若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」、「不登校」経験も強く関連。そのとき相談する相手は誰?

日本の若者の多くが「いじめ」や「不登校」などの学校問題に苦しんでいる

執筆:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

・日本の若者の4人に1人が自殺念慮を抱え、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある

・自殺念慮や自殺未遂の原因の多くは「いじめ」、また「不登校」経験も強く関連

・困難に直面した若者に必要なのは、彼らの声にじっくり耳を傾ける姿勢


日本に暮らす18〜22歳の若者のうち、4人に1人が自殺を本気で考えたことがあり、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある。そして、その原因の半数が学校問題を占め、さらにその半数は「いじめ」が原因であることが日本財団の調査により判明した。

未来を担う若者たちによる悲しい決断を止めるため、私たちにできることは何だろうか。調査結果をもとに現状をひもとき、解決の糸口を探りたい。

回答した30%の若者が本気で自殺を考えたことがある

日本における若者の死因で最も多いのが自殺ということをご存じだろうか。2018年には1年間で2万598人、1日にすると平均56人が自ら命を絶っている。これは、先進7カ国の中で突出して高く、若者の死因の1位が自殺であるのは日本のみ。この現状を受け、国は2016年に自殺対策基本法を大きく改正し、47都道府県と各市区町村による「自殺対策計画づくり」が義務化された。

そうした背景から、日本財団は長野県および東京都江戸川区と協力し、2016年より「日本財団いのちを支える自殺対策プロジェクト」を開始。自殺に追い込まれてしまう人を減らすための「自殺対策実践モデル」を構築し、実施している。今回は、このプロジェクトの一環として行っている「自殺意識調査」の2018年度における結果を「若者」の回答に絞ってご紹介したい。

まずは18〜22歳の若年層における「自殺念慮(本気で自殺したいと考えたことがあること)」と「自殺未遂(自殺未遂経験があること)」の状況から見ていこう。

男女平均で30%の人が「自殺念慮」を持ったことがあり、11%が「自殺未遂」の経験があると答えている。ただし男女別で結果を見ると、いずれも女性の方が多い。

図表: 若年層の男女別自殺念慮の有無

男性は26%、女性は34%の人が本気で自殺を考えたことがある

図表: 若年層の男女別自殺未遂の有無

男性は9%、女性は13%の人が自殺未遂を経験したことがある

彼ら、彼女らはなぜ、自殺念慮を持つに至ったのだろうか。その原因を複数回答および自由記述で回答してもらった結果、最も多かったのが「学校問題(48%)」と約半数近くの人が答えた。他には「家庭問題(33%)」「健康問題(24%)」が多く見受けられる。また男女別で結果を見ると、女性の方が12%多く「家庭問題」を原因として挙げている。

図表:若年層の自殺念慮の原因

原因の上位3位を占める「学校問題」「家庭問題」「健康問題」。いずれも女性の方が数値を上回っている

自殺未遂の原因を探ると、上位3つは自殺念慮と同様であった。ただし、女性に絞った場合は「家庭問題」が「学校問題」をわずかに上回った。

図表:若年層の自殺未遂の原因

自殺念慮同様、上位を占めるのは「学校問題」「家庭問題」「健康問題」。ただし、女性だけ見ると、「家庭問題」の方が「学校問題」を上回っている

48%の若者が苦しんでいる「学校問題」とは、具体的に何を指しているのだろうか。自由記述で回答してもらったところ、49%が「いじめ」における他者からの身体的・精神的被害を原因としていた。自殺念慮を持ち、自殺未遂を経験している4人に1人が答えていることから、若者にとって「いじめ」問題は非常に深刻と言える。

続いて32%の若者が挙げる「家庭問題」においては、配偶者や両親、子ども、親戚などの親族や元親族など、 家庭に関わる人間関係の不和が原因であると65%が感じていた。若年層の5人に1人に対し自殺念慮や自殺未遂の影響を与えている。

図表:若年層の自殺念慮・未遂における最多原因

学校や家庭における人間関係が、最も自殺念慮・未遂の原因につながっている

若者にとって深刻な「いじめ」や「家庭不和」が、それだけの理由で自殺念慮や自殺未遂の原因となり得るのかを調べるため、複数の問題を挙げていた人を対象に「いじめ」「家庭不和」と他の問題との複合率を調査した。すると、「いじめ」に関しては複合率よりも単体率が高く22%となった。「いじめ」が若者に大きな影響を与えることが分かる。一方で「家庭不和」の単体率は7%にとどまり、「いじめ」との複合率が12%と最も高かったことも見逃せない。家族や親族との問題を抱えた若者は、学校での「いじめ」問題も同時に抱えているケースが多いと考えられる。

図表:学校問題における「いじめ」の他の問題との複合率

「いじめ」だけが自殺念慮や未遂の原因と答えた人が22%いた

図表:家庭問題における「家庭不和」の他の問題との複合率

「家庭不和」問題を抱えた若者が「いじめ」問題も同時に抱えている場合が多い

自殺念慮・自殺未遂に強く関連しているのは「不登校経験」

若者にとって学校問題が自殺念慮や自殺未遂の原因の多くにつながることが分かった。そこで今度は、学校関連の出来事と自殺念慮や自殺未遂の関連性を掘り下げてみたい。

1年以内に限らず自殺念慮経験と、学校関連の出来事の関係を見てみよう。前述の通り、自殺念慮経験者は男女平均で30%だった。しかし「学業不振者」に絞れば49%、「学校での人間関係の不和経験者」においては51%と、それぞれ約半数もの若者が自殺念慮を持った経験がある。

さらに「いじめ経験者」の場合は58%、「不登校経験者」にいたっては68%もの若者が自殺を本気で考えたことがあるという。直近の経験のみならず、過去の学校関連のネガティブな経験が自殺念慮と深く結びついていることが分かる。

図表:過去の学校関連の経験と過去の自殺念慮の有無

6~7割の「不登校」「いじめ」経験者が本気で自殺を考えたことがある

また自殺未遂の経験も、同様に学校関連のネガティブな経験との関連性が見受けられる。全体の数字で見れば自殺未遂経験者は11%にとどまっているが、「学業不振者」や「人間関係の不和経験者」に絞るとおよそ2倍の22%が自殺未遂を経験している。「いじめ経験者」は24%、「不登校経験者」は31%と、学校問題によってその数字は格段に上がる。

図表:過去の学校関連の経験と過去の自殺未遂経験の有無

「不登校」「いじめ」にあった若者の20〜30%が自殺未遂を経験している

次に1年以上前に起きた学校関連のネガティブな経験と、同じく1年以上前に経験した自殺念慮や自殺未遂の関連性を確認する。すると、「不登校」の経験が自殺念慮、自殺未遂に多大な影響を及ぼすことが分かった。

「不登校」経験者は、経験したことがない若者に比べ、3.3倍の若者が本気で自殺を考えたことがあり、同様に2.5倍の若者が自殺未遂を経験している。

また、未経験者に比べて「いじめ」は2.2倍、「人間関係の不和」は1.5倍の若者が自殺念慮を抱え、自殺未遂に関しては「いじめ」が1.6倍、「人間関係不和」が1.9倍の若者が経験している。

図表:過去の自殺念慮・未遂経験への過去の学校関連の経験の影響力

「不登校」の経験が自殺念慮や自殺未遂に大きく関連している

以上のことから、学校関連のネガティブな経験と自殺念慮、自殺未遂の関連性は高く、中でも「不登校」による影響が大きく関係する。ただ、「不登校」そのものが必ずしも原因とは言い切れない。不登校になる背景には「いじめ」や「人間関係の不和」があることも考えられる。

とはいえ、不登校状態や不登校経験が、自殺念慮や未遂に対し高いリスクを背負っていることが分かった。そのような状況にある若者に対して適切な見守りや配慮を行うことで、最悪の結果を回避できる可能性も見えた。

また「転校」をした場合の自殺念慮、自殺未遂のリスクが低減していることにも注目したい。不登校状態の場合は無理に1つの学校に通わせるのではなく、別の学校もしくはそれに代わる居場所を提供するといった解決方法も有効と言えるだろう。

追いつめられた若者が頼りたいのは、身近で大切な人たち

では実際に困難に直面した際、若者たちは誰に相談しているのだろう。男性は「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「カウンセラー・相談員」、「学校(時代)の先生」と続き、女性は「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「カウンセラー・相談員」、「学校以外の友人」と続いた。

「不特定多数がみれるサイト」と「会員制サイト」については、「不特定多数がみられるサイト」の相談率の方が高く、なおかつ10 代・20 代、特に女性の特徴的な相談先と言える。しかし、相談率自体は0〜4%であり、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「学校(時代)の先生」、「カウンセラー・相談員」に比べるとかなり低かった。

図表:困難に直面した場合の相談相手

男女いずれも相談相手として上位が「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「カウンセラー・相談員」と続く

今後、若者の自殺対策に必要な取り組みとは?

これらの現状を踏まえ、日本財団では官民連携での協力体制を作り、若者を主とする自殺対策を検討している。その内容について、日本財団国内事業開発チームの児玉渚(こだま・なぎさ)さんにお話を伺った。

「東京都江戸川区では、『SOSの出し方教育』に力を入れています。恥ずかしいことじゃないから、辛くなったら誰かに相談してほしいと、子どもたちに伝える取り組みです」

具体的には、区立小中学校全校の子どもたちにはお守り型の「相談先一覧表」を配布。手渡す際に「相談先に迷ったら私に言ってね」と配布者が声を掛けることで、子どもたちが困難に直面した際に相談しやすい地域づくりに注力している。

また、長野県では県内の市町村長を対象に、自殺対策の必要性をアピールするキャラバンを開催した。

「自殺は鬱(うつ)が原因といったイメージが強いことが理由で、福祉分野が対応すべきだと思われることも多いんです。けれど自殺は、貧困や家庭環境のトラブルなど、社会全体で取り組むべき課題が要因にあることも多々あります」

自殺問題は、当事者意識を持って包括的に解決しなくてはならない。それを県のリーダーに理解してもらうことで、県全体で取り組みやすい環境をつくることが狙いであったと言う。

そんな活動を手掛ける児玉さんに、今後若者の自殺対策に必要な取り組みについて聞いたところ、「自殺未遂に関して言えば、まず傷ついた心身の治療を継続的に行える仕組みです。これまでの調査で分かったことの1つが、若年層に限らず、一度自殺未遂を経験している方はそれを繰り返している場合が多いということです。例えば薬物の過剰摂取で病院へ搬送されたとします。その際治療は施しても、自殺の原因までは対処されないため、自殺未遂を繰り返してしまうのです」と言う。

自殺まで追い込まれてしまう人のほとんどが、複数の原因を抱えているという。仕事に疲れて転職した先がブラック企業で、さらに借金を抱えてしまい…というように、さまざまな事柄が重なり、人は追い込まれるそうだ。

「そこで必要なのが、心身のサポートのノウハウを持ち合わせている訪問看護師などといった支援職の協力です。自殺未遂者の元へ通いながら、身体的なケアに加え、自殺を考える原因への対応を続けることで、自殺未遂の再発は防止できるかもしれません」

また調査の結果、自殺念慮のある若者が考える相談相手の大半が、身近な人物であったことも対策のヒントになったそうだ。

「友人や家族、恋人に『リストカットしてしまった』と相談された時、どのように接すれば良いのか分からない方も多いと思います。そこで、電話やチャットを活用して『相談を受ける側』へノウハウを伝授するサポート体制を構築できたらと思っています。学校問題に悩む若年層から相談を受けることの多い、先生などの支援職の方にも役立つはずです」

さらに「いじめ」や「不登校」を経験した若者がやり直せる社会をつくることも重要だと児玉さんは語る。

「学校へ行くことが苦痛になった子どもたちに、別の方法で社会と関われるセカンドチャンスを提供する。そんな居場所があれば、きっと多くの子どもの支えになると思うんです」

とは言え、最も必要なのはやはり周りにいる大人たちのサポートだ。

「悩みを相談されたら、とにかく共感して話を聞いてあげてください。一般常識を押し付けたり、助言をしたりするのではなく、じっくり声に耳を傾けること。自殺を考えるほど追い込まれている若者にとって、自分を分かってくれる存在がいると思えること、それが大きな支えになるのです」

〈調査概要〉

目的:自殺意識に関する実態把握

実施主体:日本財団

調査日:2018 年 11 月 22 日(木)~ 2018 年 12 月 7日(金)

調査方法:インターネット調査(アンケート登録モニタによる回答)

(1)継続調査 有効回答数:15,362人…続紙「調査対象」参照

(2)補充調査(18~22歳) 有効回答数:3,126人…続紙「調査対象」参照

分析内容:

1.日本全国の自殺に関する経験(自殺念慮、自殺未遂)およびその原因〈継続 調査〉

2.若年層の自殺に関する経験(自殺念慮、自殺未遂)およびその原因〈補充調査〉

3.自殺念慮・自殺未遂のリスク(自殺念慮・未遂のリスクが高い人の特徴、若年層の自殺念慮・自殺未遂のリスク、自殺リスクを高める要因、自殺リスクを抑える要因)

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