「#学校ムリかも」に集まった声を不登校経験者のしょこたんらが真剣にトーク

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左から番組に出演した『不登校新聞』編集長の石井志昂さん、タレントの中川翔子さん、文学YouTuberベルさん

取材:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

・日本では現在、推計43万人の中学生が「学校に行きたくない」と感じている

・Twitterキャンペーン「#学校ムリかも」に集まった声から、「学びづらさ」が浮き彫りとなった

・子どもたち本人の声をもとに「ミライの学び」をつくる


日本財団が2018年12月に発表した「不登校傾向にある子どもの実態調査」で、推計43万人の中学生が「学校に行くことがつらい」と感じていることが明らかになった。「学校、ムリかも……」。日本の多くの子どもたちがそう感じている。

この結果を受け、日本財団は、より具体的な思いを聞くため、Twitterキャンペーンを実施。「学校に行きたくない」または「登校はしているが心の中では学校が毎日つらい」などと感じている子どもたちから、ハッシュタグ「#学校ムリかも」を通して具体的なエピソードの発信を呼びかけ、5月30日までに2,000件近くの声が投稿された。それらの声をもとに、5月30日の夜には、不登校経験のあるタレントの中川翔子(なかがわ・しょうこ)さん、文学YouTuberベルさん、『不登校新聞』編集長の石井志昂(いしい・しこう)さんの3人によるライブ番組『#学校ムリかも トーク on Twitter』が配信された。

不登校の苦しみを大人と子どもが語らう『#学校ムリかも トーク on Twitter』

『#学校ムリかも トーク on Twitter』は、「どうすれば子どもたちのSOSに向き合うことができるのか」を模索するべく生放送された『「NHKスペシャル」シリーズ子どもの声なき声(2)「“不登校”44万人の衝撃」』から中継が入るなど、連動する形で配信。27万人以上が視聴した(5月31日時点)。

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左から、真剣に、子どもたちの声に耳を傾ける中川さん、石井さん、ベルさん

進行を務めた中川翔子さんは、テレビ番組の司会や声優、ブロガーとして人気を集める他、歌手としても活動するなど、多方面に渡って活躍している。猫、ゲーム、そしてアニソン(アニメソング)を好むことでも知られる。そんな中川さんは、中学に入学したことを機に執拗ないじめに遭い、不登校を経験した。

ベルさんは、7万人以上のチャンネル登録者を有する人気YouTuber。書評動画を日々投稿し、読書の魅力を発信している。“書けるYouTuber”としてライター業なども手掛ける才能豊かなベルさんも、中学時代に嫌がらせを繰り返し受けたことをきっかけに保健室登校を経て不登校になったという。

日本財団ジャーナルの記事「#学校ムリかも」から見える、学校がつらい推計43万人の子どもたちに必要な受け皿」でも取材を受けていただいた『不登校新聞』編集長の石井さんも出演。中学受験の失敗やいじめが重なり不登校となった石井さんは、自らの経験を生かすべく高校時代から『不登校新聞』に携わるように。以来、不登校当事者とその家族をサポートしている。

多くの人に必要とされ、大活躍している3人。しかし中学時代には不登校となり、つらい日々を過ごした経験がある。そんな彼らは「#学校ムリかも」に集まったツイートを通して何を感じたのだろうか。

ブラック校則にスクールカースト…。子どもたちを苦しめているものの正体とは?

ライブ配信が行われたのは、東京・赤坂にある日本財団ビル。カメラに囲まれた3人は本番10分前になると、心なしか緊張した面持ちに。ライブ配信には、番組開始前からコメントがつき始め、多くの人が放送を楽しみにしていたことが伺えた。

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日本財団ビルの特設スタジオで行われたライブ配信の様子

カメラが回ると、進行の中川さんを中心にトークを展開。Twitterに集まったいくつかの「#学校ムリかも」な理由がパネルに書き出されており、それらをもとに出演者が意見を交わし合った。生放送中の『NHKスペシャル』のスタジオからも時々中継が入りつつ、話は大いに盛り上がった。

写真:『#学校ムリかも トーク on Twitter』を配信中のSNSの画面
中川翔子さんのSNSアカウントでも番組を配信。配信中も多くの声が視聴者から寄せられた

1時間半の番組の中で交わされた内容を「#学校ムリかも」に上がっていた声とキーワードに沿って振り返りたい。

[謎ルール・ブラック校則]

「ツーブロック禁止。理由は“奇抜だから”。散髪屋の子どもとして、こういう偏見はやめてほしい」

「“本校の生徒としてふさわしい生徒”という意味不明な概念。女子は中途半端な白靴下指定、白下着」

Twitterに上がっていたこれらの声に、驚きを隠しきれない様子の出演者一同。「これって勉強と関係あるの?」と思わず声を上げた中川さんに対し、「時代錯誤に感じますね…」とベルさんが続く。

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「下着の色と学力は関係ないでしょう」と、意味不明な校則に思わずツッコミを入れるベルさん

石井さんによると、調査の結果、以下のような校則が続いている学校もあることが分かっている。

  • 下着、靴下、そして靴は中敷きも含めて白でないといけない
  • 腕まくりは禁止
  • 長いタオルは持ってきてはいけない
  • 手にメモをしてはいけない

また線引きが難しい校則として、「先生は良いが、生徒は化粧禁止」「刈り上げは良いのにツーブロックは禁止」「坊主は良いがスキンヘッドは禁止」などが挙げられた。

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「#学校ムリかも」に集まったツイートを紹介する中川さん

「教育現場では個性を尊重しようと言いつつ、校則で個性を潰してしまうのはどうなんでしょうね」とベルさんは疑問を呈(てい)す。「“なんでもあり”はダメだけど、時代錯誤で理不尽なルールは柔軟に変えてほしいですよね。その校則は本当に必要なのか、特に若い先生が率先して判断してくれたら変わる気がします」と中川さん。

石井さんも2人に賛同し、「ルールは本来、生徒を守るためにあると思うんです。しかし校則の中には、学校の体裁を守るためにあるものも見られます。誰のためのルールなのかを、今一度立ち返って考えてほしいですね」と語った。

[“陰キャ”とスクールカースト]

「いじめられるのは陰キャラ(インキャラ、陰気なキャラ)とか呼ばれるスクールカーストの底辺」

このツイートに対し、「分かりすぎる!」と中川さん。「私がいじめを受けた中学時代は、まだスクールカーストという言葉はありませんでした。傍目には分かりづらいけど、当事者同士にはハッキリと見えるランク付けがありましたね」と振り返る。

スクールカーストとは、ピラミッド型に形成された学校内での人間関係のことだ。一軍、二軍、三軍など3つのグループにランク分けされる場合が多く、生徒が何かしらの上下関係を感じる状態になる。

「いわゆる“トップの人たち”同士でも分裂は起きていました。昨日まで仲良くしていたのに突然1人になっちゃって、それまで私を散々いじってきた人が孤立して私に話しかけてきたり…。本当に、何なんでしょうね」と、当時のことを思い出す中川さん。「陰キャ」と人を侮蔑することにも疑問を感じていると語った。

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気になるツイートが書かれたボードを手にコメントをする石井さん

「教室に居づらい。笑っている声やヒソヒソ話している声が自分のことのように聞こえる」

このツイートに対しても、「そう、周りの目線が痛くて怖くて、つらいんですよね。あの手紙には私の悪口が書かれているに違いないとか、被害妄想も膨らんで…。特にキツイのは、1人でいるところを見られること。“ぼっち”だと思われたくなくて必死でした」と共感する中川さん。

ベルさんも身に覚えがあるようだ。「本当にちょっとしたことで、全てが決まってしまうんですよね。何か失敗したら一気に転落して居場所がなくなる、そんな緊張感が続く。席替え一つでも本当に重要なんです。まさに“座席ガチャ”ですね」

「本当、学校は運ゲー(運の要素が強いゲーム)だよね」と、苦しんだ中学時代を3人は振り返った。

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自身の経験も踏まえ「通信制高校も選択肢の一つとして考えてほしい」と話すベルさん

「入学式当日。思ったとおり同じ中学校の人はいなかった。友達はいなかったけど、学校が楽しいと思えた。すごく楽しかった通信制高校」

ベルさんは、自分に合った選択肢を選んだ素敵な例として、このツイートをピックアップ。「私自身、高校進学の際は“自分のことを知ってる人がいないこと”が基準でした。実際に入ってみると本当に楽しいと思える環境で、例えば“ぼっち”でもストレスにならない雰囲気だったんです」と語った。

中川さんも、通信制高校を選んだ当事者の1人。

「例えばもっと勉強する将来を望んでいる人からすれば、これはとても難しい選択かもしれません。だけど通信制高校では必要以上にルールに縛られないし、いろんな人がいる。想像以上に視野が広がるんですよ」

“陽キャ(ヨウキャ、陽気なキャラ)”が良い人だと知ったのも高校だった、と振り返る。

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「通信制高校に入学したことを機に、世界が一気に広がった」と話す中川さん

一方、フリースクールに通っていたという石井さん。フリースクールとは通信制高校と違い、義務教育の代替手段とはならない。しかし、「生きた学びのある環境でした。本当に楽しかった。興味のあることをとことんできて、自由。校則も自分たちで決めるので“謎ルール”もありませんでしたよ」と石井さんは話す。

その上で、「学校に行けなくなって、将来を思い不安に押し潰されそうな人もいるかもしれません。そしてフリースクールや通信制高校を選択することは、とっても勇気がいることでしょう。だけど本当に、これで人生の全てが決まるわけじゃないんです。その選択は、視野を広げて居場所を見つけるための作業だと思ってほしい」と中川さんは視聴者に訴えた。

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学校で傷つき悩む子どもたちの声が書かれたボード

これらの他にも「書字障害を持つ私に国語の教師が“板書を取りなさい”と強要した」「幼い頃から吃(きつ)音があり、周囲からからかいを受けていた」など、数多くの意見が。どれも切実で、子どもたちの息苦しさが伝わってくる。

令和の学びをつくるのは、みんなの声

「学校は本来、子どもたちが幸せになるためにあるはず。それなのに居場所がないと感じてしまっている生徒がいるということは、何かを大きく変える時だと思うんです」と石井さん。

「そしてそれは大人が考えるのではなく、当事者である子どもたちの声を汲むべきかもしません」

そんな「未来につながる声」を集めるべく、この番組を機に始まったのが、新たなTwitterキャンペーン「#ミライの学び」だ。

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「ミライの学びに向けて、当事者であるみんなの声が聞きたい」と呼びかける中川さん

「こういう学びがしたい、こんな学校なら通いたい、と思えるのはどんな場所なのかを知りたいんです。現場を知っているみんなに、Twitterで教えてほしい!」と中川さんが呼び掛ける。

「とにかく、学校行けないなんて人生終わりだ、と思ってほしくない。学校から“逃げる”のではなく、今は自分にとって正しい道を選ぶための時間なのだと思ってほしいんです。そもそも、学校は死にたいと思ってまで行く場所ではない。いったん避難して、先を一緒に考えましょう」

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不登校という苦しみを乗り越え、活躍する3人

最後に、放送を振り返って3人が感想を語った。

「理不尽なことは誰だって大嫌いなんだと感じると同時に、ツイートからは“この先を切り拓きたい”という希望があると感じました。運任せじゃなく、自らの手で。その言葉と姿勢に僕自身、勇気をもらいました」(石井さん)

「“こうあるべき”が学校には蔓延していると改めて思いました。常識はあるようでないもの、そして常にアップデートされるものなので、“〜べき”が子どもたちを苦しめることもあるでしょう。なので、ルールに縛られることなく、子どもが幸せになるためにはどうするべきかを考えたいですね」(ベルさん)

「苦しんでいる人たちは“死にたい”と、そんな言葉が頭をよぎっちゃうこともあるはず。だけどもし決断してしまったとして、悲しむのは大切な肉親。あなたをいじめているヤツは残念ながら、あなたを忘れて笑って生きて行く。だから、彼らをとにかくシャットアウトして。苦しい今は、今後あなたが大好きだと思える何かを見つける時間だと思って。その道の先に絶対、幸せな瞬間が待っているから」(中川さん)

2019年5月7日から実施していた「#学校ムリかも」Twitterキャンペーンに続いて、5月30日から「#ミライの学び」Twitterキャンペーンがスタート。全国の小中高生からこれまでにない学び方のアイデアを集めている。第1弾のTwitterキャンペーン「#学校ムリかも」で集まった声と併せて傾向を分析し、後日、日本財団公式サイト上で発表予定だ。

Twitterキャンペーン「#ミライの学び」は2019年6月30日まで。あなたが望む「ミライの学び」をぜひ教えてほしい。

撮影:十河英三郎

〈プロフィール〉

中川翔子(なかがわ・しょうこ)

1985年生まれ、東京都出身。2002年芸能界デビュー。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐に渡り、多数のバラエティ番組にも出演中。近年ではNHK ハートネットTV「#8月31日の夜に。」や、NHK「クローズアップ現代+」などに出演し、自身の経験を元にイジメや自殺、引きこもりなどのテーマと向き合い共感を集めている。アーティスト活動としては、今年の夏に映画「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」の主題歌「風といっしょに」を、『小林幸子&中川翔子』として担当する。さらに「子どもたちに夢を与えたい」という想いから、8月16日に子どもを対象とした自身初となるイベント「中川翔子ファミリーコンサート2019~えほんとうたのせかい~」を、越谷サンシティホール 小ホールにて開催予定。
中川翔子 公式サイト(外部リンク)

文学YouTuberベル(ぶんがく・ゆーちゅーばー・べる)

YouTubeで、読書の魅力を発信する動画クリエイター。登録者7万人超。「気軽に読書を楽しめる仲間を増やしたい」という思いで、日々の活動に尽力する。人気のジャンルは、書評動画。作家対談や本にまつわるあれこれの解説も行う。YouTubeとリアル書店のコラボ「ベル書店」では本棚のプロデュースに挑戦。好評につき、各地で展開。
文学YouTuberベル 公式サイト(外部リンク)

石井志昂(いしい・しこう)

中学校受験の失敗をきっかけに、中学2年生から不登校に。同年フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から同紙編集長を務める。不登校をテーマに、これまで不登校の子どもや若者、幅広いジャンルの識者に取材を重ねている。
不登校新聞 公式サイト(外部リンク)

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