離島ならではの子ども支援を学び合う。奄美群島に拡がる、子ども第三の居場所ネットワーク。

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先生を招いた体操の時間。スタッフも交えて、ウォーキングポールを使ったストレッチをする様子。

鹿児島市と沖縄本島のほぼ中間に位置する鹿児島県奄美群島。奄美大島を中心に8つの有人島があり、約10万人が生活をしています。その中の一つ、徳之島は、奄美群島のほぼ中央にあり、世界自然遺産にも登録されており、奄美大島に次いで2番目に人口の多い約2万人が暮らしています。

2023年5月、NPO法人親子ネットワークがじゅまるの家は、徳之島で初となる子ども第三の居場所を開設。子どもの居場所「コランネ」と名付け、コミュニティモデルの拠点運営をスタートしました。

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入り口には可愛らしい手書きの看板が置かれている。

海辺にある元保育園をリノベーション

コランネは、元保育園を修繕して運営されているコワーキングスペース「みらい創りラボ・いのかわ」を借りる形で、週3日、子どもの居場所を開いています。島内にフリースクールがないこともあり、日中の利用は不登校児が中心。昼食の提供も含め、平日は9時から18時まで、土曜は9時から15時まで開いています。

朝の会とラジオ体操から1日が始まり、創作活動やIT学習活動、体操などさまざまなプログラムを提供し、子どもの好奇心を育み、多様な人とのコミュニケーション機会を設けてきました。

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創作活動の時間に新聞紙や広告を使用して制作した「ビリビリみのむし」。

ランチはスタッフお手製です。取材に訪れた日のメニューは、奄美地域を代表する郷土料理の鶏飯。みんなで準備をして、器に具材を盛り付けていきます。子どももスタッフも全員が座ったところで、手を合わせて「いただきます」。午前中の活動の話をしたり、家での様子を聞いたりして過ごしていると、あっという間に小一時間が経過しました。

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好きな具材を好きなだけ。盛り付けにも個性が溢れる。煮物やフルーツも一緒にいただきました。

子育ての困りごとを一つずつ解消

開設一年目ながら、充実したプログラムの実施と困難に直面する児童へのアプローチをしている「コランネ」。安定した運営を支えているのが、理事長の野中涼子さんです。

13年前、助産師として働きながら、子育て中にサークルを立ち上げたことを機に、まちの子育て支援に携わるようになりました。

離島をイメージする時、地域コミュニティの強さや近隣と助け合いながら子育てできる環境が想像されがちです。しかし、徳之島へ転勤や結婚を機に住むことになった層も多く、「島で生まれ育った人とは子育て環境が異なる」と野中さんは話します。

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野中さん

「島の人は親や親戚、同級生と子育てをサポートし合える環境があります。しかし、外から来た人にはネットワークや情報を得る場がありません。都市のようにサービスも充実していないので、孤立しがちです」

そうした子育て環境を改善しようと、野中さんは、病児保育や保育園、子育て相談などを行政と連携して立ち上げ、島に必要な機能を増やしてきました。

「長年、子育て支援をする中で、赤ちゃんだった子が小中高生になりました。なかには不登校の子どももおり、保護者から島にフリースクールがないため、日中、子どもが行く場所がないと相談が来るようになりました」

そこで約3年前から、近隣の古民家を借りて子どもの居場所の運営をはじめたがじゅまるの家。2023年度からは日本財団の助成を受けて、現在の場所に移転。遠方の子どもも利用しやすいよう車両を購入し、2023年11月からは送迎をスタートさせました。

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海岸と芝生の庭に囲まれたコランネ

週5日開所も視野に入れて、子どもに寄り添う

コランネを利用する子どもは、現在5名。不登校児を中心に小学生から高校生までが利用しています。
親の仕事の都合で島に来たが環境の変化に馴染めない、ステップファミリーで家庭環境が複雑など、「環境の変化によるストレスや我慢によって症状の出ている子どもが多い」と野中さんは話します。

また現在は、週3日開所のため、放課後は週5日空いている学童を利用している子どもも多いそう。その中には困難に直面する児童も含まれているため、これから週5日開所も視野に検討していきたいと考えています。

「夏休みのみの利用を受け入れたところ、毎回6〜15名の子どもが利用してくれました。車両での送迎が軌道に乗れば、保護者による送り迎えの問題が解消されて、利用も増えるのではないかと想定します」

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iPadを用いて、学習に取り組む子どもとスタッフ。

島々をつなぐ、離島間ネットワーク

島特有の課題も抱える中で支えとなっているのが、奄美群島の拠点が集まって立ち上げたネットワークです。
「コランネ」の立ち上げ前の2023年1月、お隣の沖永良部島に開所した「entaku」の運営する「一般社団法人ツギノバ」の開所式を見学。「ダ・ヴィンチ」を運営する「特定非営利活動法人心音(こころね)」も訪問しました。

また、「e.lab〈みんなのおうち〉」を運営する「一般社団法人えらぶ手帖」と「SMAPPY」、奄美大島「森のおうち くっかる」の4社でグループLINEを立ち上げ、定期的に情報交換を行っています。

「もともと、えらぶ手帖さんと月1回、zoom会議をしていたことが始まりです。そこにSMAPPYさんやくっかるさんも加わる形で、運営方法や研修、資金面について意見交換をしています」

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海のそばにある拠点。窓を開けると、波の音が聴こえる。

また、最近では長野県の軽井沢にある子ども第三の居場所「森の集会所」との交流事業にも乗り出しました。

「こちらも以前から知り合いで。2024年3月には、森の集会所の子どもたちが徳之島に来るので、島の特産品であるたんかん狩りやジャガイモ掘りを体験してもらう予定です。翌年には私たちが軽井沢に行って、スキーを楽しめないかと考えています」

島唯一の子ども第三の居場所ということで、気軽に相談できる先も少ない中、うまく外とのネットワークを作り、学び合いの環境をつくっているコランネ。野中さんが長年育んできた子育てネットワークを生かしながら、今後はますます島だからできる子育て支援を充実させていくことでしょう。

取材:北川由依

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