無人運航船の実現に向けたセミナーを開催対面・オンラインで全国から450名以上が参加。無人運航船の社会実装に向けた機運高まる

日時:2023年7月20日(木)
場所:オンライン・対面(日本財団2階大会議室)

日本財団は、2023年7月20日(木)に、無人運航船に関する最新情報を得るセミナーを開催しました。無人運航船の専門家によるスピーチや実用化に向けた期待に関するパネルディスカッション、そして、日本財団が推進する無人運航船プロジェクトMEGURI2040のステージ2も発表しました。
無人運航船や船舶の自動化技術を開発する企業や研究機関、また、将来の海事産業を担う大学生など約450名が参加した本セミナーでは「多彩なパネリストで、無人運航船の最新動向が良く分かった」「無人運航船に興味を持った」「世界をリードして頑張ってほしい」といった声が出るなど、無人運航船の実現に向けた高い期待がうかがえる内容となりました。

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パネルディスカッション「無人運航船の実用化に向けた期待と課題」の様子。(左端から夏野氏、佐治氏、西村氏、金子氏、田邊氏、ベニート氏)

「無人運航船セミナー 無人運航船がもたらす未来とは」概要

日本財団会長の笹川より、開催に際し、主催者挨拶がありました。「イノベーションが求められる今日ではスピード感が非常に重要。異分野やZ世代等の若い人材など、既存の価値観を変革するような人材が多く参入し、かつ、それを支える組織が不可欠となる。2025年の実用化に向けてスピード感を持って進めてもらいたい」と述べられました。

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日本財団会長 笹川陽平

次に、本シンポジウムの後援をいただいた国土交通省 国土交通審議官 上原 淳様が来賓挨拶をされました。「国民生活や経済生活を支える日本の海運が、その重要な役割を担い続けるためにはヒューマンエラーによる海難事故、船員の高齢化、造船業の国際競争力強化といった課題への対応が、今後ますます重要になる。MEGURI2040で得られる成果を活用し、官民連携の上、自動運航船のルール策定を主導していきたい」と述べられました。

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国土交通審議官 上原 淳様

セミナー第1部では、基調講演として、ロイドレジスタージャパンのカスタマー・エグゼクティブ・パートナーであるルイス・ベニート様より「Accelerating the safe adoption of Autonomy(自律化の安全な導入を加速化する)」というテーマでご講演をいただきました。

無人運航船や船舶の自律化に向けた開発は、欧州(イギリス、ノルウェー、フィンランド)やアジア(日本、韓国、シンガポール)等を中心に開発が進められていること、また、IMO(国際海事機関)における自動運航船のルール策定の現状と、各国の対応状況について述べられました。

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ロイドレジスタージャパン ルイス・ベニート様

続いて、パネルディスカッションとして、近畿大学特別招聘教授の夏野様をモデレータに、船員(内航・外航)や離島航路事業者、自動運転事業者等の多様なメンバーが登壇し、無人運航船の実用化に向けた期待と課題についてディスカッションを行いました。

現在の船員不足の現状と、無人運航船の技術が現在の労務負荷の低減に寄与することや、実用化に向けては規制緩和を活用する必要性があることが議論されました。また、自動運航領域における先行事例や海外事例も紹介され、今後、進むべき方向性が共有されました。

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モデレーターの夏野剛先生からの質問に回答する西村遥一等航海士

セミナ―第2部では、日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」のステージ2の事業概要が発表されました。ステージ2では、2025年の実用化に向けて、コンテナ船(新造・既存)、離島航路旅客船、RORO船の4隻が、完全自動運転が一部可能な自動化レベル(自動車の自動運転レベル4)を目指すことを発表しました。

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日本財団 常務理事 海野光行

続いて、事業を実施するコンソーシアムのプロジェクトディレクターの桑原様より、2025年までの計画が発表されました。産業、会社の壁を越えて集結した51社と共に、無人運航船の技術開発と環境整備を通じて、社会実装を実現すると述べられました。

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プロジェクトディレクター 桑原 悟様

無人運航船プロジェクトMEGURI2040ステージ2の概要について

画像:セミナースライドの一部。ページ上部にスライドタイトル「現在地と2025年に向けた方向性」。「事業開始時からの目標」について、Stage1:2021年度までに世界初、既存航路において無人運航実験の完了(終了)。Stage2:2025年までに無人運航船を実用化する。tage3:2040年までに内航船の50%を無人運航化。「実用化に向けた課題」について、(1)技術:避航や離着桟技術の向上等。(2)ルール・規格:国際条約に基づく規則・国内法令の整備、保険。(3)社会的理解:無人運航船への社会的理解の更なる醸成。これらの課題を解決するには、各社で強調して進める領域を広げつつ実施することが必要。50社を超える真のオールジャパン体制で実用化を目指す(=Stage2の始動)
MEGURI2040ステージ2では、2025年の実用化に向けてオールジャパン体制で取り組むことが発表されました。
画像:セミナースライドの一部。ページ上部にスライドタイトル「実証実験と社会実装への道筋」。コンテナ船、旅客船(離島航路)Ro-Ro船による4隻での実証。社会実装に向け、実証実験後も開発技術の一部を継続利用を予定。1:2025年7月実証実験開始。実施期間9カ月。離島航路船 おりんぴあどりーむせと(全長65m。主な開発主体は、日本海洋科学(リーダー)、両備フェリー、三井E&S、三菱造船、古野電気。2:2025年7月実証実験開始。実施期間3カ月。コンテナ船 みかげ(全長95m)。主な開発主体は、商船三井(リーダー)、井本商運、古野電気、三井E&S。3:2025年9月実証実験開始。数航海予定。Ro-Ro船 第2ほくれん丸(全長173.8m)。主な開発主体は、川崎汽船(リーダー)、川崎近海、日本無線、YDK。4:2025年11月実証実験開始。実施期間5カ月。新造コンテナ船(全長126.8m、2025年8月就航予定)。主な開発主体は、MTI(リーダー)、イコーズ、日本海洋科学、JMU、古野電気、BEMAC、東京計器、ナブテスコ、サンフレム、三井E&S、SpaceCompass、JRCS、寺崎電気、内航ミライ研究会、WNI、EIZO。世界初要素として「大型貨物船を含む最大9カ月の実証実験」「陸上支援センターの複数船舶の遠隔支援」
また、4隻での実証。社会実装に向け、実証実験後も開発技術の一部を継続利用の予定についても触れられました。
画像:セミナースライドの一部。ページ上部にスライドタイトル「無人運航船への期待」船舶の安全向上、異業種の参入やイノベーションの促進、船員の働き方改革、新規需要創出や関連産業の活性化、日本主導のルール作り、子どもたちに夢を!、など無人運航船への期待は多岐に渡る。
無人運航船の開発は、船舶の安全性向上や船員の働き方改革など、多岐に渡ります。

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日本財団海洋事業部 海洋船舶チーム

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