、様々な壁にぶつかっており、在宅看護に従事する側からの強い要望があったのです。こうしてプロジェクトが実現に向けて動き出し、日本財団の助成を受けて2021年10月に「HALEたちばな」は生まれました。

HALE(ハレ)という名前にはハワイ語で「大きな家」という意味があり、子どもからお年寄りまで、みんなが集うあたたかな家にしたいという気持ちが込められています。

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街の中心地にある多機能型拠点HALE(ハレ)たちばな

15年越しの願いを実現

365日のうちひと時も休む間もなく介護に追われていた家族は、日中一時支援、短期入所で子どもを預け、ひと時の休息を得ることができるようになりました。

「15年も前に、訪問看護で訪れたご家族にこうした場所を作ってくれないかと言われてから、ようやく実現することができました」と施設長の堤育子さんは振り返ります。
受け入れてくれる場所は限られており、休む間もなく24時間続く介護。
「15年間みてきて、やはり20代30代のお母さんが子どものケアに追われる人生を送っているのは、理不尽だと感じてきましたし、きょうだい児に負担がかかっていることもとても気になっていました」。

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日中一時支援ohanaではお友達と一緒に過ごします

HALEたちばなでは、研修・実習室、コミュニティカフェのスペース、診察室、相談支援スペースも備えています。医療的ケア児の介護に追われる親は、外に出ることもままならず孤立しがちです。コミュニティカフェではヨガやクラフト教室など、親同士の交流を図るイベントを企画。「孤立している親子の交流の場を作り、地域の人にも参加してもらうなど、さらにこの場所を活用していきたい」と堤さんは語ります。

保護者のなかにはここで介護やコミュニティカフェの仕事をする人も多く、新たな雇用を生み出しています。

希望が生まれる場所

呼吸器をつけたある三歳児の母親は、これまで変化がみられなかった子どもの表情や感情表現が豊かになったと喜んでいました。その母親は「この子が学校に行くことは考えられない」と言っていたのが、他の子の様子も見て気持ちに変化が生じたのか、「この子も学校に行かせられるかな」と話すようになり、今では日中一時支援ohanaやコミュニティカフェで職を得て活躍しています。

10代の医療的ケア児の母親は、HALEたちばなに子どもをあずけて、高校生になったきょうだい児を学校まで初めて迎えにいくことができました。きょうだい児には「本当にくるの?」と驚かれたといいます。それだけケア児につきっきりにならざるを得ない状況だったということなのです。

HALEたちばなでは、診療所を併設し、子どもから大人までを対象に訪問診療を行うというNPOとしては珍しい事業も手がけています。この施設は宮崎県の大学の研修にも活用されて、宮崎大学医学部と連携した単位認定講義や、訪問看護、介護従事者への研修を実施。人材育成の場となっています。

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クリスマスツリーに扮する施設長の堤育子さん。オーナメントは看護大生の手作り

種が育ち、花開くときを願って

「時代の中で何が必要とされているかを考えながら、活動を進めてきました。どうしても公的な制度からこぼれてしまう人たちがいて、何とかせねばとみんなで知恵を出し合ってサポートしていく仕組みを探ってきました。これからも障害があってもなくても安心して共に暮らしていけるまち作りを目指します」と理事長の市原美穂さん。

「ここに来ることで少しでも明るい将来を思い、人生を語ることができるようになってもらえたら」と堤さんは言います。

「今後はHALEたちばなのような居場所が地域にたくさん生まれるような人材育成にも力を入れていきたいです。スタッフや学生にもこの種が育ち広がっていったらと願っています。自分たちだけでできることは限られていますから。全国の他の事業所が同じモデルをやってみたいと言ってくれたら嬉しいです」。

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施設の外にある桜の木の下でお花見

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

認定特定非営利活動法人ホームホスピス宮崎

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

寄付の状況 2022年5月末現在
4億7,864万9,957円
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