軽度知的障害者の進路選択や日常生活での重要な意思決定に関する実態調査

18歳という時期は、進学や就職、恋愛・結婚など、人生の大きな選択に直面する重要な時期です。しかし、知的障害のある若者が自らの意思で進路や生活を決めることは簡単ではなく、周囲の大人によるサポートが不可欠です。その一方で、支援が過剰になり、本人の本来の意思が反映されない可能性もあります。

今回、日本財団は横浜市教育委員会と市内3つの特別支援学校の協力を得て、軽度知的障害のある高校3年生を対象に、進路や恋愛・結婚、将来の生活に関する意識を把握するための調査を実施しました。本調査は、本人の意思決定の実態を明らかにし、よりよい支援のあり方を検討するための基礎資料となることを目的としています。

主な調査結果

1. 相談相手の偏りと地域とのつながりの重要性

進路の相談相手としては、「学校の先生」が92.7%、「お母さん」が85.4%であり、恋愛や結婚については「友達」が82.5%と最も多くなっています。一方で、「お母さん」に相談する人も55.6%と次いで多く、高校在学時から学生の相談相手が母親や学校関係者に偏っていることがわかります。国連の障害者権利条約においても、本人が信頼する複数の支援者と協力しながら意思決定を行うことが推奨されており、より広い社会とのつながりを持ちながら様々な意思決定を行っていくことが重要だと思われます。

2. 進路決定時の自己決定とその尊重

進路を決める際に「自分の意思を伝えることができた」と答えた人は73.5%にのぼりました。また、「意思を考え直すように勧められたことがない」と答えた人は61.9%を占めており、進路選択において意思表示ができている学生が多いことがわかります。さらに、考え直すように勧められた後の対応としては、「自分の意思を説明して理解してもらった」と答えた人が42.3%を占めています。

3. 結婚への意識

将来、結婚したいと思うかについては、「どちらかといえば、したい」が31.9%で最も多く、次いで「したい」が25.7%となっており、57.6%が結婚に関心を持っていることがわかりました。一方で、全国の17歳~19歳の男女と比較すると、「必ず結婚すると思う」と答えた人が全国では16.5%であるのに対し、本調査ではわずか4.4%にとどまっており、将来の結婚に対する見通しには差があることが示されています。

調査方法

調査手法 WEB調査もしくは紙調査票にて匿名式で実施
調査対象者・サンプル数 以下に属する軽度知的障害のある高校3年生に実施
  • 横浜市立日野中央高等特別支援学校
  • 横浜市立二つ橋高等特別支援学校
  • 横浜市立若葉台特別支援学校
サンプル数:113名(回収率100%、調査日登校者全員が回答)
調査時期 2025年2月

詳しい調査結果は下記のPDFをご参照ください。

関連リンク

お問い合わせ

日本財団 公益事業部 国内事業審査チーム

  • メールアドレス:cc@ps.nippon-foundation.or.jp(代表)

※お問い合わせいただく際の件名に【軽度知的障害者の意思決定に関する実態調査について】とご記載くださいますようお願いいたします。