日本研究の未来を担う人材を育成2025–26 IUC日本財団フェロー送別会を開催

写真
2025–26 IUC日本財団フェロー送別会集合写真

2026年5月25日、2025–26年度IUC(Inter-University Center for Japanese Language Studies)日本財団フェロー送別会が開催されました。日本財団からは笹川順平理事長、有川常務理事、高橋清美チームリーダー、菊地里帆子が参加し、IUCからはブルース・バートン所長、青木副所長をはじめ、20名のフェローが出席しました。
IUCは1963年の設立以来、海外の大学院生や若手研究者を対象に高度な日本語教育を提供してきた教育機関です。日本財団は2012年度よりIUCとの連携を開始し、日本研究を志す学生・研究者に対するフェローシップ事業を実施しています。初年度の奨学生7名から始まった本事業は、その後支援規模を拡大し、これまでに244名を超えるフェローを支援してきました。

写真
勉強会で議論をするフェローたち

海外における日本研究を取り巻く課題

近年、海外の大学では日本研究を含む人文学・地域研究分野の縮小が進み、特に政治学、国際関係論、経済学など社会科学分野において日本を専門とする研究者や大学ポストの減少が指摘されています。一方で、日本語や日本文化への関心は依然として高く、日本について深く学びたいと考える優秀な学生は世界各地に存在しています。
IUCには、研究者を目指す学生だけでなく、翻訳や文化発信、日本企業でのキャリア形成を志す学生など、多様な背景を持つ人材が集まります。高度な日本語能力を身につけることは、学術研究のみならず、日本と世界をつなぐ様々な分野で活躍するための基盤となっています。

多様な分野で日本を研究するフェローたち

本年度のフェローは、スタンフォード大学、イェール大学、ペンシルベニア大学、ケンブリッジ大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校をはじめとする国内外の大学から選抜された20名です。
フェローたちは約10カ月間にわたり集中的な日本語研修に取り組み、専門的な文献を読みこなし、日本語で議論し、自らの研究や関心分野について発表できるレベルの日本語能力を身につけました。
研修の集大成として行われた発表会では、多様なテーマが紹介されました。
あるフェローは、日本の伝統芸能である能楽と英国オペラを比較するパフォーマンス研究について発表しました。彼は学部時代には、能の名作と、それに着想を得て作曲されたベンジャミン・ブリテンのオペラを融合させた舞台作品を自ら企画・上演した経験を持ちます。IUCではその関心をさらに発展させ、日本語による専門的な研究発表に挑みました。
また別のフェローは、1848年に鎖国下の日本へ渡来したラナルド・マクドナルドと通詞たちとの交流を題材に、日本語と英語の初期接触の歴史を取り上げました。日本最初の英語教師とも言われるマクドナルドを通して、言語交流が異文化理解や国際関係の形成に果たした役割を考察する内容でした。
さらに、ケンブリッジ大学で純粋数学と理論物理学を学んだフェローは、数学の一分野である「圏論」を用いて日本語の文法や翻訳を分析する研究を紹介しました。数学と言語学という一見異なる領域を結びつけながら、日本語の構造を読み解こうとする意欲的な試みです。
社会科学分野では、イリノイ大学の博士課程に在籍するフェローが、バブル経済期から崩壊後にかけての日本社会をテーマに発表を行いました。政治、経済、大衆文化が相互に影響しながら人々の価値観や生活様式をどのように変化させたのかを分析し、現代日本を理解するための視点を提示しました。
このように、フェローたちの関心は多様なテーマにまたがっており、日本語学習はそれぞれの専門分野を深めるための基盤として活用されています。博士課程への進学を予定する学生、日本の大学院で研究を継続する学生、日本企業への就職を希望する学生など進路も様々であり、IUCは日本研究者の育成だけでなく、日本と世界をつなぐ幅広い人材の育成にも貢献しています。

世界で活躍する卒業生たち

日本財団とIUCが育成してきた人材は、現在、世界各地で活躍しています。
卒業生の中には、米国や欧州、アジアの主要大学で日本研究や東アジア研究を教える研究者となった者や、日本文学、日本史、美術史、宗教学などの分野で著書を出版し、研究を牽引している者もいます。また、日米関係やインド太平洋地域を専門とする政策研究者としてシンクタンクで活躍する卒業生もおり、その活動領域は学術界にとどまりません。
こうした卒業生たちは、高度な日本語能力を基盤として、それぞれの分野で日本に関する知識や経験を発信し続けています。2026年3月にカナダ・バンクーバーで開催されたAssociation for Asian Studies(AAS)年次大会では、日本財団とIUCが共催したレセプションに多くの卒業生が参加し、世界各地で活躍するネットワークの広がりを示しました。

写真
研究発表を聞くフェローの様子

卒業後も続くネットワーク

送別会では、笹川理事長による乾杯の挨拶に続き、ブルース・バートン所長からフェローへの激励の言葉が贈られました。
日本財団は、本フェローシップを単なる奨学金支援ではなく、将来にわたる人的ネットワーク形成の機会として位置付けています。フェローたちは卒業後も日本財団フェローとしての共通の経験を基盤に交流を続け、日本財団フェロー・ネットワークの一員として日本との関係を維持していきます。
今回研修を修了した20名も、今後それぞれの大学や研究機関、専門分野へと戻り、日本研究や日米交流、国際的な知的交流の発展に貢献していくことが期待されています。
日本財団は今後もIUCとの連携を通じて、日本研究を担う次世代人材の育成と国際的なネットワークの形成を支援し、日本と世界の相互理解の促進に取り組んでいきます。

関連リンク

お問い合わせ

日本財団 国際事業部 グローバル・イシューチーム

  • 担当:高橋、菊地
  • メールアドレス:nf_kokusai@ps.nippon-foundation.or.jp